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バンド 【完結】

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2022年3月の記事一覧

【小説】 グラウンドの卒業式

 地震の影響で卒業式は簡易的に行われた。段取り、合唱、練習してきたものは全て、おじゃん。…

井川文文
2年前
5

【小説】 もてあます

 夜。雨が降ってきた。天気によって心の色が変わるみたいに、ヒロナはどことなくメランコリッ…

井川文文
2年前
3

【小説】 ブルー

「いつからピアノ弾いてたの?」 「3歳くらいだと思う。覚えてない。そっちは?」 「私は高校…

井川文文
2年前
2

【小説】 かくしん。

 森口リオンが駅のホームに立っていたのは偶然なのだろか。  彼は白いイヤホンをつけながら…

井川文文
2年前
3

【小説】 春はどこからやってくる。

 会場を出る頃には、すっかり空が茜色に染まっていた。一日中、会場の中で照明を浴びていると…

井川文文
2年前
12

【小説】 滞りなく

 音楽祭は滞りなく終わった。いや、本当は滞っていたのかもしれない。森口リオンのエキシビジ…

井川文文
2年前
4

【小説】 リオンのピアノ2

 彼がピアノをポーンと鳴らす。音が波紋となってホールを満たした。  胸がクーンとする。  たぶん、みんな同じことを思ったんじゃないかな。うまく言えないんだけど、その一音を聴いただけで、とにかくクーンとしたんだ。  前の曲は、軽やかなステップを踏むようなカラフルな演奏だったが、今度はなめらかで優しく人の心に寄り添うように曲がはじまった。  フランツ・リストの「愛の夢」第3番。  曲名を知らなくても、誰もが聴いたことがある有名なメロディだ。冒頭からしっとりと美しい旋律が始まる。

【小説】 リオンのピアノ

 森口リオンは、鍵盤に指を置いてから、静寂を作った。  ステージ上にはピアノと、青年が一…

井川文文
2年前
10

【小説】 チクリ、チクリ。

 アキちゃんは、ぽけっとしていた。  現実の世界から遠く離れたところへ行っちゃったみたい…

井川文文
2年前
6

【小説】 海と涙。

 楽屋に戻ると、そこに森口リオンが立っていた。  一年生のピアニスト。ヒロナの気になる人…

井川文文
2年前
4

【小説】 ポロポロとニヤニヤ。

 ライブは大成功だった。  学校が一丸となって祝福してくれてるみたいな拍手が起こり、アキ…

井川文文
2年前
10

【小説】 ゆめみごこち。

 アキとマキコの声が混ざる。柔らかい和音になる。胸の底をくすぐられるみたいな、爽やかな音…

井川文文
2年前
2

【小説】 みちときち

 未知より既知、だから認知だ。  ヒロナは最後の音楽祭で確信した。人は知らないモノには興…

井川文文
2年前
6

【小説】 ヘンテコな気持ち。

 始まったら、終わる。  こんな当たり前のことなのに、なんかヘンな感じがする。これは、寂しさに似てる感情なのか、それとも恐怖なのか。儚さとも違うし、感傷的とも違う。とにかくヘンな感じ。だって、どこかに爽快感もあるんだから。終了間近の授業とも似てる気がする。そんな、ヘンテコな、気持ち。  私たちのバンド「HIRON A‘S」の音楽祭ライブが始まった。  制限時間の中で披露できるのは、たったの二曲。途中のMCも含めて全部で15分。そう、15分しかない。高校に入学してから始めたバ