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【卒展2024 Making Process】 #01 新しい取り組み

統合デザイン学科卒業制作展2024への来場ありがとうございました。
本noteでは、卒展のメイキング記事を8回に渡り、投稿します。

今年の卒展は校舎の取り壊しの最中に行われ、新しい取り組みも多く変則的な年となりました。どのように卒展を作り上げたのかお伝えしたいと思います。

今回は卒展2024の新たな取り組みを紹介します。


課題「これまでの卒展からどう変わるか。何を残すべきなのか?」

今年で統合デザイン学科は7回目となる卒業制作展を迎えました。

集金から広報までほぼすべて学生のみで行い、年々作品のみならず、展示設計の点でも完成度の高い展示となっています。
その背景として、歴代の先輩たちが積み上げてきた引き継ぎ資料や方法論が豊富にあることが挙げられます。
中でも、2021年のnoteはとてもわかりやすくまとめられています。ぜひご覧ください。

一期生の学生主体で卒業制作展が開催され、なにもノウハウがない中から自主的に広報する伝統が受け継がれてきました。年々クオリティは上がっていき、サイン計画からSNS運用まで、ある程度成熟しきったといえます。

その上で、今年は何を生み出し、何を残せば統合デザイン学科がさらに盛り上がるのかを常に議論していました。
今までのやり方をなぞれば、一定の質の卒展が行えます。しかし、それはあくまで再生産でしかなく、来場者に7期生がどんな代であるかを真に伝えることにはなっていないのではないかと思いました。

また、卒展の幅を広げることで、すでにやり尽くされたように見える統合デザイン学科の卒展がさらに盛り上がるのではないかと考えました。

今までの良かったところは引き継ぎつつ、新しいやり方を模索する年にしようという意識が委員会内で浸透していきました。
また、ビジュアル部内においてはビジュアルだけを担当するのではなく、そもそもの仕組みの提案、イベントの開催など卒展自体をデザインする部であるという共通認識を持ちました。

今年は、校舎の取り壊しと新設が卒展期間中に行われることが決まっており、統合デザイン学科が変わりゆく過渡期をきっかけに新しい卒展を提案することがひとつの目標となりました。

中でも特徴的な取り組みを紹介します。

新しい取り組み

1. コンペの廃止

これまで、ビジュアル部ではメインビジュアルの制作にあたり、コンペティションを行なってきました。
アートディレクションを行いたい学生を募り、それぞれがメインビジュアルからDM、図録、SNSなどの展開案までを持ち寄ってプレゼンし合います。
委員会内で投票を行い、最終的に1人のアートディレクターが選任されるという仕組みでした。

しかし、今年新たにアートディレクターを募集した際に、「そもそもそれぞれ分野が違うのだから、お互いに協力したほうがいいものを作れるのではないか」という提案がありました。
これまではアートディレクターが選ばれると、激しい競争のため選ばれなかった学生はビジュアルに関わることが少なく、最終的に人員不足に陥ることが多々ありました。
また、コンペと同時並行で、「WEB班」、「図録班」、「SNS班」というように各領域の班員を集め、その中で班長を決めていたため、アートディレクターのコンペに落ちてしまうと実力もやる気もある学生が、展開物のディレクションも行えなくなってしまうという問題点がありました。

今年は希望者が8人という異例の多さで、このメンバーの中でデザインに関わるのが1人だけというのはあまりにも損失が大きいと判断しました。

統合デザイン学科の私たちの代では、1, 2年生では同じカリキュラムを受講しますが、3年生からは各プロジェクトに所属し、グラフィック、映像、プロダクトなど得意とする領域が変わっていきます。
そうした特徴を活かし、卒展をさらにレベルアップさせるためにコンペを廃止しました。
そして、希望者8人全員をアートディレクターとして採用し、各班の班長として展開物を同時に監督する運営体制で行いました。

2. 卒展をお祭りとする

「卒展は4年間の集大成なのだから、お祭りのようにみんなが楽しめる賑やかなものにしたい」
こうした意見がビジュアル部内のはじめの会議で投げられました。

従来、卒業制作展にいらっしゃのは4年生の保護者や友人、先輩や学部生がほとんどでした。
地域広報も行ってはいますが、統合デザイン学科という名前は聞いたことがあっても、絵画専攻と同じように思っていらっしゃる方も多く見られました。そのため、どうしても閉じられたイベントになってしまうのが問題視されていました。

統合デザイン学科に馴染みのない人でも楽しめる開かれた卒展の開催を目指し、以下の内容を行いました。

a. 地域との密接な交流
上野毛周辺を中心に行事の参加、お手伝いを行いました。
上野毛商店街のみなさまに協力いただき、統合デザイン学科が卒展期間以外も地域の方とやりとりできる仕組みの構築を目指しました。
詳しくは「【卒展2024 Making Process】 #04 地域広報」をご覧ください。


b.工事パネルを利用した壁面でのビジュアル展開
上野毛キャンパスは現在も建て替え中で、一昨年から卒展期間中の工事パネルの設置は決まっていました。
工事パネルは1号館を取り囲むように横一帯に並び、一番人が行き来する食堂前の道幅は半分ほどになっていました。
当初目指していた「お祭り感」に対し、工事中の校舎はかなり閉塞感のある雰囲気で従来のビジュアル展開から工夫が必要でした。

そこで、工事パネル一面にビジュアルをあしらい、卒展の目印として、さらには撮影スポットとして位置づけることで賑わいを持たせました。
詳しくは「【卒展2024 Making Process】 #05 サイン計画」をご覧ください。


c.MENSA(食堂)を中心としたイベント開催
旧校舎解体に伴い、新設されたMENSAと呼ばれる食堂を、卒展期間中イベントを行うための交流の場としました。
これまでも食堂は来場者の方が腰を下ろす休憩所としての役割はありましたが、営業している平日日中以外は閑散としていました。
広い校舎で休むことができるのは食堂のみで、他の教室はすべて展示部屋のため飲食禁止です。「あまりにも展示作品が多いから、一度校舎を出て、近くのカフェで休憩してきた」という声も多く、せっかくならMENSAで何かやってみようとトークショーの開催、TOGO Cafeの出店を行いました。
詳しくは「【卒展2024 Making Process】 #08 会場イベント」をご覧ください。


3. 卒展をアーカイブする

今年は校舎の建て替えがあり、卒展も新たな取り組みを増やした変化の年でした。
この変わりゆく大学の様子を記録できないかと考え、SNSと図録の方針を見直すこととしました。
卒業制作を広報したり、写真として残したりするための媒体ではなく、この変わりゆく私たちの様子や思考自体をアーカイブするものとして扱えるのではないか。
目がつきやすい学生だけに注目するのではなく、7期生が何を考え、何を目指していたのかを形に残せるQ&Aを行いました。

詳しくは「【卒展2024 Making Process】 #06 図録制作」、「【卒展2024 Making Process】 #07 SNS運営」をご覧ください。


4. 協賛リターン企画をつくる

卒業制作展を運営するにあたって必要となる運営費は、学生個人による負担と大学からの支援金によってまかなわれています。
しかしこのままでは学生個人の負担が大きく、それを少しでも軽減することを目的として数年前より協賛企業を募集し、協賛の企画をスタートさせました。

今年は卒業制作展全体の新しい動きに伴い、協賛の仕組み自体も見直しました。
従来の協賛では、協賛をいただいたリターンとして卒業制作展の図録およびWEBに企業ロゴや広告•企業HPの掲載を行うのみでした。
今年は、協賛を「企業と学生がつながる場」というような認識に変え、企業と学生だからできること、そして双方が求めていることの実現を試みました。

その中で、後輩からよく「就活って何から始めたら良いのか分からない」と相談を受けていたことをきっかけに、「企業と学生がつながる場」を「就活に役立つ場」として活用することに決めました。

そして、企業は学生に伝えたい情報やアピールしたい情報を掲載でき、学生は就活の第一歩へつながる情報が手に入る就活情報冊子「SHIRTS」を設立することとなります。

4年生監督の元、企画運営そのものは就活が本格的に始まる前の2年生が担い、デザインをチームで行うという経験を持つこともひとつの目的としました。
インターンや採用情報だけではなく、2年生が聞きたいことをOB・OGや就活を終えた4年生へ実際にインタビューし、時には会社まで聞きに行き、私たちが本当に知りたい就活情報をまとめて掲載しました。
配布対象は統合デザイン学科の新3年生全員とし、5月に一斉配布しました。

結果として、協賛企業様に全面協力していただくことによって、学生ではなかなか見ることのできない部分を多く見せていただき、学生にとって大変有意義な経験となりました。
設立したばかりのプロジェクトでしたが、多くの企業様にご興味を持っていただくことができ、新たな協賛の取り組みとして継続できるものになるのではないかと感じています。この場をお借りして、あらためて大変感謝申し上げます。

来年度以降も続けていくことで、より企画として成熟し、卒業制作展をさらに発展させる企画となることを願っています。

最後に

今年行った取り組みはあくまで実験的なもので、正解なわけではありません。ただただ引き継ぐのではなく、その時の大学の状況や学生の思想に合わせて、卒展を変化させていってほしいと思います。
また、運営を行いながら、提案そのものよりも同意を獲得し、やり遂げることが最も難しいと実感しました。

多くの方の協力、理解によって卒業制作展を行うことができました。改めてお礼申し上げます。

委員長
野村侑加

副委員長
柴田俊明、渡部佳怜

ビジュアル部統括
彦田弦哉、日俣千樹

マネージャー
彦田弦哉

アートディレクター
米谷颯太、有本怜生、加藤美波、河内瑛大、豊島風雅、 久永ひな、日俣千樹、藤井菫

イベント班
野村侑加、柴田俊明、渡部佳怜、有本怜生、藤井菫

SHIRTS(就活スタートBOOK)
寺嶋希海、中川新、成川沙余夏、野澤遥歩、藤野早香、真﨑花

SHIRTS協力
西未来乃、後藤里帆、日俣千樹

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