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アヒルが死んだ後

失われた30年だとか、まるで日本が絶望的なように報道されているのを、よく耳にしたけれど、でも、宮崎駿が「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」を生み出して、錦織圭や本田圭佑が活躍して、映画の興行収入だって何度か塗り替えられているし、最年少で芥川賞を受賞した作家がいて、将棋界にスターが生まれて、NBAドラフトで一巡目指名された人がいて、だからさ、報道されているよりも絶望的ではないような気がしているけれど、これを能天気と言うのだろうか? 

確かに、バルブは弾けたし、年金問題とか、国の借金とか、問題は山積みなんだろうけれど、だからとって、失われた30年という表現はどうなんだろうか、と思うのです。僕たちは、失った覚えはないし、そもそも何にも手に入れていないのだから、勝手に決めつけないでください、と、いかにも団塊世代が名付けました感がある、と思うのです。確かに、歴史を学んだら、今の日本は失われた30年なのかもしれないけれど、それなら歴史を知らずに生きてゆきたかった。ヨーロッパ中世を暗黒時代と名付けたやつは、中世に生きていたヨーロッパ人全員に謝りなさい、ということをいう人がいるから、歴史というのは、その時代に生きていた人が、みんな死んでからじゃないと、定義づけできないだろうね。みんな死んだら、この時代はどう名付けられるんだろうか、と心配するけれど、なんとなく未来の名付け親のセンスを信じたい。

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