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舞城王太郎『煙か土か食い物』感想文

ネタバレがあります。未読の方はご注意ください。 「一族もの」だと思います。(舞城が2012年に、『ジョジョの奇妙な冒険』のオマージュ、『JORGE JOESTAR』を執筆した理由の1つは、『ジョジョの奇妙な冒険』も、「一族もの」だからだと思います)。『煙か土か食い物』では、家庭での一族の問題が、物語の基礎に存在しています。また、「連続〇〇事件」を語り手が解決していくミステリーでもあります。物語終盤には、「連続〇〇事件」の犯人が、奈津川一族の家で暴れまわるシーンがあります。こ

    • 夏目漱石『行人』感想文

      二郎と嫂が、嵐の中の暗闇の室内で相対する場面があります。僕はこの舞台からいくつか連想したことがあるので、以下にそのことを書きます。「“深淵”(暗闇)に落ちた男性を女性が救いだす」というモチーフは、小説では頻繁に使われていると思います。そのさいに、男性が深淵から救出されるかどうかは、作家たちによって違いが出る箇所です。たとえば漱石の『それから』では、物語終盤に代助は“赤の世界”(深淵)に陥りますが、三千代は代助の“赤の世界”と心中する覚悟がありました。安部公房の『密会』では、主

      • 太宰治『御伽草紙』 感想文

        「前書き」で防空壕の場面が描写されています。この場面では「太宰」、妻、子どもたちが「誰か」に客観的に描写されています。おそらくこれは、いまから幕を上げる物語は風刺的、寓意的なものだと読者に示しているのだと思います。漱石の『吾輩は猫である』も同じ物語構造で組まれています。こちらは「猫」によって、「漱石」とその家族たち、訪問者などが客観的に描写されていました。 瘤取り著者は風景のための風景描写ではなく、物語を運ぶための風景描写をしています。たとえば、作中人物を孤立させるために「

        • ジブリ映画『風立ちぬ』感想文

           “純粋”がこの映画の主題のひとつだと思います。純粋を愛する男女間で貫徹するために、純粋にとって「都合の悪いもの」は、意図的に排除されています。製作者は意識的にこの装置を映画に組み込んだのではないか? と感じました。現代社会では、“純粋”はめったにないものだと思います。“純粋”を一途に表現したかったのかな?  作中人物が決意をしたり愛情を感じているときに、瞳の色が深くなっていました。この「仕掛け」は映画の主題と調和していると思います。映画終盤の菜穂子の選択に、女性のプライド

        舞城王太郎『煙か土か食い物』感想文

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        • 本 感想
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          1本
        • 音楽 感想
          2本
        • ソネット
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        記事

          芥川龍之介『歯車』感想文

          全体的感想 “不治の病”がしばしば文学作品のメイン、サブテーマになると思います。過去の例ではペスト、結核、統合失調症など。現代では結核は治るようになり、統合失調症も限りなく治ること(寛解)ができます。現代では結核を文学作品の主題や装置としては、それほど使用しないと思います(おそらく治ることができるため)。  アルベール・カミュの『ペスト』はペストを主軸にして、友愛と結束の大切さを描いています。堀辰雄の『風立ちぬ』は結核を主軸にして、愛情と性愛の大切さを描いています。芥川龍之介

          芥川龍之介『歯車』感想文

          芥川龍之介『蜘蛛の糸』『羅生門』感想文

          『蜘蛛の糸』文章が美しいです。今回再読してみてまずそのように感じました。著者は語り手の作為的な「匂い」がしないように綴っていると思います。御釈迦様は「ぶらぶら御歩きになって」いたり、気まぐれ(偶然)に罪人の「犍陀多」を地獄から助けようとしています。天国へと至る“道”は、「偶然の力」が大きくて、上の描写は「それ」を表現しているのでしょう。社会では、この物語のような“救い”はほぼ無いと思います(いわゆる救いが無いのが救い)。 『羅生門』固有名詞が無いので寓意的な物語であり、「社

          芥川龍之介『蜘蛛の糸』『羅生門』感想文

          宮沢賢治『やまなし』感想文

          僕は小学校高学年の時に授業でこの作品を習いました。今回読み返して、絶妙な時期にこの作品を習っていたのだと思いました。幼年期の子どもたちは、「現実」と「非現実」の区別がつきにくいと思います。しかし、「現実」の割合が多くなり「非現実」の領域が少なくなっていくのが、小学校高学年の年頃のこどもたちだと思います。『やまなし』は、「現実」と「非現実」が交差しますが、「非現実」の割合が大きい作品だと思います。「非現実」が少なくなり、「現実」が多くなる年齢の子どもたちが『やまなし』を読むのは

          宮沢賢治『やまなし』感想文

          Radiohead『Paranoid Android』感想文

          Radioheadの楽曲・『Paranoid Android』の主に歌詞の感想を書きます。Paranoid(狂気的人物)と、Android(機械的人物)の対比が、この曲の装置だと思います。この装置はフィリップ・K・ディックのSF小説・『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』でも使われています。曲が始まる冒頭に、機械のランプが点灯するような音が四回聴こえます。おそらくAndroidの起動音だと思います。 最初のの歌詞二行(Please could you~voices in m

          Radiohead『Paranoid Android』感想文

          Led Zeppelin『天国への階段』感想文

          Led Zeppelinの楽曲・『天国への階段』、歌詞の感想文を書きます。“piper”「笛吹き」が『天国への階段』の装置だと思います。“piper”「笛吹き」が『天国への階段』の人物たちに「幻想」を魅させています。歌詞を読む限り、作中人物たちは“正気”(真実)と“狂気”(妄想)の境界に「入っている」と思います。この境界にいるとき一時的にせよ、ヒトは創作力がみなぎります(曰く、詩神に憑かれている・無意識に降りている・別の私が書いているなど)。境界に誘っているのが“piper”

          Led Zeppelin『天国への階段』感想文

          『罪と罰』について

           新潮文庫(工藤精一郎訳)で、下巻の半分まで読みました。3回目? の再読になります。読んで気づいたことをメモとして書いていきます。  物語が主人公・ラスコーリニコフの行動描写からはじまるため、読者は物語世界に入り込めやすいです。(ドストエフスキーの二つの長編、『悪霊』、『カラマーゾフの兄弟』は、都市やそこにに住んでいる人々の描写から始まります)。  会話している人物たちのところへ、べつの作中人物が「都合よく」登場します。この手法の目的の一つは、物語を面白くするためだと思い

          『罪と罰』について

          everything in its right place

          人間たちはすべて斯くある。 すべて在るべき場所に。 大きい魚が小さい魚を食べる。 アンドロイドがパラノイドを搾取する。 吊るされた男たち。 彼らは風化すると光を放つ。 斯くあらない人間たちへの 死んだ者たちの遺言書。

          everything in its right place

          詩だけでなく、エッセイや映画の感想を書いていこうかな。文章を書くことは、考えの整理になります。

          詩だけでなく、エッセイや映画の感想を書いていこうかな。文章を書くことは、考えの整理になります。

          お伽の森

          Ⅰ 彼女がまだ子どものころ 輝く瞳で世界を見渡した けれど世界は少女を拒絶するばかり 少女は泣いた 泣いても人々は誰も気づかなかった 少女は助けを求めた 雑踏を歩き回る迷子の子どものように 少女は部屋に閉じこもり 空想の友達を絵に描いた 友達に名前をつけ 毎日彼らに話しかけた 時々彼らから返事が返ってくる気がした 幼子が神様に祈るように 少女は彼らを描き続けた 眠った少女に話しかける人がいた 母ではない 母は少女と共に眠らないから 少女は描いた友達を見た 彼らは楽しそう

          お伽の森

          星はまるで永遠に巡る四季の移り変わり まるで善女善男の織りなす美しい愛 まるでおとぎ話の王女を揺り起こした一人の騎士 まるで傀儡子に挑み深淵に落ちた堕天使 まるで虎の心を持った男 羊の服を着た女 星よ! 心理を包含する者よ! あなたの声が私に聴こえますように。

          笛吹き

          この世は 笛吹きがつくった「夢」 黒い絹のベールで覆われた一人の笛吹き 彼は姿を隠しながら一人の乙女にビジョンを見せる 彼は笛の音色で楽園をつくる 音色を聴いているのは乙女だけではない かつて乙女を愛した騎士もこの地にいる 乙女に虎に変えられた騎士 音色は虎を勇敢な戦士に引き戻す 乙女は騎士の誘いにうなずき 手を取り合いお互いを求める 騎士は歓びに打ち震える 騎士は乙女の愛で若返る ところがここで笛の音色は途切れて 乙女は消えてしまい騎士は虎に逆戻り

          物語

          「あなた」は、多くの人々を惹き寄せる。 「母」が「子」に話す「昔々の物語」、 「自然達」の唄う「夢幻の物語」、 「あなた」は私達の傍を天翔ける。 誰が分かるだろう? 「隠喩」は地上を埋めている! 「昔々の物語」が、「今」に在るとしたら…… 誰が見つけるだろう? 「自然達」は地上に満ちている! 「夢幻の物語」が「あなた」の「似姿」としたら…… 私は、「母」が「子」をあやす様に、 「あなた」に口づけしよう。 私は、「夢幻」から覚めない裡に、 「あなた」の神秘を視よう。 私は