人間味の獲得
何もしなくても許される年齢は、小学生で終えていた。10代になると、何もしないことが恐怖になる。自分以外が何かしていることの恐ろしさ。ぼーっとする時間が見当たらず、忙しくしていることが当たり前になってゆく。こんなにもやることがあるのか、と知る十代の頃、少しでも長生きしたくなる理由が分かった気がした。永遠に終わらない宿題を抱えて、80年間を生きてゆく。そんなに生きていたら飽きてしまうのはないか、という恐怖があったけれど、心配いらなかった。歳を取るごとに、自動的にやるべきことが降ってきて、私たちを動かしてゆく。飽きることのない人生を過ごすべく、どんどん宿題が出されてゆく。そして、いつの間にか、何もしないことが恐ろしくなっていた。何かすることに安住し、忙しいことが快感になっていた。何もしないことの幸福を忘れてしまった私は、永遠に動き続ける幸福を手に入れた。