#9 スタディーツアーを終えて
こんにちは。このスタディーツアーのプロジェクトチーフを務めさせていただいた小池です。SALでは4月はじめに報告プレゼンというイベントがあり、それをもってスタツアは一区切り、となります。何とも外発的なゴールですが、仕方ありません。新学期も始まり、いつまでもインドと教育と多様性について考えているだけでは現実的に生活していけませんしね、、、。僕も早速新しいキャンパスに通い始め、満員電車に揺られる新生活が待ち受けていました。コルカタとデリーで人波に飲まれてきましたが、山手線もなかなか凄かった、、、。早速ギブアップ気味です。
今日は最後に、インド教育スタツアを終えて僕たちの学びがどのようなものだったのかについて紹介したいと思います。
インド教育スタツアの背景
まず、私たちのテーマについておさらいしておきます。今回のスタディーツアー日本の学生段階における選択肢は多様か、ということに疑問を抱いて始まりました(#0参照)。デフォルトで多様な国の教育を実際に見ることで、教育と多様性の関係を再考し、日本の教育をより良くできないか、とそんな考えからインドに渡航先を決定しました。
インドで見たもの
そんなテーマの元、事前勉強で輪読をしたり、実際にインドに行ってみたりする中で、僕たちはインドの「価値教育」に着目しました。多様な民族、宗教、バックグラウンドをもった人々が集まり、ヒンドゥーの教えや地域の文化として平然と差別や階級意識が根付いているといっても過言ではないインドにおいて、相互理解を促進しインド人として統合していくため、そして「インド」として一国を成り立たせるためにはなくてはならない教育概念でしょう。
そんな価値教育が根付くところは、所謂「みんな違ってみんな良い」という言葉でした。例えば、ジャイサルメールで出会ったグンパットさんは、子供たちにカーストの存在は教えるが、決してそれが差別につながる理由はないことも併せて教えていました。そして、コルカタの私立高校では、進路指導も生徒の興味関心を尊重し、エンジニア系の大学進学者がいる傍ら、ミュージシャンになる生徒もいるそうです。
決してポジティブな意味でなくみんな違うことが当たり前なインドにおいて、往々にして「違い」は差別や不干渉の発端となってきました。「みんな違ってみんな良い」という言葉がインドの隅々まで行き届いた日には、インドはきっともっと素敵な国にあるのだろうと感じています。まあ、そんな道のりはまだまだ険しく長いでしょうが。
日本における多様性への視座
そんな価値教育、日本との違いは何でしょうか。実際、日本でも道徳という授業があるように、相互理解を促す取り組みはされているように感じます。しかし、一点留意しなければなりません、それはインドはデフォルトで多様な国であるということ。まさにスタツアの前提となっている部分です。デフォルトで人々が多様であるという状況において、より日常的に人々の価値観の違いが表出する場面が多いと言えます。だからこそ、インドとして統合していくために価値教育をしていくニーズが大きいのでしょう。そこが日本との根本的な違いだと考えました。
では、日本でもっと多様な選択肢を選べるようにするには、そのための社会土壌を作るにはどうすればいいのでしょうか。まずここまでの議論をふまえて、前提として日本が画一化している理由は、日本人が人種やバックグラウンド的なところに多様性が少なく、それ故一見みんな同じような画一感、同調感を感じられ、個々人のオリジナルな価値観が表出しづらいということだと考えました。つまり、価値観の表出の機会、これこそが、僕たちがインドにヒントを得た日本においてより多様な選択を許容する社会土壌を作るために必要なものなのです。
価値観の表出の機会。中々日常の中では難しいようにも思えます。ただ、僕たちの中で一つの手段となり得ると考えているものがあります。それが「対話」です。一見すると陳腐でありきたりな表現かもしれませんが、そんな対話こそ、最も身近にある価値観が表出する機会だと思うのです。隣のあの人の価値観に触れるためにも、違う社会的コミュニティの誰かの価値観に触れるためにも、対話という直接的な営みを重ねていかなければならないのです。
問いは続くどこまでも
さあ、では社会的にどうやって対話を重ねていきましょうか。これが僕たちの次なる問いです。対話を通して価値観を表出させる、交流させる。そのためには会話では物足りず、いろんな立場の人が参加できる環境が必要でしょう。そんな対話の場、どう作っていきましょうか。最後の最後にまた面白そうな難題に出会えました。
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学生団体S.A.L.とは
国際問題啓発団体を自称しているが、実態として活動の幅はより多岐にわたる。フリーマガジン制作や、ドキュメンタリー制作、インタビュー活動から教育支援活動まで、多様で幅広い活動を行う10プロジェクトからなり、長期休みには、国内外のスタディーツアーを実施している。色々な視点、色々な方法で世界を肌で経験し、自分の世界を広げることができることのできる場所である(寄稿者主観)。
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