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火の鳥の原画が観たくて、手塚治虫記念館に行きました。その後、劇場や博物館を巡りました。…

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火の鳥の原画が観たくて、手塚治虫記念館に行きました。その後、劇場や博物館を巡りました。阪急電車に乗ると、学生の頃を強烈に思い出していたのですが、今はもう幻のようにふわふわとしています。時間の輪に閉じ込められる『異形編』のことが気になります。映画『プリデスティネーション』も好きです

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  • ingot890

    海辺の青い車。

最近の記事

白妙

詩人になる 巡り巡って、 丸い街灯に 散った飛沫は光にも、雫にも、火の粉にも、 花弁にもなるいのち、石造りの博物館が青白く 闇へ伸びて行く街角で、あなたに 束ねられた夜を言い訳にして書かなかった 言葉も、 書いた言葉も、 どこかの 画面や、だれかの手の中では 見えなくなる、 空白の、行間の 白に散った 白みたい、本当は、本当に なにもなかったかのように 記された夜の 刻まれた起伏、飛沫の凹凸から 流れるように引き抜いた 燃える羽の白、永遠に 生きるような視点で話していた日が

    • 新月

      この海に降る 言葉の 手前に宿る 誰にも救えない 夜のことを 救おうと動き出した雲の流れをあざむいた 星の光だけを浴びている 数千万本の菜の花を想像してる 君の想う幸せにも 苦痛を見るかもしれない誰かが ちゃんとこの 世界には居るということを時々 忘れて固まる視点が散る、季節を 新しい葉の 破る空間に 忘れて来たのは わざとだったのか もう分からない、半分 認めたような逃げを 浮かべて丸い闇のかたちを溶いた 詩人になる

      • 陽海

        春のことも 想って、高く 掲げた手から零れたものが最後まで 片方の手に 握られていた種に降る雨と共に流れる、きょう 選んだ言葉の さびしさに触れた その眼で、あした描くことになる 花が 寝息を立てている、 満たすための夜を両翼にうずめて、 滅びた言葉が包み込んでいた、人の 痕跡に耳をあてている、ここに生きた人の 思い描いた人は、人だったのか、 目的を 伏せて乗り込んでいる、同じ言葉に、 人に、 立ち止まる、幻の風が 擦り抜けて、 集まろうとする光の、一点が 希望のように見える

        • 飛花

          伝う雨 今日も、 私以外の 感性が うずくまる心音に流れて、薔薇の庭で生まれる 畳まれた翅の 音が、 開く前に薄い表皮のどこかに綺麗な 光を見つけて破った 雨を 確かめたくてカーテンを開ける、自分の 選ぶ言葉に沈んだ 見えない光、 砂のベールを抜けて 春の 花から戻った翅の音が六角の窓で結ぶ、夢を 現実と呼んで、 どうしようもなく 静まり返った世界の呼び名は なにも決めずにいる 君が哀れむ幸せに 呑まれて、 名を変えた全ての さびしさを今夜 孵しに行くとして、落ち合え

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        • ingot890
          18本

        記事

          冬桜

          受け取っていた 降り積もる雪が 髪で 溶けてゆくまでの時間に 美しくあるために振り払ってきた 手の 表情は、 書かなくなった言葉の前で滲んで、 望まれているものを あげられない日に、消えて、 よろこんでくれることを探していた、 本当のことを 告げる前の空 打ち消してきた、瞬間の まばたきが、光を浴びて散る 花びらを追うように つないできた言葉は、結ぶ間もなく新たに 届く街灯の光に燃え立つ、赤く、開いた雲の 絶え間から 姿をほどいて ここに 降る 手から手へ、 渡さ

          葉隠

          気づいた日から 気づかないふりを続けてきた 離れ離れの空を、一片ずつ集めて 貼り合わせた葉っぱが 光っていた、 どこかで滲んで、枯れて行くときも 葉脈を挟んだ隣り合わせの 空に 広げた言葉は、 瑞々しく過ぎて行く心をここに 映していてください、と 見え隠れして、開く一瞬、 一瞬の顔が重なる、きのうの誰か、 あしたの 君がポツリ ポツリと木の下に ゆれる 影の中で見せる、春のことを 少しだけ想う顔、 温度を保つためだという、 開かなかった片方の扉が開いて、終わる季節、 静かに燃

          水域

          両手をひらいて 辿った、 消えた無数の傷口から、 小さく 聞こえてくる沈黙は ふるえて、罪のない 言葉が僕の後ろに立っている、 階段をのぼる足を止めて、呼吸を 預けて、 読んでみる、いつか指に散った 流れ落ちて行く現実、あなたの手が 割った歪な 断面の夜に、まだ 言葉にできる痛みが ひとつひとつ生きて 深く流れる静脈が運ぶ、帰って来る、見上げる 頂上に 鼓動が響いて、なにもなかったかのように 閉じた約束が今日 燃えている、雨も 夢も 舞い上げて 切り込む、 忘れられた水の間に

          銀葉

          染める灰 香りを 乗せて、今日も 海沿いの 街に春の 雪が降ったと聞きました、 遠い 希望のように凍らせて花束 砕けた花びらを溶けるまで抱いた 胸に散る色を きれいだと言う、人も 傷つけられると知っている 君の血は、 背を向けてインクの においが消えないページをめくり続けた あの夜たちが 大切なものだったと まだ知らない手の中で反射して 届く、今日の僕は泣いた こちらでは 小さな蜂たちがサクラの蜜を集めています 鴨たちの間では、池の岸から 真っすぐに泳ぐレース

          光風

          見なくてもいいと うなずいた 視線の先に 映る 僕だったものたち 指の腹を鉛色に染めて めくるページ 夕焼けを 突き上げて 膨らんでいく背中、黒く燃えて ほどける指先ではもう 拾い上げることのできない贈り物に まだ触れていたい、 絶えず 生まれ続けて 忘れられていく祈りの外に 囲い込まれた僕を、逃がしに行くとき 春の風に紛れて贈る、火が 星ひとつない夜に 間に合いますように、 探すのをやめた接ぎ穂が 散らばった廊下に射す 光が伸びてくる また人間を 数えようとして

          花瓶

          信じる 音に 任せた身体は ここにいるのに もういない、 歪められた 地図に降る小さなピンを はじいて、 名前のない薔薇の庭に着いた、誰にも 告げずに 描いた花を切り抜いて、 咲きたかった場所へ 連れて行く 長い車窓の夢、 咳き込んだ 赤い命を見つめたまま、 不自然に書き換えた場所を通るたびに想う、 強くなろうとした日のことを、永遠に 消えたニュアンスを宿して、醜いものと 共に枯れてしまわないように、無意識に 庇っている美しい手、切り離せないと 知っている瞳が、同じ場所から吸

          気球

          鳴いて 沈黙が 飛び立とうとする、きのう はぐれた手が 残した 花びらを思い出したように追って まだ 冷たい 太陽に溶けだした 美しい細工に 染まる両手を開くと、触れてもいない 真実や表情や背後の影まで映り込んで、流れる 赤いスピードをグッと 握り締める、銀の結晶が水底へ沈むように やさしい やさしい化けの皮を剥いで 剥いで 引き剥がしてきた 崩れそうな瞳を 舞い上げる、 落ち合う経路を隠していた 名もなき ともの 短い歌 ひとつ、 低い音から 高く飛んで、 閉じた 眼に

          雪客

          鉄を叩く 夜の薫り 遠く 注がれて、 焼かれた書物のゴーストが動く 触れないことでしか守れなかったものを 触れながら知る、 両手で真似る 羽や獣になれる影 望んでも 終わらなかった夜、 救いたくて開いた 扉の先に 本当の顔をみつけても、歩いて なにをつないで ここまで来たの 知られぬように 時を舞う 灰、 閉ざされた日々の 奥に憩う、 水の音が燃えて誘う 苦しみにも 届かなかった 言葉から生まれて、誰も 見ていない場所に 着いた、君の肩に降る 自分を抱

          白梟

          まばたきで生き残る 君の眼の光 言葉の影が羽のように 表情を渡る、 大きく開いて 回る 美しい羽音の巣を 壊してしまわないように ひとまわりして戻っておいで 星を蔽う 闇の中で、フッと顔を上げる人間の仕草 真似るように、 空で結ばない焦点を高く遠く、追いかけて 真夜中 開き始めた空を みなものように、撫でる眼差しを伝う銀の粒 胸元に溢れている、水から 生まれて来たことも 忘れたように光って 思い出す 帰らない両翼に渦巻く 流線で

          尾羽

          自分の声で身体は 思い出す、 カードの屋根が 斜めに切り込んでいる鼓動の空を 支える 柱の光と 影を縫うように、泳いでいたこと スープの焚き付けに 選ばれる 枯れた ひとたばの 音符が、重ねた冬の序奏に潜り込んで 未来の 頬を染める炎と 渡る、 果てのない 空のように あなたの 喉の高さを黙って 見上げられる場所で覚えた 直線から生まれる丸い 折り紙の 立体を 静かに 膨らませるような息の音に、 つないで 乗せる あわい声の先 少し走ろうか、と 雨をよけていた 流

          蝋梅

          影を見てる、 行き先を告げようとしない やさしさに 身構えながら 青い星が急ぐ、 言葉で作り出した尾を引いて 響いていた旋律の途中で 跳ねて、 飛び出した軌道の音階、告白するような 声色を 浅く 深く読み違えて始まる あなたが振り払ってきたもので今夜 誰かが書いている 詩のことを あした どんな顔で受け流しても 下りて行く道を 無害な愛だけでは結ばなかったものたちの 線で つないでいく 視線の先で包み込む 不自然な曲線の坂道を 越えて行けますように、飛んで

          色音

          渦巻く影の最後まで君は 筆を走らせて 花びらのように踊らせた、 同じ 根を持つ影が咲いて、 どこまでも綺麗になっていく、恐れずに 抜けて来た回転ドアに、散らした 言葉は音符のように、誰かが通る度に鳴って、 一度だけ この世界に流れて消える音楽を 生んでいた日々の 夜を歌って 砂浜で 放した声を どんな罪に問われることもないまま 包み込んだ、両手が 儚く燃えて、 見えない線をたどっている 蔽いつくす 透明な手のひらが空で曇る、すぐそばで 消えたものたちに 通じていた、春