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吉田裕子の自作俳句メモ

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俳句結社 松の花に参加しています。そちらに投稿し、誌面に掲載されたもの(主宰の方からの添削、評が入っていることもあり)をこちらのマガジンにまとめます。 好きな句やアドバイスなどが…
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2021年5月の記事一覧

「赤子の手ほころぶがごと羊歯萌ゆる」ほか自作俳句18句(『松の花』2021年5月号掲載+α)

「赤子の手ほころぶがごと羊歯萌ゆる」ほか自作俳句18句(『松の花』2021年5月号掲載+α)

「松の花集」掲載句春の月見をるに見られてをるやうな
赤子の手ほころぶがごと羊歯萌ゆる
天井に迫る盆梅二百歳
お鮨屋のレジに売らるる春蜜柑
苦虫やバレンタインの日の歯痛

こちら、第八席でした(嬉しい!)。

春の月見をるに見られてをるやうな→元々〈春の月見るに見らるる心地せり〉としていたのを直していただきました。添削後、状態であることが強調されるとともに、説明より実感の向きが強くなったと感じます。

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「消毒の机に冬の小さき蠅」ほか自作俳句(『松の花』2021年3月号掲載+α)

「松の花集」掲載5句(12月末投稿分)
寒風や一席空けの落語会
再検査せよとの通知もがり笛
消毒の机に冬の小さき蝿
よちよちと着ぶくれの子は鳩を追ひ
王朝の恋を紐解く聖夜かな

寒風や一席空けの落語会→12/5、日比谷図書文化館で開かれた桂春蝶さんの落語会を訪ねました。感染対策のため、一席空けで、常時換気。実際に吹きすさぶ寒風以上に、心は寒々しさを感じてしまいます。噺家さんもこの空気の客席を笑わせ

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「松は色変へず藤十郎逝きぬ」ほか自作俳句(『松の花』2021年2月号掲載+α)

「松の花集」掲載5句(11月末投稿分)
新宿に空のあるなり鰯雲
秋うらら面接へ向かふ夫(つま)送る
夕日さす割れ窓の庭ゆず実る
新居建つ更地いちめん草紅葉
踏まれずや桜紅葉を散り重ね

新宿に空のあるなり鰯雲→職場のそばで見上げた秋の空。私の好きな空です。もちろん『智恵子抄』の「あどけない話」を意識して詠んだ句です(智恵子は東京に空が無いといふ、 ほんとの空が見たいといふ……)。
今月の「松の花」

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「鐘凍る初の共通テストなり」ほか自作俳句(『松の花』2021年4月号掲載+α)

「鐘凍る初の共通テストなり」ほか自作俳句(『松の花』2021年4月号掲載+α)

「松の花集」掲載5句(1月末投稿分)
冬籠もり眉なき妻を見慣れたり
ピリピリと痛き柚子湯や百数ふ
白髪染めツンと薫りて年暮るる
初日記万年筆の使ひ初め
市川のカルチャーからの初筑波

結社の全員が参加する「松の花集」、今回は15席でした。今月の秀句欄には、〈初日記万年筆の使ひ初め〉を選んでいただきました。

冬籠もり眉なき妻を見慣れたり→夫目線での一句です。ステイホーム中はどうしてもすっぴんが多く

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