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ジブリ映画『風立ちぬ』感想文

 “純粋”がこの映画の主題のひとつだと思います。純粋を愛する男女間で貫徹するために、純粋にとって「都合の悪いもの」は、意図的に排除されています。製作者は意識的にこの装置を映画に組み込んだのではないか? と感じました。現代社会では、“純粋”はめったにないものだと思います。“純粋”を一途に表現したかったのかな?

 作中人物が決意をしたり愛情を感じているときに、瞳の色が深くなっていました。この「仕掛け」は映画の主題と調和していると思います。映画終盤の菜穂子の選択に、女性のプライドを感じました。キャラクターの動作(アニメーション)だけでも、観客を惹きつける作用があると思います。

 舞台と舞台の間の書割のようなシーンが、時の経過を表わしたり、舞台の前書きとして機能しています。たとえば、関東大震災のあとに卒塔婆? が立てられていたのは、亡くなった方々の供養のためですが、震災から少し時が立ったことをも表わしていると思います。避暑地での舞台のまえに、避暑地の人々を映しているシーンがありますが、今までの書割に映っていた人々とは雰囲気と服装が違います。これは舞台変化の前書きでしょう。これらの表現以外にも、「視覚」で観客に余韻を残す技法が多いと思います。

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