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東大生が新卒でVR/ARスタートアップに入社した話

 こんにちは。イマクリエイト株式会社の松迫です。
 今年の4月に大学を卒業、新卒で入社し、現在主にエンジニアとして従事しています。

 イマクリエイト社員の自己紹介シリーズということで、僕は、大学を卒業して新卒でVR/ARスタートアップに入社した思考過程をここに綴ろうと思います。就職活動や進路に悩む方にとって、サンプルの一つとして参考になれば幸いです。

VRとの出会い

 自分がVRと出会ったのは、確か大学2年生の時、新宿でたまたまVRジェットコースターの無料体験を見つけた時だったと思います。
 プラスチックの箱にスマホを差し込んで見るタイプのVR体験でした。両眼立体視、360度全方位に広がる映像、本当にジェットコースターに乗っているかのようなヒヤッと感...。どれをとっても衝撃的な体験でした。それと同時に、生意気な僕はこう思いました。

 「VR体験、自分で作りたい!」

 そして次の年の大学の文化祭で、当時代表を務めていた東大ハロプロ研究会の展示企画として「アイドル×VR」をテーマにしたコンテンツを自作し、体験展示しました。その時はVRコンテンツを作るためのソフトウェアの存在も知らず、3DCGモデリングソフトで無理やり全天球動画を出力しました。大学の情報教育棟のパソコンを占拠し、複数台で映像をレンダリングしてなんとか間に合わせたのもいい思い出です。

 その展示をきっかけに中高時代の先輩にお声掛けいただき、株式会社GATARIというVRスタートアップにインターン生として参加しました。その時に学んだことや、楽しかった設立当初のあれこれは、今の僕の価値観を形成したと言っても過言ではありません。感謝しています。
 
 そしてその流れで「東京大学にVRサークルを作ろう」という波にも最初期から参加させてもらい、創設メンバーとして組織の土台作りに携わりました。UT-virtualと命名されたそのサークルでは、あらゆる点で「0から1を作る」ことを経験しました。2代目代表として活動していた大学時代の後半は、ほとんどUT-virtualのことしか考えていなかったかもしれません(笑)。

 UT-virtualでは、組織の立ち上げ、ブランディング、広報発信、人集め、チーム開発、後進育成などなど、本当に沢山のことを仲間と共に考えて学び、開拓していきました。その経験やそこで知り合った人々は、本当にお金では買えない宝だと感じています。

 そのUT-virtualの活動の中で、沢山のVR/ARに携わる先輩方と知り合う機会を頂き、そうして出会ったのが現イマクリエイトCEOの山本さんと、CTO川崎さんでした。

 新宿でジェットコースターVRを体験してアイドルVRを作り、UT-virtualを運営してイマクリエイトに入社するまで、全てが繋がっています。
 ちなみに、僕がVRを知った2016年から今年まで、毎年「VR元年」と言われています

二人の先輩から感じた「覇気」

 CTOの川崎さんと初めてお会いしたのは、VRけん玉師としてUT-virtualで講演頂いた2018年12月、そしてCEOの山本さんとお会いしたのはTokyo XR Startups(以下TXS) 5期のデモデイの2019年7月だったように思います。

 お二方はTXS5期の同期ではあるものの、当時は山本さんは「体験シェアリング」、川崎さんは「CanR」という会社のそれぞれ社長でした。

 ある日、川崎さんからお誘いを頂きオフィスに行くと、案内された会議室には川崎さんのみならず山本さんも同席されていました。
 別々の会社の社長が肩を並べて目の前にいる状況。僕はあらゆるパターンを瞬時に想定し、最悪の場合大学時代4年間学んだ躰道の技を繰り出すことさえ念頭に入れていました(冗談です)。

 そしてお二方から出てきた言葉は、「合併」の二文字。僕の想定したパターンにはありませんでした!

 お二方は、合併を決断するに至った経緯を話してくださりました。
 営業力はあるけど開発力に欠ける体験シェアリング。一方で開発力はあるけど営業力に欠けるCanR。両者の強みと弱みを補完しあうために、合併を決断したとのことでした。

 僕はその話を聞き、武者震いを覚えました。当時の僕のなけなしの知識では、リソースの限られたスタートアップにおいては、足りない人材やスキルは頑張って知り合いづてやWebの求人で探すか、もう自分たちで手探りでやってしまうか、だと思っていました。

 そんな僕の前に突如として表れた「合併」という新解釈フロンティア。一見ちからわざにも思えるその決断をされたお二方に感銘を受けました。そして目の前に鎮座するお二方からは、紛れもない「覇気」を感じました。

 「絶対に成し遂げてみせる」「世界にギガインパクトを与える」といった想いが、お二方の全身から文字となって溢れ出るのが目に見えるようでした。

 そして僕も、「この会社はデカくなる」と思ったと同時に、「デカくなる会社に創設期から関われる」という幸運を目の前にしていることに気が付きました。
 普段ポーカーフェイスなので感情が読みづらいと言われがちな僕ですが、心の中では沸々と湧き上がってくる何かを感じていました。

本当はエンタメが好き

 イマクリエイトは現在、主にビジネス向けにトレーニングVRを開発・販売しています。先日ナップ溶接トレーニングをリリースし、本格的な販売体制をスタートさせました。

 直接のお客さんは主に企業や法人なので、商品そのものを一般向けに派手に広報することも少ないですし、口コミで「イマクリエイトのサービスすごいよ!」なんてのが広まることも今のところほぼありません。一般から見ると華々しい感じはなく、「VRベンチャーだけどちょっとお堅い感じ」がするのは否めませんし、実際そのように見えるのも理解できます。

 一方、僕は本当はエンターテインメントを作るのが一番好きです。大学時代もバンドで作曲をしたり、部活でプロモーション映像を創ったり、演劇の脚本・監督をしたりしていました。仲間と作った作品が直接お客さんに届き、その反応を生で見られることに、ものづくりの幸せを僕は感じていました。

 それでも、僕はイマクリエイトでエンジニアとしてとても楽しくものづくりが出来ています。その理由としては、二つあります。

 まず一つ目。ビジネス向けの開発とはいえ、やっていることはゲーム制作に近いということです。ちょっと細かい話になりますが、弊社では開発に主にUnityというゲームエンジンを使用しています。「ポケモンGo」や「Fate」など多くのゲームがこのUnityを使って開発されていますが、なぜそういったゲーム制作ソフトウェアを使うのでしょう?
 イマクリエイトで開発しているサービスは、単に見るだけや聞くだけのVR体験ではありません。ユーザーの入力に対してその時々に応じた映像や音、振動といったフィードバックがあり、その繰り返しの中で技術を習得できるVR体験です。毎回のトレーニングには、始まり(オープニング)と終わり(エンディング)があります。どういう表現をしたらユーザーが心地よく手順を踏んでくれるか(ストーリー)、楽しんでもらいながら何度も体験してくれるか(継続性)。そういったことを、3次元空間のなかで試行錯誤しながら開発をしていきます。オンラインのデータベースと紐づけて他のユーザーと比較したり(対戦)、トレーニング結果を閲覧できるような仕組み(戦績)も開発しています。
 実際、開発をする上で役に立つ本やサイトは「Unityゲーム制作」のものが多いですし、大学時代にサークルでゲーム制作をしていた時と感覚はなんら変わりません。楽しいです。

 二つ目は、会社のビジョンが将来的にエンタメとも繋がる可能性を秘めていることです。
 イマクリエイトが今後展開しようとしている「ナップ」シリーズは、「頭での解釈を挟まない、『正しい動きに慣れる』ことに特化したトレーニング」です。

 今販売しているのは「ナップ溶接トレーニング」のみですが、イマクリエイトは一言も「ビジネスの分野しかやりません」とは言ってないんです。ベースにある理念は「能力拡張」「習うより慣れるトレーニング」です。それってつまりは、芸能やエンターテインメントにも十分に当てはまります。歌、ダンス、演劇、華道、能、書道、など...。
 なんなら、大本である「けん玉できた!VR」の題材「けん玉」もある種伝統的な芸能です。スポーツトレーニングにも片足突っ込んでいるようなもので、ナップというコア技術を発表する前には「CanGolf」としてゴルフトレーニングのVRも開発しています。
 e-sportsがとんでもない盛り上がりをみせてきている昨今、もしかしたら「ゲーム上達のためのトレーニングVR」なんてもの作っちゃうかもしれません。VR内でスマブラをやって上達する、的な。なかなかにカオスな感じはしますが、本質的にはそういうことです。

 ということで、僕の中ではイマクリエイトの事業はエンターテインメントとかけ離れているとは感じていません。楽しいです。

「よろず屋」を認めてくれる場所

 さて、結局なぜ僕は新卒でイマクリエイトに入社したのか?

 大学卒業後の進路について考えた時、就職するか、院進するかで悩みました。特定の分野を突き詰めて開拓するアカデミアの世界もとても魅力的だし、自分が割いた労力と時間が利益やお客さんの幸せに直結するビジネスの世界も、自分の性に合っているような気がしました。

 そんなこんなで悩みながらもサークル活動に明け暮れていた僕は、いわゆる「就職活動」をほとんどしませんでした。ただ「ぁまのじゃく」なだけだったのかもしれません。
 まともに就活をやらなかった手前、就活をして社会人になった同期たちのことは本当に尊敬し、並大抵の苦労ではなかっただろうと思っています。
 逆に言えば、部活やサークル活動をする中で色んなスタートアップ企業の方と会ってお話を伺っていたことが、僕にとっての就職活動だったのかもしれません。なので結果的に選択肢はほぼスタートアップ企業しかなかったのですが(笑)。

 とはいえ、同期や先輩・後輩からいろんな就活話を聞く中で、「あ、やっぱり自分はスタートアップ向きかも」と思うようになっていました。というのも、とある友人からよく言われるのですが、どうやら僕は「よろず屋」のようです。少人数で、メンバーそれぞれが複数の役割を兼任することが多いスタートアップのスタイルは、「よろず屋」の自分にぴったりだと感じていました。

 「よろず屋」とは「なんでも屋」という意味ですが、文字通り僕は「色んな事に手を出すのが好き」です。
 主に大学時代、映像、音楽、ラジオ、小説、演劇、雑誌、ゲーム、プロジェクションマッピングなど、あらゆるメディア表現に手を出してきました。友人からは「君がやったことがない表現は『壁画』くらいなんじゃないか」と言われたことがあります。
 それぞれのメディア表現にはそれぞれの利点と欠点があります。それを少しでも知っていると、何か新しいことをするときに「ここには音楽制作のこのノウハウが使えそう」「ここはストーリーテリングのこの手法が応用できるな」などが思い浮かびます。いい意味で「マルチクリエイター」、悪い意味で「器用貧乏」にもなりかねない性質ですが、そんな僕の特性をも弊社は上手く扱ってくれます。

 新型コロナウイルスが蔓延した今年のはじめ、その影響で一部の取引が滞ってしまいリソースが空いたイマクリエイトでは、ちょっと趣向を変えてVRゲームを作ってみようということになりました。その際に開発したのが、VRリズムフィットネスゲームGroove Fit Kingdom!です。このゲームについては後日別のnoteで詳しく書きますが、全体のプロデューサー兼ディレクターのような立ち位置でやらせてもらい、自分が作りたかったVRゲームを社員の皆さんと一緒に作ることができました。この時、自分の「よろず屋」としての性分を存分に活かしてくれましたし、なによりこのプロダクトの開発を経て自分の在り方が肯定されたような気がしました。本当に感謝しています。

 ただ、これまでマルチに活動してきた反動で、これといった専門性をもっていないのがある種の悩みです。

 最近バチェロレッテ・ジャパンを見ました。お付き合いする男性を選ぶ一人の女性「バチェロレッテ」や参加者男性の皆さんは、番組内で「旅人」と表現されていました。本当の自分を探す旅人。真実の愛を探す旅人。
 僕も、本当に自分が在りたい姿を探す旅人、なのかもしれません。ちなみにバチェロレッテ・ジャパンに出演する予定はないです。

 これを読んでくださっている中高生や大学生の方がいたら、ひとつ大きな「軸」を持ちながらマルチにいろいろと挑戦して吸収してみることをオススメします。

 ちなみに、この記事のヘッダーのキャラクターは、魔剤くんというやつです。LINEスタンプもあるのでよかったら見てやってください。

結論、イマクリエイトだった

 CEO山本さんやCTO川崎さんのお話を伺っていると、イマクリエイトという会社は人の動きを可視化してトレーニングVRとしてビジネスにしていくだけなく、アカデミックな研究にも視野を広げ、その社会実装にも貢献しようとする思いが感じ取られました。

 進路を考える際に、アカデミアに残るか社会に出るかで悩んだ自分にとって、アカデミックな研究を社会実装しようとする思想が感じられたイマクリエイトは魅力的な会社でした。 実際、現在イマクリエイトの技術顧問として東京大学先端科学技術研究センターの稲見昌彦先生が就任してくださっていたり、CTO川崎さんが筆頭著者としてけん玉できた!VR:5分間程度のVRトレーニングによってけん玉の技の習得を支援するシステムという論文を発表していたりと、アカデミアとの繋がりも大切にする会社です。

 ここまで長文にお付き合いいただきましたが、結論、僕のこれまでの生き方や価値観、そしてこれからの世界を考えてみても、イマクリエイトは未来の可能性と魅力に満ちた、自身と共にレベルアップしていきたいと思える会社だと感じました。

 イマクリエイトで活動すること。それが僕が導き出した最適解です。

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