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【お薦めの一冊】 瞑想の効果が信じられない? / 「人生の扉を開く最強のマジック」 ジェームズ・ドゥティ

今まで多くの本を読んできました。

その中には、私の人生に良い影響を与えてくれた本が沢山あります。

そんな本の感想を書き留めておくことで、私自身の備忘のためにも、また、これを読んで下さった方の本選びにも、少しでもお役に立てればと思っています。

1.瞑想って本当に身体に良いのだろうか? どんな効果があるのだろうか?と思っている方に

最近、瞑想の効果に注目が集まっています。

以下でお薦めさせて頂いた書籍でも、体に良い5つのことの1つとして、瞑想が取り上げられています。

ただ、瞑想と聞くと何か宗教的なイメージを抱く方や、その効果も疑わしいと思う方も多いかもしれません。

また、瞑想に興味があっても、実際にどのように行えば良いのかがよく分からないという人も多いかと思います。

本書では、そんな瞑想の効果や実施方法について、物語を通じて解説してくれます。瞑想初心者にとって、とても分かりやすく読みやす一冊となっています。

さらに、本書はそんなお手軽さに加え、筆者が医者であり、また、瞑想の研究者であるという点で信頼性もあります。

そして何より驚きなことが、本書で描かれている物語は、筆者の実話という点です。

まさに瞑想によって嘘のようなドラマティックな人生を送った筆者の経験は、単に物語としても十分読み応えのあるものになっています。

2.読み始める前の注意点 /  「はじめに」には生々しい手術表現あり

本書を読み始める前に、一点だけ注意があります。

本書を読み始めると、一番最初に「はじめに」という章があります。

そこでは、筆者が行う脳手術の様子が描かれているのですが、かなり生々しい手術の表現がありますので(いわゆるグロテスクな表現)、そのような表現が苦手な方は、第1章から読み始めた方が良いかと思います。

3.著者 ジェームズ・ドゥティ氏とは

著者のジェームズ・ドゥティ氏は、スタンフォード大学医学部臨床神経外科教授です。

決して恵まれているとは言えない貧しい家庭環境の中でも、幼少期に出会った瞑想により(ただし、当時はそれが瞑想であることやその生理学的効果を理解してはいませんでした)、医者になる夢を叶え、巨万の富を得ることになります。

しかし、重大な転機が訪れます。その内容については本書に譲りますが、本当に実話かと疑わずにはいられないドラマチックな人生を送っています。

その後、共感や思いやりが人の脳機能や健康にどのような影響を及ぼすかを研究する「共感と利他主義研究教育センター(The Center for Compassion and Altruism Research and Education =CCARE)」をスタンフォード大学メディカルスクールに設立しています。

本書はこのような筆者自身の半生がベースとなっています。

4.脳は鍛えることができる。いつからでも。

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本書は、物語を通じて生理学的観点から瞑想の効果を解説していますが、瞑想が脳に与える効果の前提として、脳の「神経可塑性」というものに言及しています。

これは、脳は非常に柔軟で、大人になってからでも、変化し、順応し、変容するものであることを指摘したものです。

つまり、瞑想とは、端的に言えば、この脳の神経可塑性を利用して、訓練によって脳の神経回路を鍛え、身体に良い影響をもたらすことを意味しています。

本書で挙げられている具体的な瞑想の方法は以下の通りです。

(1)身体をリラックスさせる
(2)心をリラックスさせる
(3)心を開く
(4)意思をかかげる(なりたい自分を描く)

なお、一度に上記を全部行うのは難しく、また、時間もかかってしまうので、一個ずつ練習・実施していくのが良いかと思います。

以下でそれぞれの内容を簡単に紹介します。

(1) 身体をリラックスさせる

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まず最初に身体をリラックスすることが挙げられています。

【方法】

「身体をリラックスさせる」と聞くと、とても簡単なことのように聞こえます。

ただ、いざ実際に「身体をリラックスさせる」と意外に難しいことが分かります。

例えば、今この瞬間、10秒間だけ実際に「身体をリラックス」させてみて下さい。

・・・

今、肩の力は本当に抜けきっていたでしょうか。つま先の力はどうでしょうか。つま先まで力が抜けていたでしょうか。

このように、「身体をリラックスさせる」という行為についても、いざそれを意識してみると簡単ではないことが分かります。

本書では、そんな「身体をリラックスさせる」という一見簡単に思える行為についても、その具体的な方法を教えてくれます。

【効果】

では、なぜ身体をリラックスさせることが体に良いのでしょうか。

それは、人間の交感神経と副交感神経が影響しています。

人は、緊張したり、脳がストレス(生存への脅威や恐怖)を感じると、生存本能として交感神経が刺激され、アドレナリンやコレチゾールが放出されます。

その結果、身体は生き残りに必要な機能にのみ集中するため、生き残りに直ちに必要でない身体の機能が停止してしまいます。そのため、消化は遅くなり、筋肉は収縮し、唾液の分泌は抑えられるます(緊張すると口がカラカラになるのはこのためです)。

そして、このような状態が続くと、心と体に様々な負の影響が表れることになります。怒り、不安、不眠、そして免疫不全などがその影響で、これがいわゆる慢性ストレスが体に与える悪影響と言われるものです。

一方、人はリラックスして呼吸を落ち着けると、副交感神経が刺激され心拍数や血圧が下がります。

その結果、上記のような交感神経の刺激による悪影響を抑えることができます。

つまり、身体をリラックスさせることで、ストレスや脳の緊張から生じる生理的反応(怒り、不安、不眠、そして免疫不全など)を抑えることができるのです。

(2) 心をリラックスさせる

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身体をリラックスさせた後は、心をリラックスさせることになります。

【方法】

心をリラックスさせることとは、端的には何も考えない状態になることです。

ただ、これも、「何も考えないこと」と聞くと簡単に思えますが、実際に行ってみると難しいことが分かるはずです。

ここでも実際に、今30秒間だけ「何も考えない」でいることを試して頂きたいと思います。

・・・

本当に30秒間何も考えないことができたでしょうか。

「もう10秒たったかな。」「あ、今日中にあれをしないと。」「何か眠いな。」など、何も考えないと思っても、実際には次から次へと頭に何かが浮かんでしまったのではないでしょうか。

それは仕方のないことで、本書では筆者も「何も考えないこと」に苦労します。

本書では、「何も考えない」状態になるために、次の3つの方法を提示しています。具体的な方法については是非本書を読んでみて下さい。

(1)呼吸に意識を向ける方法
(2)ロウソクの炎を見つめる方法
(3)マントラを唱える方法

【効果】

では、心をリラックスさせること、つまり、何も考えないことを訓練することでどんな効果があるのでしょうか。

それは、このような訓練を行うことで集中力や注意力が増すという効果があります。

上記で実際に試して頂いた通り、実際に「何も考えないこと」とは、「何も考えないこと」に集中することに他なりません。

そして、それには強い集中力・注意力を必要とします。

そのため、「何も考えないこと」を繰り返し行うことで、集中力や注意力を鍛えることができるのです。

(3) 心を開く

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そして、次が心を開くことになります。

 【方法】

「心を開く」とは、一般的には、自分の心を他人に開くこと、つまり、自分の本心を他人に打ち明けるといった意味が強いかと思います。

ただ、ここでの「心を開く」とは、そのような意味合いとは少し異なります。

ここでの「心を開く」とは、本心を打ち明けるというよりは、その存在価値を認めることを意味しています。

そして、その存在価値を認めることは、他人に対してだけでなく、自分自身に対しても必要となります。

つまり、「心を開く」とは、「自分には価値がある」ことをまず自分自身で認めること、そして同じように、「他人にも価値がある」ことを認めることを意味しています。

この「心を開く」という意識は、抽象的でなかなか分かりにくい点ですが、もちろん、本書においては、具体的にどのように「心を開く」のか、その方法が紹介されています。

【効果】

このような「心を開く」練習によって、思いやりや共感を高めることができます。

そして、この思いやりや共感は、自分や他人に対する様々なバイアスを排除し、世の中をあるがままに受け入れることにつながります。

また、生理学的に言えば、人間の脳は本能的に、助けを必要とする人を見かけると、その人を助け励ますようにできており、他者に何かを与えると、脳の快楽と報酬系が刺激され、何かをもらった時よりも大きな快楽を感じるようになっています。

つまり、他人に対する思いやりや共感は、自分に対しても幸福感をもたらすことに繋がります。

さらに、近年の研究においても、他人との繋がりが多い人ほど長生きし、病気からの回復が早いことがも実証されています。

逆に、孤独と孤立は、早期の病気の原因とも言われており、以下の書籍でも、認知症の原因の一つとして、孤独と孤立を挙げています。

(4) 意思をかかげる(なりたい自分を描く)

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最後に、意思を掲げる(なりたい自分を描く)ことです。

【方法】

自分の理想像、つまり、目標や成し遂げたいことを頭に思い浮かべ、それを達成した自分をイメージします。

最初は抽象的なイメージしか湧かないかもしれませんが、それをより具体的なイメージにしていきます。

たとえば、「お金持ちになる」ではなく、具体的にいくら欲しいのか、また、実際にその金額を得た自分(どこに住み、何を買っているのか等)をより具体的にイメージしていきます。

もちろん、この「意思を掲げる(なりたい自分を描く)」についても、その具体的な手順は本書でしっかり解説されています。

【効果】

脳は見慣れないものより、慣れ親しんだものを選択する傾向があり、その際、想像上の体験と現実の体験を区別しません。

そのため、未来の成功を思い描くことで、その未来の達成に向けて自然と選択・注意・行動が向くようになります。

つまり、夢見た未来を実現することに集中することができ、その目標に向かっての実行力が養われます。

5.筋トレを行うように、脳のトレーニングも行う

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冒頭でも述べさせて頂いた通り、脳内の神経回路は、大人になってからでも変化させることができます。

毎日筋肉のトレーニングを行うことで、少しずつ筋肉が肥大化するように、毎日トレーニングすることで脳内の神経回路も望ましい状態に変えていくことができます。

誰もが自分の脳、考え方、そして行動を変えられるのです。

もちろん、本書においても、望むだけ・瞑想するだけで何でも実現するとは言っていません。

行動しないと何も変わりません。

ただ、人間は、行動するためには考え方を変える必要があり、そのためには、脳内の神経回路を変える必要があるのです。

そのため、瞑想が効果的であり必要と言えるのです。

私は本書を読んで、健康のために、毎日筋トレやウォーキングをするように、瞑想をすることも毎日の生活に取り入れる価値があると思うようになりました。

繰り返しになりますが、私が本書をお薦めする理由は以下の通りです。

(1)話が物語調となっているため、読みやすいこと
(2)筆者の実体験に基づいて書かれていること
(3)筆者が専門家(医者であり、瞑想を科学的に研究している)であること
(4)生理学的観点からの解説がなされていること

気になった方は是非実際に読んでみて下さい。瞑想の効果を信じられるようになるはずです。

本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。

記事に関する質問など、何でもご遠慮なくコメント頂ければ幸いです。まだまだ勉強不足の身ですが、できる限り回答させて頂きます。