実績解除:「東大で先生をやる」
今月の中旬に古巣の東大スラヴ研究室で集中講義を担当してきました。非常勤で授業1つだけの担当とはいえ、一応母校に先生として凱旋という形であったのは間違いありません。実績「東大で先生をやる」を解除しました。やったね!
…あんまり内容面に触れるわけにもいかないので単純な感想しか述べられないのですが、今までやってきた授業の中で一番楽しくできました。学生さんが内容に興味を持ってくれているということが伝わってくるだけでこんなに気分的に違うのかと思いました。あと座って授業ができるってすばらしい…
内容としてはアスペクト論みたいなよくあるテーマも含めて各分野の軽い紹介だけしつつ、後半にかけてわたしの専門のスラヴ語史方面へ入っていく感じでした。主にロシア語の不規則活用を取り上げて、それが不規則になるまでの歴史的経緯を説明していきました。その過程でスラヴ語歴史言語学や、インド・ヨーロッパ語学の基礎もちょっと説明した感じですね。70ページちょっとレジュメを書いたのですが、目次はこんな感じです。
また、個人的に触れておきたかった写本についてもある程度実際に解説ができて満足です。授業であの教室の黒板にグラゴール文字が書かれたのはおそらく史上初でしょう。
グラゴール文字写本はもちろんですが、キリル文字写本も案外初見では苦戦したりするものです。何より解読作業って楽しいですからね。言語学に興味があるなら是非触れてみてほしいのが、実際の写本の鑑賞です。自分で解読作業をやってみると、校訂して活字にして出版する作業がいかに大変かがよくわかります。
ちなみに、普段は日本語・日本文化関連の授業を持っているので、自分の専門について授業をするのは初めての経験でした。思っていたよりもテンションが上がってしまって自分でもびっくりしていました。
本当に自分でもびっくりするほど元気で、105分×13コママシンガントークしても全然スタミナが切れなかったくらいでした。いや、実に楽しかったです。受講生の皆さんも楽しんでくれていたら嬉しいのですが。
それにしても、やはり自分で選んで履修しに来た学生さんの授業に対する意欲は段違いですね。一度別の大学の非常勤で英語のアカデミックライティングを英語で教えたことがあり、その時の学生さんたちもとても意欲的ですごいなと思ったのですが、その時はオンラインでしたし、何より緊張でそれどころじゃなかったので、対面でこれだけ充実した授業ができたのは貴重な経験でした。
ところで、わたしは27歳になるまで日本の大学・大学院に在籍して博士をとってから中国の大学に就職したわけですが、中国と比較して初めて気づいたこともありました。
まず思ったのは、日本は昼休みが短すぎるということです。2限と3限が両方とも入ってたら飯を食いに行っていられません。
中国だと2時間くらいは昼休みがあるので、人によっては昼寝までします。1時間しか昼休みがないの、本当によくないです。
次に思ったのは、日本の大学は科目選択の自由度が高いということです。中国の大学は日本で言うと高校の延長みたいなもので、必修科目が多いです。2外以外でもクラス単位です。
今回の授業はスラヴ研究室の学生さんがおらず(悲しいことにそもそも諸々の事情で出られる学生さんがいなかった)、主に言語学研究室や理系のロシア語選択の学生さんが来ていました。興味さえあれば他学部の授業にも顔を出せるというのは良いことだと思いました。
むしろ、今回は理系の学生さんがどんどん喋ってくれたことで授業が面白くなった側面があると思います。ありがたい限りでした。
最後にちょっとアレな話ですが、今となっては非常勤って給料が少なすぎると思いました(期間中の宿泊代は出してもらいましたが)…今回の報酬は日本の非常勤の相場としては標準的な額なのですが、超ざっくり時給換算すると本務校の4分の1といったところです。
まあこれは本務校での拘束時間の短さが主に影響しており、待遇が非常に良いという側面もあるのですが、それでもこれはすごい差ですね。
大学院生だった頃は食えるなら何でも良いという考えだったのですが、今となっては昔の話です。
まあわたしの場合は今となっては余裕があるし、楽しくできるし、母校なので喜んでやらせてもらいました。しかし、一般論として、あの待遇を肯定するとやりがい搾取になるかな、とは思いました。母校にお金がないのは嫌という程知ってますけどね。どうにもならんもんです。
いずれにせよ、今回は帰省ついでに楽しくお話するという感覚で出来たので大変良かったです。時間の関係上余すところはだいぶあったと思うのですが、わたしの専門分野の楽しさをある程度はお伝え出来たのかなと思います。機会があったらまた呼んで欲しいのですが、どうなるかは分かりません。ひとまずこれで総括とさせてください。
Twitter(X)やってます:
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?