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「自分らしさ」はひとりで作れない。Nizi Project に共感する理由。

「ありのままの自分」を表現することは良いことだ。いつの頃からか、私たちはそう信じてる。でも、「自分らしさ」を見つけるのって全然簡単じゃないし、それを表現するのはすごく難しい。そう思いませんか?

そんなことを考えたのは「自分らしさ」を表現することに、必死で本気な少女達を見たから。

「褒める」という名の芸術

心を打たれるきっかけって本当に些細なことで、たった一言の言葉や、言葉にさえならない「つぶやき」だったりする。

外出自粛中のゆっくりとした朝、テレビのチャンネルを回す手がふいに止まった。情報番組『スッキリ』でやっていた Nizi Project のコーナー。

これまで Nizi Project のことも、K-POP のこともほとんど知らなかったのだけれど、いろんな人がその時の熱気をSNSで発信している。

唄っているミイヒさん、15歳とは思えないような圧倒的な歌唱力。思わずため息がこぼれるような才能が泉のように湧き出してくる。ほんと、世界って尊い。

でも、私が心を打たれたのはそこではなくて、彼女のパフォーマンスを見たプロデューサー・J.Y.Park さんがもらした一言、

「うますぎる・・・」

なのです。(映像の0:25)

J.Y. Park(パク・ジニョン)さんはTWICE、2PMなどのアーティストの「生みの親」とも言われている音楽プロデューサー。一言でいえば「えらい人」なんだけど、そんな彼のまるでファンみたいに素直に称賛を惜しまない姿に、感動すら覚えた。

とにかく褒める J.Y. Park さん

なぜ、彼はこんなにも素直に褒めるのか。それを知りたくて、hulu で「Nizi Project」を1話から見始めた。やっぱり、いいよ、J.Y. Park!

とにかく褒め方が気持ちいい。

「え、もう終わりですか。没頭してしまった。」
「もっと見たい。あなたのつぎのステージが楽しみです。」

オーディションの評価者なのか、いちファンなのか分からないような褒め言葉。彼自身が楽しみ、惚れ込み、感想を素直に吐露する。

なぜ、 J. Y. Park は本気で褒めるのか

1話から見ているうちに少しずつ見えてきた。それは、オーディションを受ける少女達に一貫して、たった一つのことを求めているからではないだろうか。

彼が求めるものは、歌唱力でもダンステクニックでもない。技術は「あとから教えてあげられる」と言う。スター性だって必要な要素の一つにすぎない。彼がアイドルの卵たちに求めているもの、それは「自分らしさ」だ。

象徴的だったがの2話、谷川陽菜さんに対しての言葉。彼は、まず彼女の切実さ、必死さ、情熱を褒める。しかし、その直後に指摘する。

僕や観客にいい子に思われることが、
まるで踊って歌う理由になってしまっているようです。

自分自身がしっかりと感じて、表現しているように見えません。

 僕たちはみんな1人1人の顔が違うように、
1人1人の心、精神も違います。
見えない精神、心を見えるようにすることが芸術です。 

  歌とは何か、ダンスとは何かという事を、
急いで教えてあげないといけないと感じました

すごく厳しい、でも、なぜか優しい。
「自分らしさ」の尊さとあやうさ、そして向き合うことの覚悟を怖いくらい端的に表現している。思わず巻き戻してもう一度聞いた。

「自分らしさ」の対極にあるのは、自信を持てずに常に誰かの評価・他人の目を気にしている状態なのだ。

その後、J. Y. Parkさんは「保留」にしていた谷川陽菜さんを、「合格」させることを決断する。歌とは何か、ダンスとは何かを教えるために。

「自分らしさ」は1人では作れない

「J. Y. Park さんの言葉って、私が言ってほしかった言葉なのかも」

Nizi Project のあるファンが言っていた言葉だが、とても印象に残っている。

「自分らしさ」は不安定で、もろく、自信を失うとまたたく間に霧散してしまう。だからこそ周りにいる誰かが感じとり、本人に「手応え」を持ってもらうことが大事なのかもしれない。

機械的で一方的な「いいね」が増えて評価は見えやすくなった。しかし、それでは「手応え」を感じるのは難しい。大事なのは「自分のパフォーマンスは、確かに誰かの心を動かしたんだ」という実感と確信ではないだろうか。

その実感を持ってもらうために、 J. Y. Park さんもまた自らをさらけだして熱を込めて褒めるのではないだろうか彼が伝えているのは評価ではなく、実感。それが「うますぎる」という短い一言に込められたエネルギーだったように思う。

逆説的だけれども、「自分らしさ」を完成させるためには、自らも裸になり応えてくれる「鏡のような誰か」が必要なのかもしれない。

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