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今こそ「逆張り」の時。

「遅いインターネット」
著者:宇野常寛 / 編集人:箕輪厚介 山口奈緒子 (幻冬舎)

Devious-捻くれ者

自分でも自覚しているのだけれど、僕は素直な性格ではない。
好奇心旺盛だけれど、猜疑心も強い。
マスに流されるより、ニッチで踏ん張りたい。
五輪競技の生観戦より、講談師・神田伯山先生の連続物を生で聴きたい。
自民党に託す未来より、れいわ新撰組が切り拓く未来を見てみたい。
ジョー・バイデンさんより、バーニー・サンダースさんを応援したい。
(ジョージ・W・ブッシュさんや、ドナルド・トランプさんには支持する糸口が見当たらない...)

"devious"
Devious people or plans and methods are dishonest, often in a complicated way, but often also clever and successful 
-Cambridge Dictionary-

Facebook疲れ

2020年が開け、東京五輪イヤーに突入ということで本格的に世間のから騒ぎにも熱を帯びてきたな、と感じられる頃、僕はFacebookに疲れたな、と感じることが増えていた。
今から10年ほど前にアカウントを開設した当初は、いとも簡単にしばらく疎遠になっていたアメリカ在住の友人と再会できた事にとても興奮したことを今でもはっきり憶えている。
しかし、開設してから10年も経つと、最初の頃の新鮮な気持ちはすっかり影を潜めた。
長年惰性で続けてきた恋人関係に訪れる倦怠感のようなものを覚えるようになっていた。
例えば、その時の気分に任せて読み手への配慮を欠くような内容を投稿したり、タイムライン上に現れる知人の何気ない投稿の裏に潜む自慢話(これが僕の邪推だったり、妬みだったりすることは否定できない)にイラっとしたり、なぜ関係を保っているのかわからないような状況が増えていた。

Twitterアレルギー

Twitterに関しては、9年前の3.11のタイミングで情報入手の手段としてスマホの画面を流れるタイムラインを追いかけていた時期が一時的にあった。
しかし、この制限された文字数の中では、自分の考えや気持ちを的確に表現することも、他者の考えや真意を的確に汲み取ることも出来ないと感じ、それ以上深入りする気にはなれなかった。
今回のCovid-19危機においては、自分が全く知識を持ち合わせない感染症が身近に迫っている、ということで、自己防衛のため、家族、友人、同僚など自分の周りへ悪影響を与えるリスクを限りなくゼロにするため、積極的に情報収拾の為に活用しようと心がけたが、環境的には9年前以上のカオスが拡がっていた。
それこそ、Covid-19の封じ込め方が問題視されたクルーズ船と同じ状態で、”清潔”な情報と”不潔”な情報の間のゾーニングが全く機能していない。
(医学用語の清潔・不潔は、より専門的な意味を含んでおり、日常的に使用されている清潔・不潔とは異なるというのは今回初めて知った。)
僕にできることは、自主的隔離【Self Quarantine】だけだった。

一億総白痴化時代の顕在化

FacebookやTwitterを眺めた時に、イラつきを覚えるのは、その投稿内容に「読解力の欠如」が現れている時だ。
一億総発信者時代だなんてとんでもない。
60年近く、おそらく根っこの部分で人はほとんど進歩していない。
情報技術が著しく進歩していることは疑いようのない事実だけれど、人間はその進歩に追いつくだけの「進化」を遂げていない。
1957年に社会評論家の大宅壮一さんがバズらせた「一億総白痴化」が顕在化しているだけだ。

テレビに至っては、紙芝居同様、否、紙芝居以下の白痴番組が毎日ずらりと列んでいる。ラジオ、テレビという最も進歩したマスコミ機関によって、『一億白痴化運動』が展開されていると言って好い。
— 『週刊東京』1957年2月2日号「言いたい放題」より
(Wikipedia [ 一億総白痴化]より転載)

読解力を身につけるだけでは足りない

そんな中、僕の前に現れたのが宇野常寛さんが上梓した「遅いインターネット」だ。
世の中の出来事やそれに対する世間の反応に自分がイラつき、過剰に憤りを感じるだけで、それを解決する方法を具体的に考えたことはなかった。
野暮な表現だけど何度も何度も膝を打ちながら、読み進めていった。
この本に書いていることをすごく乱暴に表すと、

読解力を身につけるだけでなく、文章力も身につけよう

となる。
これだと小学生がまず最初に学ぶことと何ら変わらないけれど、侮ることは出来ない。
今まで自分の子供達には勉強以前に「本を読め!読解力を身につけろ!」と口を酸っぱくして言ってきたけれど、それだけでは片手落ちだったのだ。
情報を発信することができる全ての世代で読解力・文章力が低下していることは、一億総発信者時代においては致命的で深刻な問題だ。
僕はかなりの部分で共感できたし、積極的に彼のアイデアを実践してみようと思った(この投稿もある種の実践だ)。
少なくともこの本で書かれているアイデアが拡がり、実践されることで、将来的に世の中の混乱の一部を未然に回避することはできるはずだ。

Slow Down & Buck the Trend

「速さ」を求めるのが世の常で、大多数がそれを正解と信じて疑わないこの世の中で、「遅さ」を求め、実践していくのは完全に時代の流れに逆行している。
でもいつの時代も、甘い果実を獲得しているのは、流れに逆らう勇気を持ち、それを実践している人達だ。
そう、今こそ「逆張り」の時なのだ。

"buck the trend"
to be obviously different from the way that a situation is developing generally, especially in connection with financial matters
- Cambridge Dictionary-

私的編集後記-Self-Editorial Note

著者の宇野さんのことは、Newspicksのインタビュー記事などで読んでいたし、知っていたけれど、著作を読んだのは今回が初めてだ。読み終わった後、出演した番組を視聴したことはなかったので、彼が主宰を務める「遅いインターネット」のサイトを覗き、いくつかの動画を視聴した。正直にいうと、かなりクセが強いし、万人受けするタイプの論客ではないと感じた。この本の最後に書かれている謝辞の一説がなければ、いつもの僕なら敬遠するタイプの人物だったかもしれない。

そして箕輪とは付き合うなと僕に忠告する人たちは多いけれど、彼が僕に誰かと付き合うなと言ったことは一回もない。この一点を持ってして僕は箕輪を支持する。というか、有り体に言えば、僕は彼が好きだ。
(p.213 [付記と謝辞]より)

僕は宇野常寛を支持する。そして彼が好きになった。



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