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9時



消えていった星々の ひとつぶひとつぶが
ほどけて
砂浜に変わった、
額縁が外れて
銀河へ流れだす わたしの足もと
 
差し出された手の
指をひとつ、つかんで
 
だれかがあきらめた わたしも、
わたしがあきらめきれなかった わたしも、
その正しさも
この正しさも 呼吸して、
砂に足をとられながら今日は 濡れてお散歩
 
本当はだれもいない海辺に
点在する光の模様に心も酔う、
素肌に一枚うすく羽織って
 
夜の間に散った葉のうえに
のこる露になる、枝葉を
落とすまえの世界を
映した
みずみずしく広がる緑の光沢を
だれも手紙とは
言わないけれど、詩でもない、
わたしに帰って来るものを紙の上に放す、
あなたに返すものを添えて
言葉は、
すこし歩いて あたたかくなった血液を
冷ますように、
荒い呼吸の中ではじまる、それまで待って
ひとりで決めた
美しさも、
あなたが譲らなかった現実も、
重ねた手に護られた殻の中で光る、
これだけは
海の底まで持ってゆく






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