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最近読んで良かった本3選【読書記録】#15

起床後30-60分は読書をしないと1日のスタートが切れなくなってしまった今日この頃。

最近思うのです。

読書は地域差を問わず、広く開かれた教養娯楽なのだと。

ごく当たり前な気付きですが、僕が読書にこれほどどっぷりと浸かってしまったのはそのことに気付いたからなのでしょう。


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●思いがけず利他

利他と利己の違いに端を発し、利他とはどのような仕組みで形作られ受容されるのか。著者の研究テーマである『利他論』を深く学ぶことができる素晴らしい本でした。

分岐と収束を繰り返しながら著者の論が拡張しているためとても読み応えがあります。

だから、利他的であろうとして、特別なことを行う必要はありません。毎日を精一杯生きることです。私に与えられた時間を丁寧に生き、自分が自分の場所で為すべきことを為す。能力の過信を諫め、自己を超えた力に謙虚になる。その静かな繰り返しが、自分という器を形成し、利他の種を呼び込むことになるのです。  
いま私は、利他をそういうものとして認識しています。
おわりに

著者の結論は以上のようなものですが、ここに至るまでの文脈を正しく解釈するとより一層理解が深まります。

自分の頭を使って著者の思考を咀嚼するプロセスが楽しい1冊です。


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●わたしを離さないで

初めてのカズオ・イシグロ作品。緻密に練られた構成と大胆な発想に満ちた最高の読書体験でした。

海外文学というものに僕は長らく苦手意識を持っており、話があっちこっちに飛躍したり、語り口に白々しさが滲んだりしていると感じていました。

それはやはり言語感覚に違いがあるからでしょう。英語には英語圏の考え方、フランス語にはフランス流の価値観が反映されており、優れた翻訳を持ってしても日本人の心にしっくりくる海外文学というのは少ないのだと思います。

その点で、日本人の血を持っているからかカズオ・イシグロ氏の作品は読みやすい海外文学に仕上がっていると感じました。誤解のないように言っておくと、決して平易な内容ということではなく、読み手に対して付かず離れずの絶妙な距離感が心地よいのです。

ええ、論議はありましたよ。でも、世間があなた方生徒たちのことを気にかけはじめ、どう育てられているのか、そもそもこの世に生み出されるべきだったのかどうかを考えるようになったときは、もう遅すぎました。こういうことは動きはじめてしまうと、もう止められません。癌は治るものと知ってしまった人に、どうやって忘れろと言えます?  不治の病だった時代に戻ってくださいと言えます?  そう、逆戻りはありえないのです。あなた方の存在を知って少しは気がとがめても、それより自分の子供が、配偶者が、親が、友人が、癌や運動ニューロン病や心臓病で死なないことのほうが大事なのです。

『わたしを離さないで』では、このような加速する科学技術に対する警鐘も盛り込まれています。その緊張感にすっかり引き込まれてしまいました。

他のカズオ・イシグロ作品も読み漁ろうと思っております📚


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●それでも日々はつづくから

タイトル、エッセイ形式、装丁に惹かれて紙媒体で購入した本。燃え殻さんの作品を読むのは今回が初めてでしたが、気怠い雰囲気がとても気に入りました。

何となく心が摩耗する瞬間だったり、過去の出来事をふと思い出したりする様子の切り取り方が独特でついつい読み進めてしまうのです。

いろいろな人生がある。道もそれぞれいろいろだ。舗装された高速道路、砂利道、けもの道、道なき道。でも案外僕たちは、その行き着く先が同じようなものだということを、忘れがちだったりするのかもしれない。
挫折だと思ったら左折だった

燃え殻さんが紡ぐ言葉の温度、人生観に是非触れてみてはいかがでしょうか?


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本の世界には、果てしなく底知れない面白さがあるのだと改めて感じました。

今夏は忙しくなりそうですが、読書をする時間も大切にしていきたいものです🌞

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