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映画レビュー『裏切りのサーカス』(2011)スパイもつらいよ


地味にカッコいい映画

本作はイギリス、フランス、ドイツ
合作のスパイ映画です。

「スパイ映画」と言っても、
『ミッション・インポッシブル』
のような派手なものを
想像してはいけません。

アクションシーンも
ほとんどなく、
頭脳戦が繰り広げられる
地味なタイプの作品です。

おまけに登場人物も多く、
話も複雑なんですよね。

でも、これがおもしろいんです。

1回観ただけで、
すべてが把握できるタイプの
作品ではないですね。

繰り返しの鑑賞に堪えうる
渋くてカッコいい映画でした。

冷戦時代のスパイの話

原作は'74年にイギリスの小説家、
ジョン・ル・カレが発表した

『ティンカー、スパイ、
 ソルジャー、スパイ』
という作品です。
(映画版の原題も同タイトル)

同作品は、初老のスパイ、
ジョージ・スマイリーを
主人公にしたシリーズの1作で、

'70年代にもイギリスで
テレビドラマ化されています。

原作のモチーフとなったのは、
'63年にイギリスで起きた
「キム・フィルビー事件」です。

キム・フィルビーは、
イギリス秘密情報部(MI6)の
職員でしたが、

彼は、それと同時に、
ソ連情報機関(NKVD、KGB)の
協力者でもある

いわゆる「二重スパイ」でした。
(この事実の発覚後、
 彼はソ連に亡命)

映画版では、
具体的な年代の設定は
明かされていませんが、

明らかに東西冷戦時代を
意識した舞台設定になっています。

二重スパイを暴き出せ

映画版で主人公の
ジョン・スマイリーを演じたのは、
ゲイリー・オールドマンです。

ゲイリー・オールドマン
Wikipedia より引用)

古い映画ファンの方には、
『レオン』の敵役としても、
印象に残っているのでは
ないでしょうか。

『レオン』では
汚職刑事を演じましたが、
あれほど男前の悪役は、
見たことがありません。

私自身は本作で
久々にその姿を見ましたが、

歳を重ねても、
渋くてカッコいい役者さんだなぁ
と改めて思いましたね。

主人公のジョン・スマイリーが
所属するのは、
通称「サーカス」と言われる
イギリス秘密情報部です。

サーカスはソ連情報部との
熾烈な情報戦を展開していましたが、

ある時、サーカスの長官が、
組織の内部にソ連情報部と
つながりを持っている
裏切り者がいることを確信します。

長官は裏切り者を突き止めるべく、
部下を送り込むのですが、
作戦は失敗に終わり、

長官とその右腕であった
スマイリーは組織を
引退させられてしまうのでした。

長官は退職後、ほどなくして死去し、

長官と同じく内部に
「二重スパイ」がいることを
確信していた外務次官の命を受けた

スマイリーは、
「二重スパイ(もぐら)」の
捜索に乗り出します。

ここまでのストーリーを書くと、
それほど複雑な話には
感じないかもしれませんが、

登場人物が多いのと、
時間軸が前後に行ったり来たりする
内容の割には、

あまり親切な説明もないので、
集中力を要するものになっています。

しかし、映像や音楽は
非常に渋くてカッコよく、
何度もの鑑賞に堪えうる
作品であることは保証できます。

わかりやすくおもしろい作品も、
もちろんいいんですが、

たまには、こういった
歯応えのあるエンタメを
味わうのも贅沢な時間に
感じられますよ。


【作品情報】
2011年公開(日本公開2012年)
監督:トーマス・アルフレッドソン
脚本:ブリジット・オコナー
   ピーター・ストローハン   
原作:『ティンカー、テイラー、
    ソルジャー、スパイ』
   ジョン・ル・カレ
出演:ゲイリー・オールドマン
   コリン・ファ―ス
   トム・ハーディ
配給:スタジオ・カナルUK
   スタジオ・カナル
   ギャガ
上映時間:128分

【原作】

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