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映画レビュー『PERFECT BLUE』(1997)今にも壊れてしまいそうな儚い美しさ


海外にも影響を与えた
日本のアニメ映画

本作を手掛けた
今敏(こんさとし)監督のことは、
日本のアニメについて
調べていた時に知りました。

'63年、北海道生まれの方で、
'10年に46歳の若さで
亡くられています。

私が知ったのは、数年前で、
その頃には、
すでに亡くなっていました。

監督が手掛けたアニメ映画
『千年女優』('02)、
『パプリカ』(’06)

といった作品も
気になっていたのですが、

まずは1本目に手掛けた
本作を観てみました。

本作はカナダの
ファンタジア国際映画祭をはじめ、
海外の複数の映画祭で公開され、
海外でも高い評価を集めた作品です。

『インセプション』('10)や
『ブラック・スワン』('10)など、
本作に影響を受けた
と噂される作品も多く、

本作の影響力の高さが伺えます。

狂信的なファンは、
過激なアンチにもなりうる?

原作の小説はありますが、
(『パーフェクト・ブルー 完全変態』)
内容は大きく異なります。

主人公は CHAM(チャム)
というアイドルグループに
所属する霧越美麻です。

彼女は人気グループから脱退し、
女優へと転身しようとしていました。

しかし、熱狂的なファンの中には、
そのことに不満を感じる者もいます。

嫌がらせのファックスが届いたり、
ファンレターと見せかけて、
爆発物が届いたりするのです。

ある時、ファンレターの中に
「URL」なるものが
記載されたものがありました。

美麻がマネージャーに頼んで、
自宅にインターネットを
繋げてもらうと、

(当時はインターネットが
 一般に普及していない時代)

その URL は「美麻の部屋」
というホームページのものでした。

そこには、彼女の仕事や
プライベートの詳細な出来事が
日記風に綴られていました。

どうやら、そのファンは、
美麻になりきっているようです。

今にも壊れてしまいそうな
儚い美しさ

本作のすごいところは、
この時代('90年代)に、
本格的なサイコスリラーを
アニメで実現したところです。

主人公がアイドルから
女優に転身したことによって、
狂信的なファンが、
彼女に憎しみを抱きます。

次第に美麻は精神を病んでいき、
現実と虚構の区別が
つかなくなっていくのです。

この辺りの恐ろしさが
リアルに表現されており、

「芸能人というものは
 こういうものか」
と感じたりもしました。

美麻はドラマの撮影で
レイプシーンを演じたり、
週刊誌でヌード写真を公開したり

といった、アイドル時代とは
まったく異なる仕事を
受けるようになります。

そうすることで、
ファンの凶行は一層高まり、
美麻の周りでは殺人が
起こるのです。

こういった描写の恐ろしさが
本作では、リアルな作画と
焦燥感を煽る音楽で、
スリリングに表現されています。

この手のサスペンスでは、
今にも壊れてしまいそうな
うら若き女性を
どう描くかが大事です。

そういった点でも本作は、
キャラクター原案を
江口寿史が手掛けており、

(『ストップ!!ひばりくん!』
 などで有名なマンガ家)

女性キャラクターの美しさも
申し分のない
出来栄えになっています。

ドラマ撮影という設定では
あるものの、レイプシーン、
ヌードもあるため、

海外では18禁、
国内ではR15指定の作品です。

はじめて観る方には、
日本にはこんなアニメもあったのか、
と驚愕するに違いありません。

決して、実写に引けを取らない、
いや、ある意味では実写を超えた
サイコスリラーです。


【作品情報】
1997年公開(日本公開1998年)
監督:今敏
脚本:村井さだゆき
原作:竹内義和
   『パーフェクト・ブルー 完全変態』
声の出演:岩男潤子
     松本梨香
     辻親八
配給:レックスエンタテインメント
上映時間:81分

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※トップ画像は
 公式サイトよりお借りしました。

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