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仕事力アップ!地方公務員が身につけたい地域分析の基礎

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記事一覧

地域分析の基礎 最終回 目的を持った分析が必要、だが目的のない分析は面白い

地域分析の基礎 最終回 目的を持った分析が必要、だが目的のない分析は面白い

 このマガジンも今回をもって最後となります。もともと、この時期に区切りとする予定はしていたのですが、当初はもっと分析マニュアルのような内容を想定していました。しかし、RESASの使い方はすでにRESASのホームページで詳しく紹介されていますので、特に私が別の方法でする必要はどこにもありません。もちろんホームページのマニュアルはあらゆるメニューを紹介しているので、「どこに絞り込んだら良いのかわからな

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地域分析の基礎 第16回 分析の総合化-ランキングの意義と課題

地域分析の基礎 第16回 分析の総合化-ランキングの意義と課題

 地域分析は人口や産業、福祉、教育といった分野ごとに存在するデータを、分析の目的に応じて選択し、その結果から新たな知見を得ることに意義があります。その際、より細かいデータを見たり、他の地域と比較したりすることで、掘り下げた分析を行うことができるようになります。
 したがって、こうした分析は分野を絞り込んで行うものですが、一方で分野を超えて分析を行い、幅広い分野の分析結果を総合化するというアプローチ

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地域分析の基礎 第15回 地域イノベーションの可能性を調べる

地域分析の基礎 第15回 地域イノベーションの可能性を調べる

 今回は、RESASの独自機能として提供されている特許や研究開発の調べ方を紹介します。
 「日本は課題先進国」という表現を聞いたことがあると思います。高度経済成長の弊害として発生した公害問題は、国民の生活や健康に大きな悪影響をもたらしましたが、その経験が日本の環境対策を進めたという一面もあります。また、エネルギー安定供給や少子・高齢化は日本国内での経済活動や経済成長のボトルネックになる要素ですが、

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地域分析の基礎 第14回 人口だけでなく世帯も、世帯だけでなく家族も

地域分析の基礎 第14回 人口だけでなく世帯も、世帯だけでなく家族も

 前回は高齢者について私見をいくつか述べましたが、今回は人口について、これまでとは別の視点で述べてみたいと思います。
 地方創生では、人口ビジョンが国と地方自治体で策定され、人口が最も重要な成果として捉えられています。なお、これは定住人口のことですが、居住がなくても交流人口や関係人口という形で地域にプラスをもたらすものも注目されています。しかし、これもまた人口の派生形態であり、人口であることに変わ

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地域分析の基礎 第13回 高齢化は本当に問題なのか?

地域分析の基礎 第13回 高齢化は本当に問題なのか?

 今回は、高齢化に焦点を当てたいと思います。
 年齢別人口の最も大きなボリュームゾーンである団塊の世代(1947〜1949年生まれの世代)は、既に高齢者にカウントされ、まもなく後期高齢者に突入することになります。日本の高齢化率は戦後一貫して上昇していて、昨年10月の時点で28.8%に到達しています。今後の予測としては、2025年には30%に達し、2065年には38%にまで上昇するようです。ただし、

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地域分析の基礎 第12回 地域分析の対象となる「地域」の範囲とは?(その2)

地域分析の基礎 第12回 地域分析の対象となる「地域」の範囲とは?(その2)

 このテーマについては、第3回の連載ですでに説明しました。そこでは「都市雇用圏」という概念を使い、市町村の範囲を超えた広域のエリアを単位として分析することの重要性を述べています。今回はテーマのタイトルは第3回と同じですが、その範囲を前回とは逆に市町村よりも狭い「小地域」を単位として分析することの重要性を述べたいと思います。
 小地域とは、市町村の中で「〇〇2丁目」とか「〇〇地区」などと呼ばれる範囲

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地域分析の基礎 第11回 比較対象の地域を選ぶシンプルな2つの方法

地域分析の基礎 第11回 比較対象の地域を選ぶシンプルな2つの方法

 この連載の第4回で「比較」の重要性について述べました。比較の方法として、分析したい地域の過去の状況と比較する「時間軸」と、他の地域と比較する「空間軸」の2つがあることを紹介しています。今回は、後者の空間軸について、「どこと比較すれば良いか」を説明したいと思います。
 真っ先に思い浮かぶ比較の相手は「近くの市町村」です。自分自身の学力や体力をもっと深く知りたい時でも、「クラスで〇番」と分かればすぐ

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地域分析の基礎 第10回 将来推計人口を使いこなす

地域分析の基礎 第10回 将来推計人口を使いこなす

 今回は、将来推計人口に着目したいと思います。将来推計人口は、地方創生における最重要の事項です。地方自治体がこれからも持続的な活動が行えるかどうかは、将来の人口規模によると考えられているからです。そこで、地方創生では国や地方自治体が『人口ビジョン』という長期的な人口見通しを作成し、2040年や2060年における人口の規模を示しています。現状と比較すればさすがに人口を増加させることはできませんが、何

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地域分析の基礎 第9回 特化係数で地域の「強み」と「弱み」を測る

地域分析の基礎 第9回 特化係数で地域の「強み」と「弱み」を測る

 今回も就業を始めとする産業の構造についての話をします。産業構造は地域経済の特徴を把握するのに有益ですが、その特徴を1つの数値で即座に把握する方法があります。それは「特化係数」と呼ばれるものです。
 計算式は以下のとおり、とても簡単です。

 当該地域におけるある産業の構成割合/その産業の全国での構成割合

 簡単なモデルで実際に計算してみます。下のデータ例は、第一次産業から第三次産業の就業者数と

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地域分析の基礎 第8回 就業状況から、雇用機会の動きを見る

地域分析の基礎 第8回 就業状況から、雇用機会の動きを見る

 今回は就業状況を把握することで、地域における雇用機会の動向を見ることにしたいと思います。
 これまで、地方圏では若年層の流出を抑制するためには雇用機会の確保が重要と考えられていました。そこで、高度経済成長期から現在まで、企業誘致が継続的に行われています。高度成長期には地方圏にも大企業の工場などが誘致され、一定の成果はあったと思います。しかし、80年代後半からの円高によって工場がアジア諸国に移転し

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地域分析の基礎 第7回 人口動向を多面的に捉える-「定住人口」から「滞在人口」へ

 地方創生の観点で最も注目されているのが人口であることは、言うまでもありません。そして、その人口とは「定住人口」のことを指しています。定住人口のデータは、主に国勢調査と住民基本台帳人口の2つがあります。
 国勢調査は5年に1回、直近では2020年10月1日に行なわれています。国勢調査が表す地域別の人口とは、調査時点において3か月以上住んでいるか、住むことになっている人、つまり「常住している者」の数

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地域分析の基礎 第6回 人口動向の分析で使ってみたい「年齢階級別純移動数の時系列分析」とは?

地域分析の基礎 第6回 人口動向の分析で使ってみたい「年齢階級別純移動数の時系列分析」とは?

 今回は地域分析で最も重要と言える人口動向の分析について、あまり使われていないけれども面白いことが分かる分析方法を紹介したいと思います。地方自治体の政策の根幹となる、総合計画やひと・まち・しごと創生(地方創生)総合戦略では、まず最初に人口の分析が示されます。つまり、地域にとって人口は最も重要な要素であると同時に、政策の前提ともなるものです。多くの場合、これまでの人口の推移と今後の見通しは必ず紹介さ

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地域分析の基礎 第5回 とにかくいろいろデータを見たい! RESASの便利機能を使いこなす

地域分析の基礎 第5回 とにかくいろいろデータを見たい! RESASの便利機能を使いこなす

 これまで、地域分析をする前の準備について説明をしてきました。もちろん分析の前に問題意識を持っていた方が、分析のターゲット絞り結果も明確になりやすいので望ましいです。ですが、逆に、ふとしたことでデータを見ると思いがけない実態が見えた、ということもあるかもしれません。これも、分析の楽しさ言えるでしょう。そこで、今回は趣向を変えて、特段の準備なしに、とにかく分析してみる方法について紹介したいと思います

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地域分析の基礎 第4回 地域分析に不可欠な「比較」の基礎

地域分析の基礎 第4回 地域分析に不可欠な「比較」の基礎

 今回は、地域の実態を深く知るための方法として、比較が重要であることを述べたいと思います。
 さて、「〇〇市の人口は50,000人」というのは、分析と言えるでしょうか。これはただの数値ですから、ちょっと物足りないですよね。もちろん分析は数値がなければ始まらないのですが、数値だけでは分析になりません。「へぇー、そうなんだ」というしかないでしょう。
 では、「〇〇市の高齢化率は40%」というのはどうで

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