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ソネット

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記事一覧

笛吹き

この世は 笛吹きがつくった「夢」
黒い絹のベールで覆われた一人の笛吹き
彼は姿を隠しながら一人の乙女にビジョンを見せる
彼は笛の音色で楽園をつくる

音色を聴いているのは乙女だけではない
かつて乙女を愛した騎士もこの地にいる
乙女に虎に変えられた騎士
音色は虎を勇敢な戦士に引き戻す

乙女は騎士の誘いにうなずき
手を取り合いお互いを求める
騎士は歓びに打ち震える
騎士は乙女の愛で若返る

ところが

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物語

「あなた」は、多くの人々を惹き寄せる。
「母」が「子」に話す「昔々の物語」、
「自然達」の唄う「夢幻の物語」、
「あなた」は私達の傍を天翔ける。

誰が分かるだろう? 「隠喩」は地上を埋めている!
「昔々の物語」が、「今」に在るとしたら……
誰が見つけるだろう? 「自然達」は地上に満ちている!
「夢幻の物語」が「あなた」の「似姿」としたら……

私は、「母」が「子」をあやす様に、
「あなた」に口づ

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羊飼いの一匹の子羊が群れからはぐれた
子羊は狼の吼え声に怯えながら
枝が繁る大木の下にある
優しい光を浴びた静謐な東屋に迷い込む

そこには童子の足跡がある
子羊は遊んでいる童子の仲間になる
彼らは自然達と共に光の宴をする
光の調べを聴きながら子羊は成長する

童子は笛吹き唄う
笛の音色は東屋に満ちている
まるで勇士達が燈した篝火のよう
童子と羊は向き合い唄う

やがて笛の音色は羊を美に変えていく

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こびと

夕暮れ ひとりの子どもが草むらで遊んでいた

群れからはぐれた一匹のこびとのよう

昔から その子は神隠しに会うという

その子は友達を探しに旅に出るという

人間の行動をくるみこむ自然と動物

まるで聡明な女性のよう

こびとは女性や子どものよう

身を隠していて 探した人にしか視えない

誰もいやなことをしないところ

そこにこびとは住みつく

こびとに出会えたものは 幸せになれるという

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束縛されぬそよ風

あなたの化身のそよ風が

「永遠」の一部であるそよ風が

何者にも束縛されぬそよ風が

静かに穏やかに吹いている

彼は決して死ぬ事はない

自然達と楽しく戯れる彼

昔々 虚無と戦った私

彼は私の未来の姿だから

昔々 鎖に繋がれるのを拒んだ私

私は地上では死んだ

しかし天上では私は死なない

彼と彼の同類達が待つところへ

美しいモノだけが存在するところへ

私は自然と同化しながら行く

神の息

神の火花を宿すもの同士ならば

すべては神の息でつながる

火花から世界の地図が生まれた

後戻りはできない 元に戻すことは出来ない

神の息がかかった女性が私にほほえむ

すると私から詩のモチーフが生まれる

女性のほほえみが消えるまで

私はたくさんの唄を歌う

どこに私の存在の確かさが在るのか

人形を操る傀儡子の糸

それではなく人間の源である神の息

神の息を感じ取り消えることがないのな

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幼子

「笛吹きさん 吹いてよ 私たちの唄を」

天上から一人の幼子があらわれ 私に言った

地上の幼子を守っている天上の幼子

幼子達が唄う ひとひらの美しい唄

彼らの唄を真似して 私は喜びの唄を造る

幼子と 彼らにまといついているすべてのものが幸せになるように

天上の幼子が地上の人々にほほえむように

詩神が彼らにほほえむように

あの幻の山を越えれば 美が輝くように

雲の上を明るく照らしてい

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似姿

多くの詩人が唄ったあなたの似姿を私も唄いたい

咲き誇るつつじたちの片隅に咲く 半ば忘れられた花々

それは探し続けた人が出会える 美しく存在する形象

そこに辿り着いた子どもたちの足跡がある

草叢が光とたわむれ ぽあん ぽあん と輝いている

黄金とたわむれる子どもたち 一匹の儚い生きものさえ

子どもたちにほほえんでいる そして子どもたちを包みこむ

自然たちの永遠の静謐な唄

子どもたちの

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自由の蝶

聡明な女性のような自由の蝶

くもが張る罠にかからない

かまきりの攻撃は上手にさける

ひらりひらりと飛んでいく

心の牢屋に閉じこもった人に

自由の蝶は姿をあらわす

天井に手を伸ばせば

ひらりひらりと飛んでいる

自由の蝶は牢屋の人の想いを受け

牢屋の壁を透り抜け

人知れず静かに飛んでいった

牢屋にいる人々と同じように

自由を求めて旅をしている人のもとで

自由の蝶は羽を休める

守り人

子どもたちは大人の先生

子どもたちは大人が忘れたものをもっている

子どもたちは神様と共にいる

子どもたちは「守り人」と遊んでいる

子どもたちは天空の城でくらしている

地上からはるか遠くにある子どもたちの城

子どもたちと「守り人」がくらす城

城は彼らのめざす夢となるでしょう

おおくの子どもたちはやがて「守り人」を城からおいだす

大人は地上の城に住みはじめる 「守り人」は地上をさまよ

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解放

森に追放され死刑台の夢を見ている人々

彼らは魂の牢獄に囚われた

追放された彼らの精神

彼らの心に光はあるか?

機械のように動く傀儡子の人形

人形が彼らを森へと追放した

人形は森さえ失くそうとしている

彼らの居場所はどこか?

一筋の光が魂の牢獄の隙間から降りそそぐ

それは彼らが願い続けた想像力の光

光が彼らをここから解放する

ここは終わりの地ではなかった

ここは本当の人生の始

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ほとり

千年以上前からほとりに迷い込む人々がいる

まぶしい太陽の肉とふれあう、木の葉とたわむれる優しい風

風は君をほとりに迷い込ませた

不思議で美しい唄が万物から振ってくる

彼はどこにいる 

ほとりに迷い込んだ羊達を統べる彼

万物の変形の彼

愛の象徴である彼は、千年以上前からほとりにいる

子供の頃、ほとりに迷い込むことがある

真っ直ぐで澄んだ瞳を持つ子供達

子供達は、ほとりの唄を話して

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精霊

精霊(かれ)は過去であり 現在であり 未来だ

心の最果てであり 新しい心の始まりだ

心の純粋の昇華であり

湧き上がる泉の源泉だ

あそこにも そこにも ここにも精霊(かれ)はいる

人間が建てた「モノ」には精霊(かれ)はいない

機械仕掛けの人間には精霊(かれ)は見えない

一本の樹にさえ精霊(かれ)は佇んでいる

心に絡まる蔓を振り払い

陽光に輝く精霊(かれ)の姿を探せ

まだ、道を変え

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万物

人が造った歓喜の下に「彼」はいる

「彼」は形を変える

樹々も、鳥達も、風も

「彼」が形を変えたもの

子供達は「彼」と共にある

子供達は「彼」と友達

「彼」は子供達を楽しませ、喜ばせる

大地から唄が聞こえる

やがて子供達は「彼」と離れる

子供達は「彼」を心から追い出し

人が造った歓喜のもとへいく

そして子供達は一つの駒になる

「彼」は人が造った世界から追い出され

自然の中で

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