見出し画像

【毒親連載小説#59】オーストラリア編 7〜中庸への道〜

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

『自分の居場所は自分で作ろう!』
 毒親育ちの仲間募集中!

無料メルマガ
【インナースペース通信@パース】
発行中です

スマホの方はこちら
PCの方はこちら

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

その時は稽留流産ではなく、
きちんと心音も確認ができて
一安心…という矢先のことだった。

まず、
雲行きが怪しくなったのは
なんと旦那だった。

私が妊娠を知らせてから
程なくして旦那は突然、
甲状腺ホルモンの異常が見られ、
体重が一気に10キロ減ってしまった。

みるみる痩せ細っていく
旦那の変化を見て
私は内心穏やかではなかった。

夫婦とはよくも悪くも
相互に強く影響を
与え合っている。

その後、
私のお腹に宿った生命は
私たちの元をまた離れて
行ってしまった…。

私たちは
流産が分かるまでの数週間は、
携帯のアプリで子供の成長を
日々、カウントしながら、
お互いにいつもメッセージを
交わしていた。

韓国や中国では「胎名」言い、
妊娠中の子供にあだ名をつける。

私たちもその子のことを
もともと初めて妊娠した時は
午年で生まれるはずだった
子供だったので
「小马(小さな馬)」と名付け、
毎日の成長を楽しみにしていた。

この時の流産は
前回の時よりももっとつらかった。

私たちはこの
2回目の流産という深い悲しみに
また向き合わなくてはならなかった。

手術が終わった帰り道の夜、
がっくりと肩を落としながら
無言で車で家路に向かっていた時のこと。

こんな時に限って
変な人に出くわす。

もう少しで自宅に
到着するという直前で、
私たちは信号待ちをしていた。

その時は確か、
週末だったのだろうか?

酔っ払った男性二人組が
私たちの車にめがけて
いきなりペットボトルを
投げつけてきた。

旦那はずっと堪えて続けていた
緊張と悲しみと悔しさが
急に弾けたかのように、
彼らを窓越しで
キッと睨みつけていた。

普段はあんなに
冷静でおとなしい彼は、
車から降りて今にも
喧嘩しようとする勢いだった。

夫婦というものは不思議だ。

普段は私が
感情的になるタイプなのだが、
片方が感情的になると
スーッとそのエネルギー溶け去り、
私には冷静さがやってくる。

私はとっさに旦那に
「酔っ払ってるから
 相手にするのやめなよ」
となだめ、どうにか家に帰ってきた。

彼は普段、とても冷静で聡明な人だ。

同時に、あまり感情に
振り回されるタイプの人でもないし、
どちらかというと無口な人だ。

それから数日後だっただろうか。

彼が出勤したあと私に
一通のメッセージを送ってきた。

「小馬のことは本当に
 残念だったけれど。
 またきっと二人の元に
 戻って来てくれるはず。」

そのメッセージを
受け取った日の夜のことだった。

旦那はいつにもなく真剣な表情で、
涙を見せながら一言

「またきっと小馬は戻ってくるよ」

と言葉少なに私を抱きしめてくれた。
私たちは静かにそして、一緒に泣いた。

(つづく)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?