高円寺を詠う【短歌集】
爛漫に輝くネオンと呼応して緑と赤の往来を行く
大根のように白い肌だと言い放ちぺちんと手打つ八百屋の大将
南口ロータリーのあちら側、結界あるから入っていけない
歯医者にてすれ違いざま取れた歯を持参する人見送り6時
ノスタルジイは有料だから今日もまた列に並んで待つ食堂に
梅酢ことバイスといいます注文の正の字をひく焼き鳥やにて
行列のできるラーメン屋の行列は私以外の人で出来てる
都市伝説みたいに会えない人を探してる惹かれて進む赤い靴の方
雪積もる駅前広場の白さだけ本物だからカメラを向けた
モンブランの季節は過ぎた「また今度」約束信じて待つおともだち
東京のおひさま浴びて縮みゆく梅のまるみは我が子にも似て
悲しいと言ってはいけないらしいから回転寿司に駆け込んで泣く
カルダモンクミンホアジャオスパイスの名を暗記して待つカレー屋で
自転車のサドルを濡らす夕立がこっそり隠す金網に猫
10月のまだ蚊の多い公園にカワセミ止まる虚無の看板
東京とかいう奇跡の街に移り住み居酒屋ケーキ屋近くて笑う
「ビリヤニの米のパラパラ感が好き」誰かのセリフとスプーンの音
剥き出しの電線だけが梅雨空のパンタグラフに命を与える
一度はサポートされてみたい人生