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ヴィセンテナリオ通り(1)

 僕たち家族は多分1年半くらいはヴィセンテナリオ通りに住んでいた。目の前には広い公園があって、放課後気分が乗っているときはショウタと二人でボールを蹴って遊んだ。アパートにはプールもついていたけど、たぶん引っ越したての夏休みに二回くらい入っただけだった。ショウタと僕の部屋は広めの半屋内みたいなバルコニーでつながっていて、そこに二人の共有物、レゴやゾイドや遊戯王カードをしまっておいた。二人でそこで遊ぶのが楽しかった。サッカーにしろレゴにしろショウタを誘うと目をキラキラさせて乗ってくれた。こっちの気まぐれで「やーめた」をすると裏切り者を見るような目で批判して、5回に一回はゴリラのように怒った。僕らの部屋とバルコニーの境はドアや壁ではなく大きなスライド式の窓だったから、ショウタに気づかれないようにのぞき見をして、彼を怒らせるのも日課だった。

 僕はそのころ朝が好きで、家族で一番の早起きのお母さんがキッチンで支度をしているところにお邪魔して、今日の弁当の中身は何だとか、そのコーヒーを一口くれだとか、とにかくそういったことで彼女の周りを付きまとって困らせるのも楽しんだ。お母さんはさすがに上手にあしらってくれていたど、一度だけキーキー声で発狂したようにアピールした。それからは彼女が朝ラジオを聴きながら紅茶を飲む時間を邪魔しないことが約束になった。お父さんやサキは、僕の朝のハイパーモードの直接的な犠牲者ではなかったからそこそこ楽しんでいたけど、ショウタはそうではなかった。13歳っていうのはそういうもんかもしれないけど、彼は僕らよりも少し朝に弱かったからだいたい一番最後まで寝ていた。お母さんに「ショウタを起こしてきて」といわれるのは、僕とサキにとってお祭りの開始の合図みたいなものだった。ショウタのベッドの枕もとで早紀と一緒に嵐の曲を歌いながら飛び跳ねるのが流行っていた時期は、かわいそうなことに、ショウタにとっては本当に困難な時期だったと思う。

『TIPs』
TIPs前書き
ディアナとルアンダ
チャンキーとミス.ニコル
ショウタとアリスター
アンドリューとエイモン
マックス、ダンテ、ベンジャミン
ホアンカとカルロス
ミスター.オリバーとミス.キャシー
冬場の朝は霞がかかっていたりして
2010年W杯at図書室
ヴィセンテナリオ通り(1)
エルダンテ通り、あるいはハムレット通り
スーペルオチョかピーナッツか


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