<小説>ハロー・サマー、グッバイアイスクリーム 第九回 デリバリードライバーの長い夜
Chapter 8 デリバリードライバーの長い夜 少しだけ開いた窓の隙間から破裂する花火の音が聞こえた。
「猫、みつかった?」
俺はルームミラーごしに話しかけた。小夏は手元のゲーム機に向けていた顔をちらりと前に向けた。
「安藤と話してたよね。猫が飼いたいって。トイレ砂まで買い込んできてさ」
「まだ見つけてない」
「今の季節なら、事務所の目の前の公園にたくさんいるよ。子猫が生まれる頃だし」
「干乾びてるのなら何匹か見たけど」
暗がりで表情は見えない。すれ違う対向車のライトに