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東京を”燈郷”と呼んだ日のこと。

東京に漠然とした憧れを持った時期は18歳ぐらいの頃でした。レベルの高い場所ばかりで、今とは全く違う世界が広がっていることに、興味を抱きます。しかし、地方に住む大人たちは、「東京=凍狂」のようなイメージを感じている人が多く、東京に行くことに対して肯定する人は多くありません。何の知識も経験もない僕は、自分の選択は正しくないのかもしれないと疑念を抱いていました。

その疑念を払拭させ、東京に推し進めてくれた要因の一つが、はっぴいえんどです。1970年に結成されたバンドで、邦楽ロックの原点とも呼ばれるバンドです。

1996年生まれの僕は、全く世代ではないですが、文学好きかつ音楽好きな友達から「すごいバンドがいる!」と言われ、存在を教えてもらいました。実際に知っていくと、すごいだけじゃ言い表せられないことを知り、ここまで知らなかったことの方が恥ずかしく感じました(笑)。

もちろん、「風をあつめて」という曲はなんとなく知っていましたが、この曲を深く聴いたのが高校生の時でした。何が素晴らしいのかを少しわかった気になったのがその時でした。

街のはずれの
背のびした路次を 散歩してたら
汚点だらけの 靄ごしに
起きぬけの露面電車が
海を渡るのが 見えたんです

この歌詞を聴いて、正直どういうことを言いたいのかは分かりません(笑)。しかし、すごく想像したくなる歌詞で、その想像を止めることができません。ここからサビの「それで僕も、風をあつめて」という歌詞に繋がるのですが、なぜ風を集めたくなるのかを想像してもしても分からないです(笑)。意味が分からない靄や、僕の出身地では見かけなかった路面電車など、それを知りたいという知的好奇心が刺激され、なんなら体感したいという欲も出てきます。都会には、そういう美しい景色が広がっていくのかと考えるだけで、楽しくなってしまいます。

他にも、「暗闇坂むささび変化」という曲にも興味を抱きます。

ところは東京麻布十番
折しも昼下り
暗闇坂は蝉時雨
黒マントにギラギラ光る目で
真昼間っから妖怪変化
ももんがーっ
ももんがーっ
おー
ももんがーっ

もう、全く分からないです(笑)。しかし、麻布十番ではそんなことが起きているのかと想像してしまいます。たったこれだけの短文なのに、ここまでわくわくさせるような言葉、ましてやあのメロディーで歌われると、頭から離れません(笑)。

その当時の僕は、東京に対して好奇心を持ちました。「東京=凍狂」ではなく、まだ見えていない美しさが潜む街というイメージが先行して、「東京=燈郷」という感覚になっていきました。そして、はっぴいえんどの歌詞を体感したくて、あのメロディーにまみれて街を歩きたいと思い、東京に上京しました。

まだ、路面電車が海を渡るのも見えてませんし、ももんがも見えていませんが、どうやら美しいことは確かなようです。そんな美しさを感じられる大人になりたいと思います。


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