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ノック4本目:戦略的思考100本ノック ~白雪姫の絵本づくり~

<プログラム概要>
マーケティング戦略の立案手法を一連の物語形式で学ぶ研修プログラム


「戦略的思考100本ノック」は、アルーの研修プログラムの中でミドルクラスの定番という区分に入るものです。「ロジカルシンキング100本ノック」や「プロフェッショナルスタンス100本ノック」のように、アルーを代表するメジャーではなく、少し渋い位置づけです。
このプログラムはアルーの開発の歴史の中で、個人的には重要な意味合いがあると考えており、記事に取り上げさせていただくことにしました。

<すごい開発バイブル まとめて読まれる際はこちら↓>

すごい開発バイブル


①大手金融機関の新入社員向けの研修を想定

開発のきっかけとなったのは、2005年頃、当時のパートナー企業である大手研修会社様から、大手金融機関の新入社員向けのマーケティング研修がないか?という相談を受けたことでした。

マーケティングといってもMBA的な専門性の高いものではなく、金融機関の新入社員がビジネスや企業戦略について全体像を掴むことができ、顧客企業を分析する視点を身につけるための基礎的かつ網羅的な内容を学べるプログラムにしてほしいというオーダーでした。

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戦略的思考100本ノックは、100本ノックシリーズの他の研修プログラムと同様にケーススタディを通じて学びを深めていく構成です。ケーススタディの主人公が銀行員という設定がされているのは、こうした開発背景があったからでした。若手銀行員が顧客企業のビジネスを分析して提言するという構成になっています。

しかし上記の相談を受けた際には、プログラムを用意することができず、受注をすることができませんでした。この経緯を通じて、実際に企業のニーズがあることがわかったため、本プログラムの開発意思決定いたしました。

戦略的思考100本ノックの開発が行われたのは2006年8月頃です。プロフェッショナルスタンス100本ノックと同タイミングで開発がされました。

いざ開発を意思決定し進めるにあたり、一つ大きな課題があることに気が付きました。それは私自身がマーケティングというものをきちんと理解していないということでした。


②ラーニングポイントの検討

私は戦略系コンサルティング会社に新卒で入社をし勤務をいたしましたが、在籍時に私が担当した業務は、データ収集・インタビュー等のリサーチや、分析作業が中心でした。実際に企業レベルでの戦略、マーケティングというものを深く考えた経験を持っておりませんでした。

「これは一度きちんとした内容調査をする必要があるだろう」、そう考えた私はラーニングポイントの調査から着手しました。

現在では研修プログラム開発においては、「ラーニングポイントの調査」を最初に行います。当時は開発の段取りが固まっておらず、試行錯誤の繰り返しでした。
本プログラム開発が、ラーニングポイントの調査を開発プロジェクトの初期に実施することの重要性に気づくことができたきっかけとなりました。

マーケティングというテーマは世の中で多くの言説が既に語られているテーマです。ラーニングポイントを調査するためには書籍を購入するのが一番だと考えました。
私はマーケティングに関する書籍を「10冊程度」購入して、短期間で集中的にインプットを行いました。この「短期集中」というのがポイントでした。

私は研修開発者であって研究者ではありません。研修は最終的に受講者の記憶に残ることが重要です。その観点を持てば時間を掛けて調べるよりも、まずは短期間でポイントを掴み、内容の理解よりも伝え方に時間を掛けるほうが適切だと考えています。

同時に競合調査を実施しました。世の中を調べてみるとマーケティングというテーマは、MBA等の理論・学術的なもの、広告宣伝系企業が提供する実践的なものが中心でした。また有名企業の事例を分析するような研修が多くありました。

「銀行の新入社員が顧客企業を俯瞰的に分析する」という想定初期顧客のニーズを満たすようなものを見つけることはできませんでした。私はこの研修プログラムが、世の中の既存のマーケティング研修との明確な違いをもって創ることができると確信しました。


③ラーニングポイントの絞込み。「絵本作り」を意識

銀行の新入社員向けの研修であるためラーニングポイントの絞込みは特に留意する必要がありました。マーケティング戦略というものは複雑に語ろうとすればいくらでも可能です。私が目指した方向は複雑で実践的になものではなく初学者向けのものでした。

ラーニングポイントを絞り込むという作業は、子ども向けの絵本を作るのと近しい作業だと思います。

例えば有名な「白雪姫」という物語は、ディズニーで映画化もされています。映画版は約2時間あり様々なエピソードが語られる内容です。ですが私たちが人生の中で最初に白雪姫に触れるのは映画ではなく子どもの頃に絵本という形で読むことが多いかと思います。

白雪姫の子ども向け絵本はせいぜい10数ページ程であり、白雪姫という物語の中で「重要な場面をだけ」を上手く切り取って、細かいエピソードを割愛しながらも全体のストーリーが繋がるように書かれています。こうした選別された物語の骨子を子どもの頃に学び、大人に至るまで記憶に残しているのです。

戦略的思考では、①市場環境分析に基づく意思決定をする②競争戦略を立案する③戦略のPDCAサイクルを回す、という3つのポイントに骨子を絞り込みました。これはマーケティング・戦略を語る際の最も骨子となる部分だと考えたためです。

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④一貫したストーリー型演習開発

ラーニングポイントが絞れた後は、実際の演習作りです。
戦略的思考100本ノック開発においては、ストーリーの繋がりを意識しました。マーケティング用語は初学者にとっては難しいものが多いため「物語」の力を借りて理解しやすいものにしようと考えました。

本プログラムよりも前に開発をしていた「問題解決思考100本ノック」では、複数の演習が一貫したストーリーで語られるという構成にしていました。それが受講生の方、お客様より好評でしたので、今回の開発でも取り入れることにしました。

そこで生まれたのが「ケーススタディ『キャリオ乳業』の新商品開発」でした。

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物語形式のプログラムは、記憶に残りやすいという効果がある一方で、複数の演習(8問~10問程度)間での整合性を取らなければいけないという、企画検討上は難易度が高いものです。
実際の開発においては、共同開発を進めたパートナー企業様が、かつて「ヨーグルト業界」について分析をされていたことがあり、設定をリアルに練り込んで整合性の撮れたケーススタディを創ることができました。


こうして完成した戦略的思考100本ノックは、当初の想定どおり、2007年8月に大手金融機関の新入社員フォロー研修に採用されることになりました。

また、この研修プログラムは私自身が講師として登壇をすることが多くありました。
自分自身で登壇をしてみると、研修を行っていて「盛り上がるところ」がわかってきます。ノック1本目外部環境分析とノック5本目ポジショニングの演習は特に盛り上がります。そこでタイムラインを変更し、この盛り上がる演習に受講者を惹きつける工夫を加えるなどの改善を行っていきました。

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2010年になり、戦略的思考100本ノックを大きく改定し「マーケティングの基本100本ノック」というタイトルでリメイクしたプログラムが、大手食品メーカー様の案件で見事に受注をすることができました。
この案件では、当時の商品開発部のHさんの努力により、教材が完成した際のお客様への報告だけで、納品前にも関わらず追加受注が決まるという素晴らしいものでした。

(Hさんは2012年末まで当社に在籍。その後上場スタートアップにて大活躍をされていらっしゃいます!Hさん、ありがとうございました!)

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戦略的思考100本ノックは、個人的にとても思い入れのあるプログラムです。私自身がビジネスの基本フレームワークを学び、未来志向で考えるきっかけを得たプログラムだったと考えています。


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戦略的思考100本ノック 開発における教訓


DNA16:初期顧客を想定してテーマ選定をする
大手金融機関の新入社員向け研修として具体的にニーズがあることを把握した上でテーマを選定した


DNA17:テーマの内容は、短期集中的にインプットして全体像を理解する
関係する書籍を10冊程度購入し、短期集中的に内容を理解した
時間を掛けすぎないことは重要


DNA18:物語を使い概念全体像を理解させる
ラーニングポイントで取り上げる概念間のつながりを理解しやすくするために一連の物語形式の演習を採用した


DNA19:ラーニングポイントは重要な点のみに絞り込む
受講者の記憶に残すためには、ラーニングポイントの絞込みが重要
子ども向けの絵本のようにエピソードを絞り込む


DNA20:盛り上がる演習を特定し、盛り上げるための仕掛けを作る
実際に納品をして、盛り上がる演習を特定した
タイムラインを変更して盛り上がる演習に時間を掛けられるようにする

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本noteでは別途アルーの創業からの歴史をまとめた「スタートアップ企業としての営業組織づくりノウハウ」を公開しています。ぜひご覧ください。

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