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二冊読めば元が取れるKindle Unlimited⑤


本漫画は一冊4、500円するし、Kindle Unlimitedは月額980円。
ロクに本を読まない自分のために二冊読むという記事になる。

今回は夏休みということでホラー特集である。

自分の好きなジャンルであるので、本を探していて五冊あるなと思ったら五冊読んでしまった。なので今回は特にお勧めの二冊(★)と、あとはおまけ程度に感想を書いていこうと思う。


エス「リング」シリーズ(★)

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映画史に残る名作「リング」と同じ作家による作品である。
2012年に公開された映画「貞子3D」の原作ということになっているが、映画がクリーチャーバトルものだったのに対して、書籍版は猟奇連続殺人事件を軸とするサスペンスやミステリーになっており、全く異なったストーリーが展開される。

貞子3Dを見た当時、どうしても前述の映画「リング」の印象が強く、その期待を背負ったままに鑑賞してみてかなり違和感を感じた。

貞子は概念に近い存在である。作中では、実在した「山村貞子」の怨念であるが如く語られるものの、あくまでそうとれるような意味合いを含んでいて、それが現実的か否かの曖昧さを上手く保っているのである。

だからこそ映画ではっきりとしたクリーチャーが大量に出現してしまうことには、3Dという特色を生かした演出の為であるとはいえ、ちょっとギャグっぽく感じてしまった。そういった意味では石原さとみの演技の甲斐もあり、かなり面白かった。

このエスという小説は、医学や映像の現実的な根拠としての情報を交えているにも関わらず、どうしてもそれに囚われない「怪異」としての要素にホラーの良さがあり、そういった怪奇現象としての正体不明さは、浪漫や色気すらを教えてくれる。そんな勉強になる一冊であった。



現代百物語ー因果(★)

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MXテレビを見ていて岩井志麻子先生のファンになったものの、本を読んだことがないという程に自分はニワカで。
Kindleで読めるものを見つけたので早速読んだが、これは本当に面白いしおすすめもできる。

作者の知り合いの作家や元タレントの主婦、地元の同級生など、人から聞いた話を99話収録してある。
たまたまシリーズの8つ目のものを読んだが、もう数冊はKindle Unlimitedで読むことができる。

一話毎、ほんの2ページ強ほどの文章量であるにも関わらず、非常に簡潔的で分かりやすく、それでいて含みを持たせたり想像に委ねたりする技量が流石で、勉強になるし読んでいて小気味良い。

様々な人から聞いた話により、怪異であったり事件であったり、人間が怖い話であったりするが、そんな恐怖を抱く事柄の根本を辿れは、執念や嫉妬、情など、生きている人間から生じる業である。

錯覚や思い込みといって仕舞えばそうかもしれない。しかし、そうした強い念が具現的に、実際的人に影響を及ぼしているのならば、こうした強い念によって滅びるのは他人か、あるいは自分か。
見知らぬ他人の人生のドラマを垣間見た時、どこか教訓めいた部分もあるように感じてくるので、つくづく誠実に生きていきたい気もしてくる。

とにかく色々な話が沢山あるので、人それぞれ何かしらに引っかかる話が見つかるかと思う。

岩井志麻子先生の弟子になりたい。パンならいくらでも買いに行ける。



禁忌装置

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場面の説明や、ゾンビのような人間なりの描写が写実的で、映像的な表現に感じていたが、DVDで見かける「放送禁止」シリーズの作家であるらしい。
この本も、元から映像化することを考えて書かれたそんな本になる。

中盤まではゾンビ的な怪異等に翻弄される人間の様子が描かれるが、後半になってようやくタイトルの禁忌装置としての関連性が示される。

怪異に翻弄される人間描写から、最終的にはSF的な雰囲気に包まれていく、作者の「好み」が詰まっているようであった。


ドアノッカー

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犯人であるか怪異であるか、その不気味さはこのノック音によってのみ表現される。
女子会のような雰囲気と恐怖シーンの落差がこの話の特徴になっている。

「音」という五感の一つが恐怖に支配される嫌悪感、という切り口の表現だろうと思う。
そう考えると視覚、聴覚、嗅覚、触覚(第六感含め)としてはあるものの、
「味覚」がホラーとして存在するジャンルはまだ無いのでは?!


鼻(角川ホラー文庫)

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三遍からなる短編集作品である。
ホラーと称しているが怪異とかでなく、ブラックユーモア的な話になる。

三つ目の「鼻」という作品は、短編賞受賞作品であるらしく、内容は叙述トリックを含んでおり、一度読み終わった後に謎が残るので、読み返すなりネットで考察を探すなりが必要である。

全体的にそこまで長くないものの、三編ともかなり後味が悪い話になっており、理不尽で事態状況が理解できない時間がかなり長く続き、オチまで含めて後味の悪さに関してはかなり秀逸な作品であった。



最後に

こうしてみると一口に「ホラー」と言っても、色々な角度からの切り口があるようだった。

人間が何に恐怖を覚えるのか。違和感、集団、病気、老い。それらから最終的に「死」を連想したときに「恐怖」としているのか。
専門家でも無いし、調べれば色々な答えが出てきてさらに沼へ嵌っていく。

それにしても、わざわざこういった恐怖に何故人は好奇心を持つのだろう。
ひとつに、人は安全な所からそういうものを見たり聞いたりして、安心感を得るという話もある。

こういったものが流行っている世の中であれば、世界はまだ平和のままなのかもしれない。戦争なんかしている間はこういったことを楽しむ余裕など無いのだろうから。

常々、文化的でありたく、そういった世界を維持していて欲しい、と思うのである。


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