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連載(50):人類の夜明|宇宙と人間「心」

この記事は『かとうはかる(著)「人類の夜明」』を連載しています。

一般人も科学者も、この肉体がすべてだと思っております。

そして人間の思考の源は脳にあり、私たちは何事もその脳の命令によって行動していると信じています。

心とは脳の産物であり、脳はまた心を形成している、これが今日の常識的人間像でしょう。


それではここで、その脳について触れてみることにしましょう。

人間の脳は百数十億という細胞によって作られており、その重さは成人男子で1,300~1,400g、成人女性で1,200~1,250gといくらか男性が重いようですが、重さが知能に関係していることはなさそうです。

左右の大脳半球の表面積は約2,250平方センチ(約新聞紙一枚分の大きさ)、その細胞の数は生まれてから死ぬまで一定で、たとえ壊れても決して再生しないといわれています。

脳は成長するにつれ多くの樹状突起をひろげ、付近の脳細胞とからみあい、神経繊維に髄鞘を発生させ脳の活動を高めていきます。

つまり、成長段階で受けるさまざまな刺激や情報が、脳細胞の伝達機能を複雑化させていくようです。


さて、筋肉や神経繊維が電気的振動を出すことは、一九世紀の始めころから知られていましたが、脳からも振動が出ているのではないかと考えたイギリスの生物学者ケイトンは、兎の脳に電極をあて精密な電流計を取りつけ脳波の計測に成功しました。

これが脳波計測の初めだといわれています。

今日ではエレクトロ二クスの発達により精密な計測が可能になり、脳の位置的働きもかなり知られるようになりました。

その位置的働きは主に、頭頂葉と後頭葉の部分は、知覚・認識・理解をつかさどり、前頭葉は思考・創造・意志の精神活動を、そして側頭葉は記憶や判断をする場所だといわれています。

しかし物質である脳から、思考・知恵・記憶・美的感覚・喜怒哀楽・恋心などの感情、つまり[心]が本当に生まれてくるのでしょうか?。


そうではありますまい。

脳の機能は、単に情報や刺激を伝える中継所にしか過ぎず、五感から入ってきた情報を分析し、判断し、行動指令をだすところ、つまり[心]は別にあるのです。

それでは一体心はどこにあるのでしょうか?。

心の存在場所については、昔から色々と取り沙汰されてきました。

つまり心とは、脳の中に存在するとする脳室局在論、心臓にあるとする心臓論、肝臓にあるとする肝臓論、肺臓にあるとする肺臓論などですが、いくら臓器を裂いても心があったという話は聞いたことがありません。


当然です。

心は物質を超越した異次元のものですから、いくら臓器を裂いても見つかるはずはないのです。

ただし異次元のものではあるが、三次元的にいえば、どうも胸の辺りが、心のありからしいのです。

その証拠に、私たちが感動したり悲しくなった時に胸に込み上げてくるのは、心臓が大きくなったのでも、肺臓が膨張したのでもなく、感動や悲しみの感情が膨んだ結果があの込み上げなのです。

また、思い出せそうで出せない時、胸や喉のところで何かが引っ掛かった感じがしますが、これは記憶庫が胸の辺りにあることを証明しているのです。

だから昔から、[胸の傷が痛む・溜飲が落ちた・胸が騒ぐ・胸がときめく・胸がわくわくする・胸が踊る]などの言葉遣いがされてきたのです。」


でも、“怒り心頭に発する”というように、怒りは頭で感じるのではないだろうか?。

「怒ると頭がカーッとなるのは、血が一瞬脳にのぼるからです。

しかしその前に、必ず胸が高ぶっているはずです。

もし本当に物質である脳がすべてを支配しているなら、睡眠中近くで音がしてもなぜ聞こえないのか?。匂いがしてもなぜ匂いを感じないのか?。五感は寝ているとき完全に開放されているわけですから、音は鼓膜を通じて脳に伝達されているはずですし、匂いも鼻腔を通じて脳に伝わっているはずです。

耳や鼻や脳は物質ですから、入ってきた刺激をより分けたり拒絶したりするはずがない、なのに感じないのは、それらの器官は単なる伝達中継所で、それを受けとる意識が別に存在しているからではないじゃろうか?。

つまり寝ている状態とは、意識(心・魂)が肉体から離れている状態をいい、目覚めている状態とは、意識(心・魂)が肉体に入って五感を支配している状態をいうのです。そしてその心の存在場所を三次元的にいえば、胸のあたりにあるというのです。」


では記憶のカラクリは、どうなっているのだろうか?。

「記憶は脳の神経細胞に一時傷痕を残すことでまず脳に滞在し、すぐに想念帯(意識の帯)に刻まれ、さらに潜在意識に落ち込んで最終的に次元の違う記憶庫で保存されるのです。

激しいショックを受けたとき、その記憶がなかなか消えないことがありますが、これは脳細胞に深い傷痕をのこすためです。

でも脳細胞に刻まれた記憶は、どんなショックであっても遅くて数ヶ月、早ければ数日で消えるはかなさをもっています。

細胞が刻々新しいものと交換されていくことを考えれば、時間と共に記憶が薄れていくのは当然でしょう。

どんなショックも時が解決するといわれる理由もそこにあり、だからこそ私たちは絶望から再起することができるのです。

こうして脳から想念帯に刻まれ更に潜在意識に落ちこんだ記憶は、次元の違うところで永久に保存されることになるのです。

だから少し前のできごとは、左側頭部の脳で思いだそうとし、何十年も昔の記憶を思い出すときは、胸の辺りで思い出そうとするのです。

しかし前世の記憶を思い出すとなると、そう簡単にはいきません。

なぜなら、顕在意識を静め、想念帯を清め、潜在意識へ降りていく必要があるからです。」

(つづく)

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