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僕は真ん中を行く

人生においてそうそうないであろう休暇を満喫しています。
今日はずーっと前から思っていたことに折り合いをつけたくて、書いていこうと思います。

何かと暗い学生生活を過ごしていた。
人に嫌われるのを恐れ、表面上は明るくふるまっておきながら、自室で膝を抱える自分が本当の姿だと信じていた。そんなやさぐれたわたしを救ってくれたのは、本であり、映画であったのだが、もうひとつ、わたしが愛してやまないものがある。

それは、「お笑い」である。

芸人さんはテレビの向こうからわたしを笑いの渦へ誘う。彼ら彼女らのパフォーマンスは強制的にわたしを鬱の底から引きずり出してくれる。何年か経ち、わたしの観る媒体がテレビからユーチューブに変わった今でも、大変お世話になっている。わたしを生かしてくれる、稀有な存在だった。
彼ら彼女らの芸風は実に多様で、陽の部分を全面的に押し出すようなキャラ付けをしている方も居れば、陰鬱としたまま表舞台に立ち、それが面白おかしい方も居る。ここでは、わたしはある大好きなお二方を紹介したいと思う。お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さんと、同じくお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんだ。

このお二人は、同期であるが、全く違う道を歩まれてきた。「はねるのトびら」で一世を風靡するも、ひな壇を立ち去り、一時はTV業界から姿を消したかのように思われた西野さん。同じく「ピカルの定理」のころから大ブレイクを果たしつつも、コンビ内の格差を指摘されることもままあった又吉さん。しかしかたやオンラインサロンやクラウドファンディング、そして幻想的な絵本と世の中を魅了し続ける存在に、かたや芥川賞受賞作家にと、近年のお二方の言わずと知れた信頼と実績には枚挙に暇がない。

さてここからは完全な独断と偏見で申し訳ないが、このお二方はとても対照的に見えないだろうか。わたしは両者の言葉が好きだが、その発信の仕方は大変異なっている。言論を見ればおそらく明らかであろうが、パフォーマーとして常に振る舞いを意識しながら、相手の二手先も三手先も読み、そして強い言葉を持ち出すことのある西野さん。自らの弱さを自認しつつ、掬うように丁寧に語りかける又吉さん。そのどっちもが社会にとって必要なのだと思う。でも自分の立場や状況、または気分によって、受ける印象が変わってくるのもわかるし、かけ離れてると遠ざけてしまいたくなるのもわかる。
わたしはお笑い芸人は必ず人前に立つのが大好きな人がやるものだと思っていたから、又吉さんの所謂陰キャを全面に押し出すような、自分の容姿を完全に逆手にとって、「国家にとってよからぬことを企んでいます」には笑いを通り越して(勿論、大笑いはしたのだが)感服すら覚えてしまったし、スマートでスタイリッシュに見える西野さんが、未だにテレビ番組で私服を引き裂かれたりしているのが面白くてたまらなくてゲラゲラ笑ってしまう。つまり、どちらも大好きなのだ。
笑いの神様は陰も陽も関係なく手を差し伸べる。陰キャ、陽キャと分断するのは分かりやすい図式と言ってしまえばそうなのだろうが、分断をつなぎ合わせるその狭間に、笑いや文学があるのは興味深い。

わたしの敬愛する星野源さんの曲の歌詞から。

「自分だけ見えるものと 大勢で見る世界の どちらが噓か選べばいい 君はどちらを行く 僕は真ん中を行く」
(星野源 「夢の外へ」)

当時色々なことを決めかねていた(それは今もだが)わたしが、真ん中を選んでもいいのか、と大変腑に落ちた、そんな話です。ちなみに今も真ん中です。よく人に板挟まれたりします。辛い。

西野亮廣 『新・魔法のコンパス』
実用書やビジネス書の類、完全に文学畑のわたしにはすごくキラキラしていていつも手が出しにくい、、、と思っていたのですが、こちらは語りかけるような調子で書かれていて本当に西野さんとお話をしているテンポでさくっと読めました。内容は目から鱗、時代の先駆的な在り方、まだまだわたしには言語化が難しいので世の中の解像度がまた少しぐっと上がった感覚。
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又吉直樹『夜を乗り越える』
人生における夜、という大それたところではなく、ただ日々やって来る夜を粛々と一日一日乗り越える方法を一緒に模索してくれるような、心強い味方です。わたしは実家のベッドの枕元において、眠れない夜によく読み返していました。人間の人間らしい部分を優しく許容するような独特の筆致が沁みます。https://www.amazon.co.jp/%E5%A4%9C%E3%82%92%E4%B9%97%E3%82%8A%E8%B6%8A%E3%81%88%E3%82%8B-%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E9%A4%A8%E3%82%88%E3%81%97%E3%82%82%E3%81%A8%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%8F%88%E5%90%89-%E7%9B%B4%E6%A8%B9/dp/4098235013
星野源 『そして生活はつづく』
テレビに雑誌に引っ張りだこでも、5大ドームでツアーをしようとも、家に帰れば山盛りの洗濯物があるし、風呂掃除がある。生活は、等しく誰の身にもある。それを感じさせてくれるからこそ、彼は人気なんだろうなあ。
日常があっけないものであると意識しているからこそ書ける詩なのだろうし、文章なのだろうと思います。日常をよほど丁寧に切り取っていかないとここまでにはたどりつけないだろうな。
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