見出し画像

【毒親連載小説 #19】母とわたし 17

ここまで、こうしてひとつひとつの
場面を思い出しながら執筆をしていると、
私はなぜだかたびたび強い眠気に襲われ
執筆を中断することが増えてきた。

他にも色んなシーンを
書き出そうとするたびに、
ずっと閉じ続けてきた「感情の扉」が
突然バーンと開いてしまい、
当時のリアルな感覚がよみがえり、
ただわけも分からず苦しくなり
真夜中に一人、むせび泣いていた。

このような状態に陥り、
執筆がなかなか進まずにいると

(今さらこんなことを書いて
 一体、何になるのだろう…?)

という考えが頭によぎり、
つらすぎて書くことを止めたくなった。

そんな中で、ぼんやりと頭によぎる
「たったひとりの存在」。

その存在を想うと

(あぁ、そうだ。
 やっぱりこの先を書かねばならない…)


そう思い、
ひとしきり泣くだけ泣いたら涙を拭う。

そしてまた、書いては消し、
消しては書きと一進一退を
繰り返しながら執筆を続けている…。

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

ここまでは母との話だった。

もし、今までの執筆だけを読めばきっと、
ほとんどの読者が私の母が完全に悪者だ!
そう感じることだろう。
実際に私も随分と長い間、
母をこの家庭の元凶として見てきた。

しかし、この「家族ゲーム」というのは
そんなに単純なものではなく、
こんな母と対となる存在がいた。

それは私の父だった。

嵐のように怒り狂う母とは対照的に、
父の存在は一見、いい人のように
見えた。

しかし、
そのいい人の仮面の裏には、
恐ろしいほどに先が全く見えない
ブラックホールのような深い闇を
隠し持っていた。

(つづく)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?