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2020年コロナの旅12日目:スウェーデンの地底王国と、時々くまモン

2019/12/28

翌朝、お松は仕事で早くに家を出た。鍵を渡しておくから好きな時に出て言ってよいとのことだった。お松を見送り、朝食をとることにする。昨日買ったライ麦の食パンをトースターに入れ、チーズとバターとサラミとともに食べる。これがべらぼうにうまい。


腹ごしらえが済み、身支度を整えて外へ出る。お松の家はNacka(ナッカ)という地域にあり、そこからストックホルムの中心地までは4キロほどである。ストックホルムのことで、水路をたどっていけばいずれ中心地に出られるようになっている。私は郊外の街並みを見物しながら水路沿いに歩いてみることにした。


雪は2日前に少し降ったきり全く降っていないが、気温はさすがに低いようで水路の一部が凍っている。

カッチカチやぞ

ボートが置いてあったり、人々の水路沿いの暮らしが推し量られて面白い。

しばらく歩いていくと、いかにも北欧的な美しい住宅街の数々が姿を現す。


水路と橋と住宅街のコントラストがこんなにも美しく見えるのは全て計算づくなのだろうか。なぜスウェーデンのデザインはこんなにも卓越しているのか。


水路沿いは極めて寒く、またこの日は天気も良くなかったためSickla kajという路面電車の駅のところで一度土手から街に上がることにした。
駅があるということはそこにはpressbyrån(プレスビロン)がある。

実は今日の散歩の目的の一つは、ストックホルムの交通ICを手に入れることであった。逗留させてもらっているナッカからストックホルム中心部までの道のり毎日歩いて往復するのはさすがに時間がもったいないという判断である。日本でいうSUICAのようなカードを手に入れるわけだが、このカードの詳細については別稿にゆずることにしよう。プレスビロンはコンビニのようなもので、雑誌も各種置いてあるのだが、その中にくまモンの表紙があって驚かされた。

くまモンは国内で跋扈していた時でさえ「ご当地」キャラのくせに抜け目ない奴と思っていたが、遠く欧州の地までその活動範囲を広げている様をみてそのうつろな目がそら恐ろしく感じられた。ハーフ肥後もっこすとしては喜ぶべき快挙なのかもしれないが。


ともかくも7日間は乗り物に乗り放題になった。早速路面電車に乗ってみると、温かくてとても快適。


どこへ行くか迷ったが、結局先日エリザが勧めてくれた景色の良い丘のようなところに行ってみることにした。せっかく乗り放題なので、美しい駅の数々で有名な地下鉄(T-bana)を使ってみよう。


Liljeholmenという駅で地下鉄に乗り込む。確かに洗練されてはいるが、特筆するほどの物でもないように思われる。なんなら空港から直結のアーランダ駅の方がすごかった。

ただし自販機のポテチはうまい


電車に乗り、目的の駅へ。駅舎から出ると綺麗な教会がある。Blecktornsgraendというエリザが教えてくれた丘の名をグーグルマップで調べると、そこからそう遠くないようだった。暗い街を時折オレンジ色の街灯に照らされながら10分ほど歩いてその丘に到着。


そこから見える景色には、初日のカタリーナヒッセンとはまた違った美しさがあった。ストックホルムの街が、湾の向こうに見下ろされる。

なんとなく、東京のレインボーブリッジから東京タワーの方を見遣ったときのことを思い出す。そういえば江戸も昔は水路の街だった。


丘を巻くように道があり、そのどこからも素晴らしい見晴らしが楽しめる。しかしまたしても寒さにやられ、写真撮影もそこそこに帰ることにした。

今度はぜひとも美しい地下鉄の駅を見て帰りたい。今回はちゃんと調べて、特に美しい駅を狙って見に行くことに。


グーグルによると、地下鉄マップの中で青色で表示されている10号線と11号線、また赤の13号線の駅が特にアーチスチックらしい。エリザと行ったkungstraedgardenの駅が近くにあり、そこから青の路線に乗れるようである。

駅に向かう途中、ZARAでチェルシーブーツを買った。足元がマウンテンブーツでゴテゴテしているのが兼ねてから気になっていたのだ。履き替えた途端、シュッとした人間に生まれ変わった気がした。靴の力は偉大だ。このチェルシーブーツは今後幾多の困難を共に潜り抜けていく相棒となる。


kungstraedgarden駅は大きな駅で、入り口が多くあるようだった。先日とは違う入り口に辿り着き、早くもその異様さに期待が高まる。入り口に、巨人のような立派な体躯の男の彫像が置いてあり、にらみを利かせている。

クラシカルな雰囲気の像と対照的に、たてものの中は現代的な模様で彩られていた。


長いエスカレーターで深く深く地下に降りていく。

ようやく地階に到達してみると、果たしてそれは地底に築かれた地底人の秘密基地ともいうべきような想像を絶する空間であった。単に壁に絵が書いてあるというだけでなく、置物や照明まで凝っている。

通勤する人々の癒しとなるようにこのアートプロジェクトは始まったらしいが、いささかやり過ぎではないかと思われるほどの徹底ぶりで、ただ電車を待っているだけでもディズニーランドのアトラクションを待っているような感覚がある。日本であれば同じ「通勤通学者に憩いの時間を提供する」という目的でも、電車の車体にピカチュウか鬼滅の刃のシールでも貼って終わりだろう。


電車が来たので乗り込んで次なる駅Radhusetへ。こちらは先ほどよりはシンプルだが、古代ギリシャかローマのような様式の巨大な柱や渋い木箱のオブジェなどにより、遺跡の中を探検しているような錯覚を覚える。


次のCentralenはおそらくストックホルムの中でもそのアートで最も有名な駅であると思われる。10号線のホームだけでなく、10号線にいたる通路から青を基調とした壮大な装飾が施されている。


有名どころを見て回ったところで、時刻は午後7時。お松も家に帰っているようなので、そろそろ帰って夕飯を作ろう。泊めてくれているお松さんへのせめてもの恩返しである。


先日買っておいた食材と、お松が冷凍庫に保管していた大量の魚を使ってカプレーゼとタラのポワレ的な物を作ったがかなり旨かった。

北欧は食事が質素だというが、素材はいいものが手に入るしスーパーは日本より安いところも多いので自炊する人にはあまり問題でないと思う。そもそもスウェーデン料理はミートボールやホットドッグなど無難だし、他にも「空飛ぶヤコブ」や「ヤンソンの誘惑」など洒落た名前の、しかもおいしいものが多くあるのだが。

今日はずいぶん寒かった。悪寒がする。

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次回予告

2019年12月17日に始まった私の世界旅行。1年越しに当時の出来事を、当時の日記をベースに公開していきます。

明日は2019年12月29日。スウェーデン王国の威信を載せて沈没した当時最先端の戦艦、ヴァーサ号を保存したヴァーサ号博物館に行きます。

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