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遠く離れたクアラルンプールで、日本語が話せる「抹茶ヒーロー」に癒された話

クアラルンプールの繁華街「ブキッビンタン」の巨大ショッピングモール「パビリオン」に行った。

ブキッビンタンは、クアラルンプールの中心部にある、超巨大ショッピング街。5つ星ホテルが並ぶ。高級ブティックが並ぶ。路上ライブに人が並ぶ。もう、お祭り状態だ。
クアラルンプールは、簡単に言えば東京である。栄えに栄えている。

(ブキッビンタンって言いたい。口馴染みが最高)

そんなブキッビンタンには、「日本最大級」のショッピングモールに匹敵するビルが、複数ある。それも、隣接している。
でっかいショッピングモールの隣に、またでっかいショッピングモールを建てちゃってる。次々と。

端的に感想を言う。「やりすぎだろ!マレーシア人何考えてんの!?」

そして、その中でも、特に頭のおかしいショッピングモールが「PAVILION(パビリオン)」である。

地下1階から7階までの8フロア。歩き疲れるほど1フロアが広く、とにかく派手なんだ。デザインがかっこよくて、未来かと思った。

パビリオン内部 ↓

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この、得体のしれない巨大ショッピングモールの6階には、日本をモチーフにした「TOKYO STREET(トーキョーストリート)」が存在する。

親日家が多いといわれるマレーシアでは、日本の味や日本製の商品がメジャーである。

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「外から見た日本のイメージって、こうなんだろうなぁ」と思う。桜が咲き、赤ちょうちんがぶら下がる。
日本人から見ると、誇張しすぎた日本モノマネである。

誇張しすぎてる部分はさておき、日本人としてテンションが上がるポイントもある。それは、日本の王道ミュージックが流れていること。

「四六時中も好きと言って…」

あ、サザンだ!桑田さん!

「ありがとうと君に言われるとなんだかせつない」

宇多田ヒカルさんじゃないすか!

マレーシアのショッピングモールの店員さんが、日本の音楽でノッている。J-POPがフロアを沸かしている。おもしろい。

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↑妙に映えるトーキョーストリート

ここには、DAISOなんかもある。中身は普通の百均だったので、旅の途中に不足したものをDAISOで買った。
マレーシア旅行に来た感じが全くしない。

一瞬、日本にいるような錯覚が起きて、日本語が通じなくて「なんで?」と思ってしまった。

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「きらきら きらきら パラダイス」というとんでもない店もあった。10年位前の、日本の女子高生がモチーフのような感じがした。

いろんなものがデコってある。ジャラジャラしている。きらきらジャラジャラパラダイスだ。

ガラケーにストラップをつけまくっていたときの、古き良きJK文化がそこにあった。さすがに全部スマホケースだったけど。

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TOKYOをいろいろ探索していると、のどが渇いた。トーキョーストリートだけでも結構広い。

一杯飲むのに、ちょうどよさそうなお店を発見した。

店の名は「抹茶英雄(Matcha Hero Kyoto)」

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抹茶英雄(まっちゃえいゆう)と書いて、抹茶ヒーロー。名前が好きだ。

京都という文字を入れることで本場感を出している。

店の前のメニュー表を見ながら、何にするか考えていると、奥から視線を感じた。抹茶ヒーローの店員さんが横目でこちらを見ている。

「抹茶ヒーローの店員さん」では言いづらいので、「抹茶ヒーロー」と呼ぶことにする。

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店に入ると、「い、あーっ、いらっしゃいませ…」と挨拶された。弱々しい。

親日家が多いとはいっても、入店した時の店員さんの反応は「Hello」か「Hi!」が普通だったので、「いらっしゃいませ」は珍しかった。

街中を見ている限り、マレーシアの若い男性は刈り上げの短髪が多い。年中、暑いからなのかな。

だけど、抹茶ヒーローはサラサラヘアー。日本の大学生みたいだった。
マレーシアボーイ感が薄い。

僕「濃厚宇治抹茶ラテ下さい」

抹茶ヒーロー「あ、はい…か、かしこまりました(語尾の"した"は、聞こえるか聞こえないかぐらいの小声)」

緊張しているような、おどおどしたような震える声で言われた。

人と話すのがあまり得意でないタイプに見える。話しかけられたくないかな、と思いつつも、あまりにも自然な日本語の発音をするので、会話をしてみたくなった。
できるだけわかってもらいやすいように、短い日本語で質問をした。

僕「日本語うまいですね」

抹茶ヒーロー「いえいえ、そんなことないです。僕なんて日本語、まだまだです。」

僕「日本好きですか?」

抹茶ヒーロー「あ、僕…は日本が好きで。日本語勉強してて、はい。」

僕「すごいですね。どうやって勉強してるんですか?」

抹茶ヒーロー「YouTubeとか見たり、本、読んだり。ですね。」

僕「YouTube見て勉強する時代かあ。誰見てますか?」

抹茶ヒーロー「ヒカキンとかですかね」

僕「マレーシアでも見られてるんだ…。日本が好きだから、ここで抹茶作ってると。」

抹茶ヒーロー「フッ、えへ、はい。日本のこと知りたくて、ここで働いてます。」

基本的には、こちらから話しかけないと会話が始まらないが、たまにニコニコしてくれるのが嬉しい。

ここの抹茶は、注文を受けてからお茶を立てる、本格的なものだった。言葉遣いと同じく手つきも丁寧で、ゆっくり確実に作ってくれた。

緊張しているのか、日本人と会話できているかが不安なのかわからないが、お茶を立てる手がずっと震えていた。

抹茶ヒーローは、日本のことが心底好きで、熱心に日本語を勉強している大学生だった。
日本語をただ勉強しているだけでなく、謙虚さや、わびさびなどの日本文化についても理解しているようだった。

店のたたずまいも相まって、受け答えが上品に見えた。

YouTubeではHIKAKIN TVを見ていると言っていた。謙虚さや、他人を立てる心はHIKAKINさんから盗んだんだろうか。
改めて、HIKAKINさんのすごさを実感した。

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濃厚宇治抹茶ラテは12.5リンギットなので、300円ちょっとである。この値段で、ここまで美味い抹茶ラテが飲めるとは。しかも遠いマレーシアで。…感動した。

店を出ようとしたとき、抹茶ヒーローに呼び止められた。

「えっとですね。飴です。サンプルなので。もしよかったら。」

飴を渡された。その手はまた震えていた。
頑張って話してくれた日本語。1つ1つの言葉選び。1回の接客で抹茶ヒーローのファンになった。

もう会えないと思うと、少し寂しい。

「ありがとうと、君に言われるとなんだか切ない。」
東京みたいなクアラルンプールで、そんな気持ちになった。

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