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1998年にユーコン川を旅した話① –プロローグ–

21年前の夏、あの場所にいた。

1998年7月。カナダ・ユーコン準州の州都ホワイトホースをスタート地点とし、1890年代のゴールドラッシュ時代に栄えた町ドーソンまで、ユーコン川をカナディアンカヌーで730キロ下る川旅。

2週間分以上の食料や荷物をカヌーに積み、周辺数十キロ四方に人が住んでいない川を下る。日が暮れる前に上陸して川岸で良さそうなキャンプ地を探し、テントを設営。ルアーで釣ったグレイリング(川姫鱒)をおかずに、焚き火をしながら塩胡椒しか味付けのない夕飯を食べる日々。

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写真はデジカメがまだ主流ではなかった当時「写ルンです」で撮影したプリントを、iPhoneで撮影したもの。フィルムカメラからデジカメ、デジカメからスマホに覇権が移り、一周回って「フィルムがエモい」なんて言われる時代がくるなんて、知る由もなかった。

きっかけは、高校生の時に愛読していた本だった。

カヌーでの旅を綴るエッセイスト、野田知佑さんの数々の著作。日本ノンフィクション賞新人賞を受賞し、デビュー作となった『日本の川を旅する』。個人的にユーコンの川旅に憧れを抱くきっかけとなった『ゆらゆらとユーコン』。『北極海へ』、『新・放浪記』など、挙げていけばきりがないほど、近所の図書館に入り浸っては読み漁った。

最近になって、世界7大陸の最高峰の山々を制覇し、日本の祭祀儀礼などを独自の視点で撮り続けている写真家の石川直樹さんも、97年にユーコン川を下っていたことを知った。

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19年3月に東京オペラシティで開かれた写真展「この星の光の地図を映す」では、石川さんが実際にユーコンを下ったカヤックが展示されていた。一般的にはどちらもカヌーと言われることが多いが、カヌー(カナディアンカヌー)は公園のボートのようにデッキがなく、水かきのブレードが片側についたパドルで漕ぐもの。カヤックはデッキがカバーで覆われていて乗り手と船が一体となり、両端にブレードがついたパドルで漕ぐものという違いがある。

北海道発のバラエティ番組「水曜どうでしょう」では、2001年に今をときめく「人気俳優」大泉洋さんの罰ゲーム(!)として、同じくホワイトホースを始点にユーコン川を160キロ下っている。

番組ディレクターの藤村氏が「カヌーでユーコンを下ってみたかった」というだけの理由で決行されたというこの企画。アウトドア好きの聖地ユーコンに河畔に佇むジャージの男たち。突然はじまる「1人世界ふしぎ発見」に、「ユーコンのYOSHI」からの楽曲リクエスト。現地ガイド・ピートとの料理対決。未見の方にはぜひ見ていただきたい名作だ。

ちなみに、現地でツアーガイドをしている「ユーコンのYOSHI」こと熊谷芳江さんは、大学生を卒業したばかりの時に博多で行われた野田さんの講演会に参加してユーコンに行きたいと相談し、「それはいいことだ」との言葉に背中を押されたという。

「水曜どうでしょう」のDVDは北海道テレビ(HTB)の公式オンラインショップで購入した方が安いみたいです↓

石川さんや藤村D、熊谷さんに影響を与えた野田知佑さんの本は、数え切れないくらいの若者を荒野の旅に誘い、人生を変える体験をさせてきたに違いない。そしてかつての自分も、その数多くの中の1人だった。

このnoteでは、ユーコン川やカヌーの旅に興味を持つ人に少しでも参考になるように、体験談を記していくつもりだ。21年越しでユーコン川の旅行記を書いてみようと思ったきっかけは、年末の大掃除で引越しの際に詰め込んだ段ボールから当時の旅日記を書き留めたノートと写真が見つかったこと。

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もちろん、20年以上も前と今ではまったく現地事情は異なるだろうから、有益な情報は少ないかもしれない。さらに言えば、別途詳述するあるトラブルにより、ドーソンまでの川旅を全うできずに旅は終わりを迎えている。

ただ、いつの時代にもユーコン川やアラスカに憧れを抱き、小さなカヌーで大自然を流れる大河に漕ぎ出す自由を求める思いは変わらない。その思いの断片を、備忘録を兼ねて書いてみたい。

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