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映画レビュー『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)繰り返し観たくなるおもしろさ

時代を先取りした作品

脳を直接、ネットワークに繋ぐことができる
「電脳」という技術が発達し、
あらゆるものがネットに繋がった世界を
舞台にした物語です。

原作のマンガは’89年に
『ヤングマガジン 海賊版』に掲載され、
現在でも作画者などを変えて、
シリーズが続いています。

『攻殻機動隊』の名を世に知らしめたのは、
なんといっても、アニメ映画の
一本目として制作された本作です。

興行的に大ヒットしたわけではありませんが、
ビデオ化し、世界で発売された際に、
特に、アメリカで売れ行きがよく、
あの『マトリックス』シリーズにも
多大な影響を与えました。

その影響の度合いは、
『攻殻機動隊』がなければ、
『マトリックス』も生まれていない
といえるほどのものです。

インターネットが
一般に普及しはじめたのは、
丁度、本作が公開された’95年でした。

原作が発表された’89年の時点で、
このような世界観を
作り上げていたことが驚くべきことですね。

独自の言葉が世界観を作る

正直なところ、
私が20代の頃にはじめて本作を観た時、
本作で描かれたストーリーのことは、
よくわかりませんでした。

『マトリックス』もはじめて観た人は
よくわからない場合も
あるかもしれませんが、
その難しさとはまた違った印象です。

本作を改めて観直すと、
思っていた以上に作品独自の
専門用語が次々と出てきます。

「電脳」「義体」「ゴースト」
「光学迷彩」「ダイブ」

初心者にとっては、
これがなかなか難しいところかもしれません。

しかし、これがなくては
『攻殻機動隊』とは言えないんですね。

というのも、『攻殻機動隊』は原作も
専門用語が頻発し、その一つひとつに
注釈のついたマンガなんです。

そういった独自の言葉が、
この世界観を作り上げる
大事な要素の一つなので、
ここは変えようがありません。

ちなみに、2000年代に制作された
テレビアニメ版の『攻殻機動隊』では、
これらの言葉に原作のように解説をつけ、
わかりやすく表現していました。

それでは、その解説が一切ない
本作はつまらないのかというと、
まったくそんなことはありません。

繰り返し観たくなるおもしろさ

私は常日頃から
「映画で一番大事な要素は
 シナリオではない」
と言っています。

本作はまさに、それを代表するような
作品の一つとも言えるでしょう。

はじめて本作を観た私は、
ここに描かれたストーリーが
よくわかりませんでした。

でも、ものすごくおもしろかったのです。

何がおもしろかったかといえば、
劇中に描かれた世界観であったり、
その描き方がおもしろかったのです。

たとえ、ストーリーが難しくても
「映像がおもしろい」と思えば、
何度でも観たいと思います。

そうやって、何度も作品を
味わっているうちに、
言葉の意味がわかり、
ストーリーの全体像がわかるんですね。

その点でいえば、
劇場で公開された本作ではなく、
ビデオ化した本作が売れたのは
必然のような気がします。
(ビデオになれば、何度でも観られるので)

専門用語や世界観が把握できれば、
本作のストーリーは、
それほど入り組んだ話ではありません。

それと、20代の私が本作の世界観を
すんなり理解するのが難しかったのは、
当時の私がインターネットに
それほど親しんでいなかったからでもあります。

逆に今は「モノ」と「ネット」をつなぐ、
「IoT」なる技術も進んでいますから、
本作で描かれている描写は
すんなり理解しやすいかもしれません。

要するに、時代を先取りした
作品だったんですよね。

本作の映像や音楽の魅力は、
まだまだ語り足りない部分もあるのですが、
くどくどと説明を重ねるよりも
映像を観てもらう方が早いです。

なので、細かい演出の魅力については、
別の機会に書くことにします。

すでに30年近く前の作品ですが、
その魅力はまったく古びていません。

当時のアニメ作品としては、
画期的だったのは、
CG を使ったことです。

当時のアニメは、セル画による
アナログ撮影が主流で、
本作もアナログ撮影ですが、
一部に CG を使用しています。

CG を感じさせない自然な描写が
何よりも素晴らしいんですよね。


【作品情報】
1995年公開
監督:押井守
脚本:伊藤和典
原作:士郎正宗『攻殻機動隊』
声の出演:田中敦子
     大塚明夫
     山寺宏一
配給:松竹
上映時間:85分

【原作】

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