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NewJeans東京ドーム公演の衝撃。ハニの「青い珊瑚礁」にどんな意味があったのか

NewJeans東京ドーム公演でのJ-POPカバーが大きな話題となっている。僕は残念ながら行けていないのだけど、SNSで流れてきた映像を見て、衝撃を受けた。

ハニが歌った松田聖子の「青い珊瑚礁」は、本家を限りなくリスペクトしている。しかし単なるモノマネになってはいない。服装も何かの歌謡番組で松田聖子が着ていたようなボーダーのTシャツだし、髪型もショートヘアだ(ハニは少し前の楽曲からショートヘアにしているが、この公演で「青い珊瑚礁」を歌うための下準備だったのではという考察もあるほど)。

ダンスの振り付けはオリジナルかと思うが、ぶりっ子的な振りがあったりで、松田聖子が踊っていたら、もしかしたらこんなダンスを踊っていたのかも、と思わせるような振り付けだ。と書いたあとに、Youtubeを調べるとなんと2021年に松田聖子本人がダンスverの青い珊瑚礁動画をリリースしていた。おそらくはこの動画の振り付けを参考にしたのだろう。

これほど、松田聖子的なエッセンスを取り入れながらも、なぜモノマネになっていないのかを考えると、ハニの存在が大きいように思えてきた。ここ数年のK-POPシーンの女性アイドルはクールでセクシーなビジュアルが主流であるのに比べて、ハニは日本のアイドルのようにキュートなルックスで人気を博している(もちろんキュートタイプはたくさんいる。LE SSERAFIMのチェウォンとか)。

さらに、ハニはベトナム人だ。2020年代に韓国のアイドルグループに所属するベトナム人のハニが、1980年代の松田聖子を歌う。このことに何か意味があるような気がしてならない。

ある一面から見れば、時代と国を超えてアイドルの精神が受け継がれたようなイメージが連想されるかもしれない。アメリカの精神をアジア移民に受け継いだ映画『グラン・トリノ』のように。

とはいえ、その解釈はいささか自文化中心主義かもしれず、この解釈を語るのであれば韓国におけるアイドルの歴史や影響の系譜を知る必要がある。1本の批評を書けそうな気がする。

松田聖子、プラスティック・ラブ、岩井俊二、AKB48。縦横無尽のサンプリングこそNewJeansの魅力

ヘインが歌った竹内まりやの「プラスティック・ラブ」も印象的だった。竹内まりやの楽曲の多くは、夫である山下達郎がプロデュース・アレンジを手掛けており、この曲も例外ではない。まさにシティポップを代表する楽曲だ。日本の70〜80年代シティポップが韓国だけでなく、世界的に再評価されている流れがあり、その流れからすると自然な選曲といえる。

シティポップの再評価は、大量消費社会へのノスタルジーによって駆動されたヴェイパーウェイヴブームがきっかけらしい。ヴェイパーウェイヴと呼ばれるジャンルでは、過去の楽曲がサンプリング・リミックスされ、80〜90年代の日本のアニメ映像と組み合わされて、YouTubeで広まった。

こうしたムーブメントの代表曲が「プラスティック・ラブ」だ。8年前にアップロードされたこの動画は、セーラームーンの映像にリミックスされた音源が使われていて、1336万回再生されている。

NewJeansは様々な音楽ジャンルを取り入れているが、ビジュアルイメージがSPEEDと言われたり、「Supernatural」がSMAPのようだ、と言われたりしていて、このサンプリング・カットアップ・リミックス的手法は様々な参照元のイメージを否が応にでも結びつける。

ミンジが歌ったVaundyの「踊り子」もやはりすごかった。1日目は鬱屈とした女子高生が主演の青春映画のような解釈の演出で、「リリィ・シュシュのすべて」のような光景を連想された。岩井俊二映画は韓国でも人気が高い。やはりこれもサンプリングのひとつなのだろう。

2日目はAKB48に代表される平成女子高生の服装で、すでに2000年代がノスタルジーになっていることに軽くショックを受けつつ、サンプリング・カットアップ・リミックス的手法で、過去の楽曲とそのビジュアルイメージを参照しつつ、洗練されたクリエイティブに仕上げる。これこそがNewJeansの魅力なのだ。と、カバー曲の演出で感じた。

とりとめもない文章だが、いつか書きたいNewJeans論のためにメモとして書き残しておく。

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