『卍』谷崎潤一郎

はじめに:妖艶な女性をめぐる騒動

本作は、一人の美しい女性光子と、光子に淡い恋心のようなものを抱く主人公園子の物語である。主人公には夫がいるが、光子に惹かれる心をとどめることができない。

本作は、ドロドロとした心理戦が続く小説で、非常に読みごたえがある。

異郷から来た女史が何者か知りたい人はこれを読んでくれ。

そして、女史のnoteをどう読むか、こちらを参考にしてくれ。

光子:男女共に虜にする

主人公園子は、同じ芸術学校に通う光子と出会う。二人は次第に惹かれあっていき、関係をもつようになる。

しかし実は光子には綿貫という男性の交際相手もいた。光子は園子のことは好きであったが、綿貫の策略から逃げることができず、光子と園子はついに心中を決意する。

結果的に、二人は死ぬことはできず、園子の夫が二人を看病していた。その看病の際に、なんと園子の夫と光子が関係を持ってしまう。

そこから奇妙な三人での交際が始まってしまう。

結果的に園子と園子の夫と光子は自殺を図るも、園子だけ死ねなかった。二人のあとを追おうかと考えるも、園子の夫と光子が実はわざと自分を出し抜いて死んでいったのではないだろうか、と考えこみ始めてしまう。結局、園子だけが自殺を諦めて、生き残ることとなった。

おわりに:美しい表現技巧と心理戦

本作は何よりも、光子の妖艶さとそれに惹かれていく園子の心理を表現した美しい表現技巧が特徴的である。そして、その表現技巧が、本作のドロドロとした心理戦をより引き立てている。

同性愛に対して厳しかったご時世に書かれた作品でもあるため、その点では非常に価値の高い作品であると言える。是非読んでみて欲しい。


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