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「鐘凍る初の共通テストなり」ほか自作俳句(『松の花』2021年4月号掲載+α)

「松の花集」掲載5句(1月末投稿分)

冬籠もり眉なき妻を見慣れたり
ピリピリと痛き柚子湯や百数ふ
白髪染めツンと薫りて年暮るる
初日記万年筆の使ひ初め
市川のカルチャーからの初筑波

結社の全員が参加する「松の花集」、今回は15席でした。今月の秀句欄には、〈初日記万年筆の使ひ初め〉を選んでいただきました。

冬籠もり眉なき妻を見慣れたり→夫目線での一句です。ステイホーム中はどうしてもすっぴんが多くなりますね。Mの頭韻、りの脚韻が気に入っております。

ピリピリと痛き柚子湯や百数ふ→月1回、鴨志田農園さんのお野菜詰め合わせが届きます。ちょうど12月に届いた中に柚子が入っておりました。

白髪染めツンと薫りて年暮るる→夫の白髪染めにちなんで一句。古文の世界では、数え年なので、正月に年を取ります。年暮る=1年が終わるということは、また1つ年を取ることを意味します。それが、白髪染めと響き合う感じがして。

初日記万年筆の使ひ初め→大人びた筆跡に憧れて、主に使う筆記具を万年筆に切り換えました。入門用のkakuno(パイロット)から始めております。字を書くのが楽しいです!

市川のカルチャーからの初筑波→市川NHK学園で古典講座・エッセイ教室を担当しております。今年初めての古典講座の日、窓から筑波山を見遣ることができました。筑波山といえば、『万葉集』の時代からの歌枕でもあり、古典講座の気分が高まります。

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「松の花集」投句のうち未掲載句

人まばら幸先詣(さいさきもうで)冬の梅
年賀状隅
(すみ)の二行に浮かぶ顔
成人を友と祝ふやハイチーズ

〈成人を友と祝ふやハイチーズ〉は、成人の日、神楽坂で見かけた光景です。友人5人で集まり、プロのカメラマンを頼んで撮影会をしておりました。「コロナで成人式がなくなってかわいそう」という声も多いですが、当の若者たちはたくましく楽しみを見つけているのだと頼もしく感じました。

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同人作品「翠嶺集」掲載5句

凍鶴やSLのみが気を吐けり
去年今年かなたに同じ富士のあり
足もとに雀来てをる一茶の忌
鐘凍る初の共通テストなり
地鎮祭手を合はせたり春近し

今年、「翠嶺集」の同人に加わることができました。幸先もよく、3席でスタートを切ることができました! 今月の秀句欄には、〈鐘凍る初の共通テストなり〉を選んでいただきました。

凍鶴やSLのみが気を吐けり→投稿時の形は〈凍鶴やSLひとり気を吐けり〉でした。古典講師として、漢文の語法に馴染みがあるので、「ひとり(独り)」といえば、限定の句形。「唯」と同じ意味で使ったつもりなのですが、直されてしまいました。過剰な擬人化だと取られたからですかね……? 「独り気を吐けり」という音が好きだったんですけどね……。
(コロナが落ち着いて、お会いできたら直接訊いてみようと思います!)

去年今年かなたに同じ富士のあり→人間は人間の都合で、年を区切っているけれど、富士山は変わらず、どっかと構えているのです。頼もしい。

足もとに雀来てをる一茶の忌→一茶忌は陰暦で11月19日ですが、2020年分は2021年の1月12日でした。一茶といえば、〈雀の子そこのけそこのけお馬が通る〉〈われと来て遊べや親のない雀〉が有名であり、足もとの雀から思いを馳せました。

鐘凍る初の共通テストなり→「鐘凍る」は季語で、万物が凍りつきそうな、冬の日の鐘の響きのこと。ただでさえ紆余曲折あった共通テストの初年度、コロナ禍もあって、受験生は気を揉むことが多かったに違いありません。そんな受験生の緊張を思って詠んだ句です。

地鎮祭手を合はせたり春近し→新居(兼 教室)を建てております。1月30日(土)大安吉日、地鎮祭を行っていただきました。初めてのことで、一連の流れに気が引き締まります。楽しみな気持ちをこめつつ「春近し」。

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「翠嶺集」投句のうち未掲載句

冬牡丹生け花かくも水を吸ひ
枯木立昼の電飾ごてごてと
初場所や溜席の美女のしゃんとの背

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掲載句・未掲載句どちらでも、気になった句、気に入ってくださった句がありましたら、コメント等でお知らせいただけたら嬉しいです。

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