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【書評】「超恋愛論」-吉本隆明

 恋愛について、真面目に語る。端的に言えばこの本はそういう本だ。ただ、山のようにあるそこらの恋愛小説、エッセイみたいなものと少し違うのは、この本の著者が日本を代表する(少なくともある時代においては)思想家であり、この本は恋愛を精緻に分析する試みとなっているということであろう。

 恋愛が私たちの生活の極めて根底にあるものの一つであるというのは認めざるおえない事実だ。ただ、それを分析すると言うことは想像以上に難しい。著者も恋愛はやはり結局は「自分でするもの」であり「やってみてはじめてわかった」ことが多いのだと早々に語っている。しかしそのように述べることで、恋愛を語ることについてすべてを諦めているわけではない。著者はなんとか日本社会の現状、日本文学の精神の深奥から「恋愛とは?」という根底的な問いに向き合おうとしている。その姿勢をまず我々は評価すべきであろう。この本では恋愛の感覚、夫婦のあり方と日本社会の現状、日本文学のおける「三角関係」の描写の意味等、恋愛の諸相について細やかに、そして「詩人思想家」吉本隆明ならではの豊穣な表現力によって考察されている。

 


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