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坂本龍一 名曲ベスト10(私選)

※3000字以上の記事です。
 お時間のある時に、
 お付き合いいただけると嬉しいです。

この手の記事を書く時は、冒頭にアーティストの概要を書くことにしています。ですが、坂本龍一ほど、そのキャリアを短い文でまとめるのが、難しいアーティストもそうそういないでしょうね。

そもそもこれまでにやってきた音楽のジャンルが幅広過ぎるのです。

キャリアのはじめの頃に組んだバンド、YMO では「テクノポップ」を携えて世界を駆け巡りました。

かと思えば、単独で映画『戦場のメリークリスマス』に出演し、映画音楽まで手掛けます。

その後、映画音楽では、’87年に『ラストエンペラー』で、グラミー賞、ゴールデングローブ賞、アカデミー作曲賞を受賞するという偉業も成し遂げました。

YMO 散開後も、最先端のテクノやヒップホップを自身のソロ作品に取り入れるのと同時に、世界各地の民族音楽も取り入れ、ワールドミュージック・ブームのはしりとなります。

しかし、そういうブームの先頭みたいなものになるのが嫌いなお方なので、そこからもあっさり離れるんですね(もちろん、その後の作曲活動においても、あらゆる世界の音楽を貪欲に取り入れる)。

今度はお笑いコンビのダウンタウンを「ゲイシャガールズ」として、CD デビューさせたり、女優の中谷美紀をプロデュースしたり、ソロ作品においても「ポップス」を作ることに執念を燃やします。

ソロ作品でポップスをやり尽くすと、今度は自身のキャリアの出発点であるクラシックに原点回帰し、『energy flow』というインスト曲をミリオンセラーに到達させました。

これでも、だいぶ端折りましたが、とにかくそのキャリアを辿ると、節操のなさに驚かされるばかりです。

そんな坂本が2000年頃に『情熱大陸』に出演した際のインタビューが、今でも印象に残っています。

その中で、坂本は「コアはないのか」と叱られることがあると、笑いながら語っていました。実際、あまりにもいろんなジャンルを横断的に取り入れるため、彼の音源は、CD ショップでもどの棚に置いていいかわからないものが多いです。

どうして、そんなにいろんな音楽に挑戦するのか、番組の中でご本人が語ったところによると、それは「創作物というのは、95%以上が何かの模倣だから」だそうです。

どんなにオリジナリティーがあるものでも、オリジナル性は5%にも満たないくらいではないか、というのが坂本の見解でした。そして、残念なことに、一般的には、伝統を踏襲したものの方が評価される傾向が強いというのです。

(※はじめて投稿した時は「1%」と書きましたが、先日、映像を確認したところ「5%」とおっしゃっていました)

しかし、坂本自身は、オリジナルの5%の部分に興味があるので、次々にいろんな音楽に挑戦するのですね。全然違うジャンルをやってみて、それでも残った「自分らしさ」のようなものこそが、自身のオリジナリティーということなんでしょう。

そんな坂本でしたが、2014年にガンを発病し、一時は活動休止も余儀なくされました。2015年以降は闘病を続けながら、音楽活動を再開しましたが、2020年にガンが転移し、今年に入ってからはステージ4であることも明かされています。

そんな中ですが、今年の12月にはライブ配信が予定されています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/953e7f6809673b653c0706d3cc7fb00ce7d8a137

本人曰く「演奏を見ていただくのは、これが最後になるかもしれない」とのことです。

私自身も長年、彼を追ってきたファンの一人として、書こうと思っても書き尽くせない思いがたくさんあります。
ひとまず、ここに私が特に好きな坂本龍一の曲を10曲挙げました。
※映画音楽、CM音楽などを除いたソロ作品から選曲
 (その手の曲にも名曲がたくさんある)

10. NEO GEO(’87)

収録アルバム:『NEO GEO』
翻訳・作曲:坂本龍一、ビル・ラズウェル
ロック、沖縄民謡、ケチャ(バリ島の民族音楽)をミックスした楽曲。
ブーツィー・コリンズがベースで参加している。
ワールドミュージックに接近した頃の坂本の代表的な楽曲でもある。

9. Before Long(’96)

収録アルバム:『1996』
原曲は『NEO GEO』(’87)に収録された前奏曲で、ピアノのみの演奏だった。こちらのセルフカバーでは、ヴァイオリンの演奏が加わり、原曲よりも演奏時間も長くなっている。
最近では、フランスの自動車「プジョー」の CM 曲にも起用された。

8. FREE TRADING

収録アルバム:『NEO GEO』
作曲:野見祐二
原曲は野見祐二によるユニット、おしゃれテレビの『アジアの恋』という曲。「自分よりも坂本っぽい」と気に入り、カバー曲を手掛けた。
コード進行、リズム、サンプリングなどの音の作り方が、この頃の坂本らしい感じ。

7. Sweet Revenge(’94)

収録アルバム:『Sweet Revenge』
ベルナルド・ベルトルッチ監督の映画『リトル・ブッダ』のボツ曲。
エンディング用として2番目に書かれた曲で、1曲目の時は「もっと悲しい曲にしろ」と言われ、この曲を聴かせると、「これでは悲し過ぎる」と言われ、坂本は激怒したという。
そんなベルトルッチ監督への復讐の思いも込めて、タイトルには「リベンジ」の文字が。

6. 美貌の青空(’95)

収録アルバム:『SMOOCHY』
作詞:売野雅勇
ポップスにこだわって作られた『SMOOCHY』より。
このアルバムには、「メロディーが覚えやすければ、みんな歌うだろう」という分析のもと、坂本自身によるボーカル曲が多く収められている。
ヒップホップのビートに、悲し気なメロディー、コード進行を絡めた、不思議な感じの楽曲。海外のアーティストにもカバーされている。

5. 愛してる、愛してない(’95)

収録アルバム:『SMOOCHY』
作詞:大貫妙子
女優の中谷美紀がはじめて坂本の作品に携わった曲で、中谷と坂本のデュエットになっている。ハウスのビートの上に、シンプルなメロディーの繰り返しで高揚感を出している。
バックの音は非常に多層的で、打ち込みの音だけでなく、ピアノ、ストリングス、トランペットも重ねられている。

4. Poesia(’95)

収録アルバム:『SMOOCHY』
レゲエのリズムをベースに、ホイッスルとシンセサイザーを主体にしたインスト。のどかなメロディーに牧歌的な印象である。途中から入る女性コーラスやギターソロ(佐橋佳幸)も聴きどころ。

3. ゴリラがバナナをくれる日(’96)

収録アルバム:『1996』
原曲は’78年に書き下ろされたパルコの CM 曲。以前から坂本のライブでは定番の曲でもあった。1分40秒という短い曲だが、強弱の変化が激しい曲になっている。

2. Ngo(’04)

収録シングル:『undercooled』
坂本自身も出演したスポーツシューズ、ニューバランスの CM 曲として書き下ろされた曲。坂本が若い頃から多大な影響を受けたボサノヴァになっている。サンプリングなどの電子音も使いつつ、本場のボサノヴァにも負けない「らしさ」が溢れている。

1. the Land Song(’04)

収録アルバム:『CHASM』
六本木ヒルズのテーマ曲。篳篥(ひちりき)、アコーディオン、ホイッスルといった民族音楽的要素と電子音が見事に融合した傑作である。全体的に音が伸びやかで広い空間を連想させる。

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