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プラスチック・ファッションに陥る現代人 [ファッションリベラルアーツvol.07]

“プラスチック・ファッション”とは、写真家のYUTARO SAITOさんが昨今のモードを端的に表現した造語です。
わたしはこの“プラスチック・ファッション”が現代のファッションを捉える上で極めて重要な概念にあたると考えています。

FASHIONSNAPで紹介されている同用語の説明文をそのまま引用すると、

プラスチック・ファッション:
SNSの発達とメディア構造の変化により、洋服の物質的な消費よりも、記号的な消費が加速する現状を、ロゴやキャッチコピー、ビビッドで目を引くカラーリングなどのラベリングを行ない、ドラッグストアに並べられるプラスチック製商品になぞらえている。プラスチックファッションを選択する人々の意識は、「他者へのベクトル」が強い傾向にあるとしている。

FASHIONSNAP 【連載】老人ストリートスナップ:Not Plastic Fashion 「#1 宮崎駿みたいな人」

このように定義づけられる“プラスチック・ファッション”に対し、その反対に位置するファッションのあり方として“ノット・プラスチック・ファッション”は次のように説明されます。

ノット・プラスチック・ファッション:
プラスチックファッションの対義語。「自己にベクトルが向いたファッション」を指す。

FASHIONSNAP 【連載】老人ストリートスナップ:Not Plastic Fashion 「#1 宮崎駿みたいな人」

これまでファッショントレンドは、映画やドラマ、雑誌という“オールドメディア”から発信され、それらの情報を能動的に取得した受信者が、独自の解釈をもとに「自己にベクトルを向けたファッション」を形成していました。

そして現在、ファッションのトレンドが“SNS”から生まれるようになり、多くの人がまさに「他人にベクトルを向けたファッション」を好むようになったと感じます。

以前、こちらの記事(↑)でも言及したとおり、現代ファッションは、SNS上のいいね数を集める(=他人に承認される)ことに終始し、本来自分が着たいものや表現したいことが希釈されている潮流です。

自分で着用する服にも関わらず、それを選択する際の基準が他人に置かれ、SNSでチヤホヤされていた組み合わせを再現することで、よく見るコーディネートが再生産される。

SNSで見かけて参考にしたアイテムや服装が自分の好みによって選ばれたものならまだしも、いいね数が多いことを理由に頻繁に表示されるInstagramの投稿や人気のYouTuberが紹介した商品だけでコーディネートを形成していては、記号的消費による“プラスチック・ファッション”の体現者になってしまいます。

“プラスチック”の性質を考えると、加工しやすく、大量生産に向いている素材。「加工しやすい」とは、軽くて融点が低いことで、溶けやすく簡単に形成することが可能、着色も容易ということ。

“プラスチック・ファッション”もまた、SNSやメディアの発信によって簡単に形成されます。工場で製品を大量生産する際、型に流し込まれ、一瞬で思いのままの形に変形するプラスチックのごとく、誰かが意図した形に簡単に変形するのです。
YUTARO SAITOさんの考案されたこの言葉がいかに言い得て妙であるかがわかります。

このように“プラスチック・ファッション”は再現性が高いからこそ、多くの人が簡単に“洋服の記号化”を受け入れてしまったのです。

しかし、「ファッションのプラスチック化」は、本質的なファッションの価値から乖離し、表層の部分に注目した着こなしに過ぎません。
だからといって、「他人にベクトルを向けたファッション」を常に批判するつもりは全くありませんが、たまには「自分の着たい洋服を、自分の着たい組み合わせによって着てみること」ノット・プラスチック・ファッションであり、私たちのファッションをより自由で楽しくすることは間違いありません。

スタバのストローやコンビニ弁当の容器、キットカットの外袋までもプラスチックから紙の素材に変更される時代です。
私たちのファッションも真剣に脱プラスチック化を図らなければなりません。自戒の意味も込めて。

〈参考サイト〉是非、ご覧ください。


insomniaです。
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