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【何のため?】 私がキャッチコピーづくりのワークショップを続ける理由

コピーライターとしての職能、ディレクターとしての経験を活かして、小学校5・6年生から、中学、高校、大学生を相手に教育機関やイベントでワークショップを行っています。大人向けでは企業研修やセミナーも。誰にでもわかるよう同じメソッドで講義をしてキャッチコピーをひとり数案ずつ提出してもらいます。その場ですぐに講評・表彰する2時間完結型のワークショップです。

北海道・清里中学校にて。生徒たちはリラックスして思い思いにコピー案を発想する。

どうして全国で「コピーをつくってみよう」を実践しているのか?

【教育現場】 子どもたちにとってコピーづくりに挑むことのメリット

(1)考える視野・気付く視点が広がる

コピーづくりは「おもしろい言葉のひらめきコンテスト」ではありません。「いろいろな角度から物事をみつめる」「自己・他者・社会の関係性を見つめ直す」「常識を疑う」「ひたすら自問自答する」「テーマの本質をつかまえる」など思考のトレーニングになります。

(2)自己肯定感を高める

コピーづくりは案外誰でもできるものです。意外な部分で褒められたり「人に伝わる!」「できる!」という経験を得ることで、自分でも気づかなかったスキルやセンスに気付く方が多くいます。

(3)日本語の豊かさを知る

コピーにはいくつかの型はあるものの、言葉の表現は自由。比喩、体言止め、擬人法、パロディという技法を駆使することもできれば、「そのまま言う」「短く言う」など真っ直ぐな表現が効くこともあります。千差万別の日本語を楽しんでください。

(4)進路選択肢を広げる

コピーライターを目指す人が増えてくれたら最高ですがそれが目的ではありません。日本の義務教育では軽視されてきた「デザイン」という分野。その派生である「クリエイティブ」「ディレクション」「マーケティング」「マネージメント」「商品開発」「広告・広報」というジャンルに早期に興味を持ってもらいたいと思っています。「AIとの共生」でますます重要な職種・業種になります。

(5)テーマへの理解を深める

これは子どもの直接メリットではないのですが、キャッチコピーを考える課題テーマを企業・組織で提供してもらう場合、子どもたちに深く考えてもらうことで「広報」「理解促進」の役割を果たすこともできます。例えばBtoB企業が主体者になり「物流の重要性を伝えるキャッチコピーを考えよう」をテーマにすれば子どもたちに業界や会社について、教科書よりもはるかに広く深く知ってもらう体験ができます。

優秀者への表彰。愛知淑徳大学にて(写真:古城友也さん)

【セミナー・研修】 オトナがキャッチコピーを考えるメリット

(1)仲間へのリスペクト

組織の意識創成、モチベーションUPに役立ちます。他人のコピーづくりのプロセス、考え、アウトプットに触れることで「そんな見方もあるんだ」「あの人そんなとこ考えてたんだ」と他者への敬意や新発見が実感できます。

(2)チームビルディング

コピーでは例えば商品やサービスのコピーといったマーケティング的なコトバをつくることもできます。またスローガン、タグライン、ビジョンやパーパスなど経営に寄与するワードも発案可能。ひとつのコトバを考えるプロセスを体験することで、チームで作っていく気持ちの共有、合意形成に役立ちます。

(3)企画力の向上

フライヤー、ポスター、WEB、新聞、広報紙などあらゆる広告企画は、コピー1本を考えることで道がひらけます。的を射たキャッチコピーは企画の柱=コンセプトになり、一本筋の通った企画案、ビジュアル案へとつなぐことができます。コピー発案のワークショップは企画に悩む人にもおすすめのメソッドです。

(4)価値の再発見

いかに多様な視点で物事をみつめることができるか。コピー発案のアプローチはそこに思考時間を割きます。コピーの課題テーマを自分の関わる事業に設定した場合、思考が再整理され、これまで考えもしなかったような価値や提案プランが生み出されます。商品でも地域でも人事でも、組織内外のあらゆるテーマに役立ちます。

私立大学協会でのセミナー。各大学の新任者研修の位置づけで開催。
こうした企業や組織、自治体のセミナー依頼は年間を通してある。
キャッチコピーづくりの対象は最年少で小学校5年生。
しっかりと作り方、考え方を理解した上でクリエイティブ作業に入るので
十人十色のアウトプットが生まれる。

キャッチコピーづくりは2つの手順で発案していきます。

(1)何を言うか:いろんな視点で物事を見る
(2)どう言うか:効果的な言い回しで表現する
講義では事例を交えながら、具体的に「やり方」を伝授しています。

ワークショップごとに課題テーマは変えてます。

(1)その場限りのオリジナル課題
学校や地域で抱える課題の解決コピーや
宣伝したい事柄のコピーを発案する。

(2)公募ネタ
企業や自治体が公募しているテーマでコピーを発案。
審査員にコピーライターがいるなど
きちんとよいコピーが選出される仕組みであることが重要。
コピーではなく川柳や標語がテーマだったり、
選定基準が曖昧な公募は選びません。

(3)社会ネタ・時事ネタ
例えば「コロナ禍」「就活」「消費拡大」など社会情勢を見ながら、
提唱しやすいテーマでコピーを発案する。

以上、私の経験から考えやすいテーマにアレンジして課題を設定。
一見難しい印象のテーマでも、出来上がるコピー案は
柔らかい表現になり、楽しい実践体験を提供できます。

SMF(札幌メディアアートフォーラム)主催「コトバワークショップ2023」にて。
6名のコピーライターが講師を務める2010年から毎年開催中の大学生イベント。
卒業後にコピーライター、デザイナーといったクリエイターになる人も多数いる。
(写真:奥村菜依加さん)

地域 ✕ 子ども = クリエイティブ

最終的にビジョンは「地域をクリエイティブに」という目標です。ここでいう「クリエイティブ」とは「まだない表現を作り出すこと」「価値を再発見すること」「見方を変えて再提案すること」くらいに定義しておきます。
地方都市と大都市圏との差別化ポイントはクリエイティブの力だと思います。地域や商品のブランディングはもちろん重要。デザインやコトバの表現で「知ってもらう」「来てもらう」「買ってもらう」「好きになってもらう」という目的に近づけるはずです。

「地元肯定感」を醸成する。

さらに地元にいる子どもたちが「地域を深く知る」「誇りに思える」「戻ってきたくなる」そんな機運をつくるのもクリエイティブがお手伝いできること。僕はこれを「地元肯定感」と呼んでいます。そのまちにクリエイターが普通にいて、いきいきと地元の案件を回していれば、子どもたちもその様子を近くに感じて「楽しそう」と思えるはず。クリエイターは特別な階級の人たちではありません。デザイナーもカメラマンもコピーライターもライターもエンジニアも建築家もユーチューバーも「ものづくり」や「伝えること」で地域経済に貢献するビジネスパーソンです。そういったクリエイティブクラスの人たちが脈々と増えていくことが、その地域をおもしろくするのだと私は信じてやみません。今、おもしろいと言われるまちには、おもしろい人たちが必ずいますよね。
(了)

【お問い合わせ】

ワークショップなどの開催に興味をお持ちの方は、
気軽にお問い合わせください。
mail  →  ike@improvide.co.jp





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