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ぶろぐ17んち
2020年6月21日 11:52
愛犬のクマジが吠える声で目が覚める。「もう少し寝させてくれ」そう言った僕だが、車内の暑さで眠ることができず、諦めて身体を起こした。キャンピングバスのドアを開けると、勢いよく外へ飛び出すクマジ。草むらで朝一の小便をする彼の横で、煙草をくわえながら一緒に用をたした。目の前には太平洋の海が広がっている。とっくに顔を出し終えた真夏の太陽から、容赦なく、それでいてエネルギッシュな熱を
2020年6月24日 16:35
二〇一六年の五月(当時三十六歳)からこの旅を始めた。旅で出会った人の興味深い話や道中の出来事などを書いていくけれど、その前に今までの自分の事をここでは紹介しておきたい。どのようないきさつでキャンピングカーライフになったのか?仕事は?収入はどうしているのか?みなさんの率直な疑問はこんなところではないだろうか。まず初めに、家が裕福なわけではない。父親は印刷会社のサラリーマン。母
2020年6月25日 14:35
仕事とトレーニングを両立していた僕だが、もう一つの転機となる趣味に出会うことになる。それが、サーフィンだ。毎週のように趣味の合うサーフィン仲間と千葉の九十九里海岸に通っていた。サーフボード一つで波に乗る。青い海に広い空。陸には山が見え、健やかな風をたくみに操りトンビが鳴いている。太陽のエネルギーで魂が充電されていくのがわかる。サーフィンを通じて自然を感じ、地球を感じ、宇宙を感
2020年6月26日 13:50
仙台のキャンパー アタルさん二〇一六年の五月から旅を始めた僕は、夏に向けて太平洋沿いを北へ進むことにした。途中、茨城のサーフポイントでキャンピングバスが砂浜にハマり、身動きがとれずにいるところを地元のサーファーに助けてもらう。総勢十一名でキャンピングバスを押してもらい、脱出できたときは、一人一人にお礼を言って握手をした。そのときのインスタグラムの投稿だ。JAFだとバスはその場で
2020年6月28日 14:41
東北編の最後に、アタルさんから聞いた話をシェアしたいと思う。キャンピングカーで晩酌しているときのこと、アタルさんが話し始めた。『俺の先輩でゲンさんって人がいるんだ。この辺りでは有名な伝説のビックウェーバーでさ。』ゲンさんは、アタルさんよりひと回り年上で、白髪交じりの長髪にヒゲをたくわえ、真っ黒に日焼けした肌だという。僕は頭の中でハワイアンをイメージしていた。ゲンさんは若いころ、
2020年7月2日 14:36
夏から秋にかけて東北地方を巡った僕は、年末に向けて一度、東京の実家へ帰ることにした。正月を家族や仲間と過ごし、二〇一七年一月中旬から旅を再開させる。冬の間は南に向かおうと考えていた。太平洋沿いを気の向くままに南下していった僕は、一月の下旬には和歌山県に入っていた。ここでまた面白い出会いがある。串本町にあるサーフポイントをみつけ、何日か滞在するために駐車場を探していたところ、
2020年7月4日 16:18
仙人と過ごした和歌山県を出発した僕は、淡路島を経由し四国に入った。徳島県にも有名なサーフポイントはいくつかあるが、僕は気の向くままに高知県までキャンピングバスを走らせた。直観といったら聞こえはいいが、【なんとなく】という感覚を頼りにして進む。旅をしていると《この感性》が磨かれていく気がする。高知県に入り、海沿いの県道を走っていると数人のサーファーの姿がみえた。空地のような駐車ス
2020年7月5日 15:09
翌日、志藤さん宅で目覚めた僕は【ある企画】を思いついた。『志藤さん、今日は休日でしたよね?本木さんとBBQしませんか?』数日前のこと、いつものように志藤さんは僕のバスが停めてある駐車場へ、仕事の合間に顔をだしてくれていた。すると、普段は使われてないはずのこの駐車場へ一台の軽ワゴンが入ってきた。近くに停まったワゴンから出てきたおじさんは、慣れた手つきでテーブルとイスを出し、年期の
2020年7月14日 13:25
本木さんにお礼をいい、別れを告げてキャンピングバスを走らせた僕は、ある女性のことを思い出していた。彼女は島根県に住んでいる。木村由香との出会いは十年ほど前にさかのぼる。当時、東京で先輩とバリバリ働いていた頃、恵比寿に会社があった僕は、都内を中心に電車で移動することが多かった。あるとき、渋谷駅前のバス停で大きなスーツケースを持った女性が目にとまった。『綺麗な人だな~』そう思
2020年7月16日 16:36
九十九里海岸でサーフィンを終え、一宮の家に戻ってきたときに電話が鳴る。『稲ちゃん、久しぶり~』電話の相手は、学生時代の同級生だ。『昨日さ、稲ちゃんが公開プロポーズをする夢を見たんだよ。それがすごいリアルだったから電話しちゃった。』そう言いながら、電話越しで同級生の岩本奈美が笑っている。『はぁ~?それだけで電話してきたのかよ?』僕は呆れて答える。『いや、本当にリアルだ
2020年7月17日 15:55
階段をあがってくる足音が聞こえる。夢なのか、現実なのか?寝ぼけている僕の耳元で彼女がささやく。『行ってくるね』そう言って僕に口づけをし、由香は出かけた。朝が苦手な僕は、そこから一時間ほどベッドの中でまどろみ、やっとのことで身体を起こす。一階のリビングでは、ご主人の起床を待ちわびたクマジが吠えまわる。ウォーターサーバーから水を注ぎ、一気に飲み干すと、チャンダンのお香に火