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剥奪できない想像力

車の窓から、月を眺めていると、こちらを追いかけてくるようで怖かった。

それは明らかに目の錯覚だけれど、錯覚という言葉がない時代に生まれていたら、どんなことを思っていたのだろうか? 間違いなく、月に様々な想いを重ねていて、だから、百人一首には、月という言葉がたくさん出てくるんだろう。小さい頃、月には見守られているような安心感があると同時に、常に監視されているような緊張感もあった。なんだか、神様とか宗教ができた理由がわかるような気がした。知識は、人類を豊かし、その分だけ、想像力を奪ってゆく。月が地球の周りを回っているとか、月光は太陽光が反射しているだけとか、正しいことを知れば知るほど、大切なことが思い浮かばなくなるようで、切なくなる。いっそのこと何も知らないまま生きてみたいと思い描くけれど、そんなこと無理だし、だから、生きれば生きるほど、人間という生き物は、どんどん想像できなくなってゆくんだろう。それでも、人間の心は未知であることが絶対条件で、宇宙は永遠に未知である。だから、人間は誰かのことが好きになり、毎年新作のSF映画が生まれるんだろうね。

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