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入間さん
2024年5月22日 14:50
Chapter 20 夏祭りのラウドスピーカー 公園は午前中から人混みだった。 ニシから川を挟んだエリアにあり、公園は市内で最大の面積があり、敷地内にはスポーツ施設や公営図書館、よく手入れのされた花壇や噴水広場もある。 横はすぐ堤防になっていた。堤防からツインタワーをはじめビル群も見ることができるし、夏になれば河川脇の開けた視野のおかげで遠くの花火も見える。近所の住民にとっては格好の散歩スポッ
2024年5月15日 14:20
Chapter 19 夏祭り実行委員会 井上と入れ違いにサングラスが俺の横に立った。俺をここに連れてきてからずっと他のテーブルにいたのだ。こいつはサングラスをつけたまま何を食ったのだ?「ホテルに戻るぞ」 サングラスが言った。ここからなら歩いても帰れる距離だがそうはさせないのだろう。大人しく席から立ち上がりサングラスのあとについて行く。店内の客から盗み見るような視線を感じた。 ツインタワー東側
2024年5月11日 20:54
Chapter 18 クーデター計画とウィンク「単刀直入に言うとですね、まずは鈴木さんの会社の業務記録や顧客名簿ですね」 どちらもボスに指示された通り確保してある。業務記録とはよく言ったものだ。顧客が未成年者と倒錯的なセックスに耽る様子の隠し撮りだ。活用すれば俺もそれなりの金にできるだけのネタだ。しかしそんなことをしたらすぐに行方不明になるのはわかっている。「そして小夏ちゃんの身柄ですよ」
2024年5月10日 19:39
Chapter 17 人道的な配慮 車は空港から出るとそのまま海岸沿いの道を走った。花火見物客の路上駐車が多く蛇行して進む。 女の運転は荒かった。殺されかけたばかりなのだから仕方ないだろう。まだ肩を上下させている。 俺だってそうだ。動悸は止まなかったし、現実感が戻ってこない。 しばらく進むうちに感覚だけは少しずつ戻ってきた。「もし動けるなら座席についてシートベルトを締めて下さい」 耳鳴り
2024年5月7日 23:00
Chapter 16 閃光、失禁、鈍痛 職員用駐車場に停まっている車は少なかった。 ビルの陰から黒いワゴン車が出てきてこちらへ曲がってくる。運転席に田中の顔が見えた。田中は俺を見るとにかっと笑った。右の頬からこめかみににかけて大きなガーゼが当ててある。腕は包帯だらけだ。減速していたとはいえ走っている車から飛び降りてその程度で済んだなら本当にタフなやつだ。 田中はワゴンを俺たちの脇にゆっくりと
2024年5月6日 22:26
Chapter 15 空港の特別ラウンジ 壁にはイルカの絵がかかっていた。ジェットの排気音が申し訳程度に開いた曇りガラスの小窓から聞こえた。 予約した便はとっくに出発していた。ぎりぎりで押さえた最後の1席だった。その席はキャンセル待ちの誰かを乗せて飛んで行った。 素っ気ない長机を囲んで椅子が4つ置いてあって、壁の一面は鏡張りだ。マジックミラーだろう。まるで警察の取調べ室だ。それなのにイルカの絵
2024年5月5日 09:50
Chapter 14 ドライブ・マイ・カー 諦めて家へ帰ることにした。 不動産屋に言われるまま家具と家電もセットで契約して家賃と一緒に割賦を払っている。おかげで冷蔵庫も洗濯機もテレビもまとめて最新のものが揃った。その割賦を払い終えるまでもなく逃げることになった。やたらと笑顔の爽やかな不動産屋の店員を思うと心苦しい。 ナビの画面をテレビに切り替えた。 ニュースは接近している台風の情報を伝える
2024年5月3日 16:53
Chapter 13 蝉、逃げ遅れたあと 業務は停止していた。 児童福祉局が入ってきたわけじゃない。とにかくそれどころじゃなくなった。 杉浦に呼び出される前日、つまり事件の翌日にはボスは雲隠れをしていた。 会った時はいつものようにボスの自室で葉巻を吸いながらだった。 番犬みたいな運転手ががさごそと荷造りをしていて落ち着かなかった。「どこへ行くんですか?」 一通り話が終わって俺は尋ねた。
2024年5月1日 18:03
Chapter 12 気分はもう暴動 爆発音が聞こえた。壁が震えたような気がした。店内のやかましさが一瞬で静まる。 事件以来、各地の花火大会は異常な盛り上がりだ。花火大会がピークの時季だった。 事件の翌日に予定されていたとある地方の花火大会では、主催者が陽も落ちていよいよというタイミングで自粛を発表して、詰めかけた群衆はそのまま暴徒になった。それ以来、各地で連日花火大会が続いた。 静ま