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連載(29):都市国民の資格

この記事は『かとうはかる(著)「人類の夜明」』を連載しています。

都市国民の資格

「それではここで、国民の資格について述べましょう。

新生児が誕生し、届がなされた時点で、都市国民としての資格が与えられるのはいうまでもありません。

また国民が他の都市から他の都市へ転入転出する場合も、正式な申し込みがなされれば何ら問題はありません。

外国への移住も外国からの移住も同様です。ただしこの場合、正式国民としてあるいは正式都市国民として認められるには、原則として何等かの職業に就いていなくてはなりません。

この制度の趣旨は、どこの国にもどこの都市にも所属しない無籍者や無国籍者を存在させてはならないという配慮から、全世界共通の決まりとしたのです。よって現在のように、流民や浮浪者あるいは戸籍上の不明者は全く存在しなくなります。」

「蒸し返して申し訳ありませんが、国民の中には浮浪者となって自由に食べ物を手に入れ、自由に生活する者も出てくるのではないでしょうか?。」

「等しく教育の機会が与えられ、等しく家が与えられ、等しく生活必需品が与えられるのに、それを放棄してまで浮浪者になる者がおるだろうか?。」

「では、気候のよい国、環境のよい国に人が集まるという、居住地の偏りは起こらないでしょうか?。」

「今日の難民移民問題は、生活不安から止むに止まれず起こっている経済難民が殆どです。

誰が故郷を捨てたいと思うでしょうか?。誰が国を離れたいと思うでしょうか?。

盆や正月にあの混雑をおして故郷に帰るのも、死んだら骨を故郷の地に埋めて欲しいと願うのも、やはり生誕の地が恋しいからです。

故郷というものは、それほど人の心を掴んで離さないものなのです。

奉仕世界が浸透し生活が安定した暁には、旅行はともかく、国を離れようと思う者はまずいなくなるでしょう。

先程もいったように、肌にあった故郷というものは、何物にも代えがたい宝ものなのです。色、匂い、肌触り、この慣れ親しんだ波動から、どうして逃げ出したいと思うでしょうか?。」

(つづく)

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