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くだらない超ショートショート

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【短編小説】【特集】 自殺依存症 --彼らはなぜ「死」に依存するのか--

【短編小説】【特集】 自殺依存症 --彼らはなぜ「死」に依存するのか--

【特集】自殺依存症 --彼らはなぜ「死」に依存するのか--

「なんでって、それは気持ちが良いからよ」

彼女は我々の質問に気だるげに回答した。

「恐怖みたいなものはないのですか?私だったら、躊躇してしまうような気がするけれど」

「もう、何回もやってるから、あまりそういうのはないのかな。多分」

彼女は首を傾げ、眉間に皺を寄せながら、答えた。

「ああ、でもただ、別の意味での恐怖というものはあ

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ある人は死んだ【超ショートショート】

ある人は死んだ【超ショートショート】

ある人は死んだ。人権を取り戻す運動の中で、その重要性を訴えるために、自らに火を付け、業火の中で焼死した。

ある人は死んだ。自分の子を殺した、ある商品の危険性を訴えるため、その商品を使用し、命を落とした。

ある人は死んだ。不幸な事故に合い、突然この世を去ってしまった恋人を追って、大量の睡眠薬を飲んで中毒死した。

ある人は死んだ。自らが愛したアイドルが急性アルコール中毒により死に、悲しみに打ちひ

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メビウスの輪(仮)

メビウスの輪(仮)

外を見ていた。
雨が降ってきたので私は窓を閉める。刹那にスライドする窓の隙間から冷たい冷気が部屋に入り込んできた。
コーヒーを飲んだ。

強くなっていく雨が、心地の良い音楽を奏でている。
ああ、全く何も思い浮かばない。締め切りは明日に迫っている。

始まりは三ヶ月前のことである。私が駅から家への帰り道を歩いていると、後ろから声をかけられた。
「そこのお方」
私が振り向くと、そこにはシルクハットに燕

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世代就活

世代就活

就活を初めてから、もう半月がたった。
これまで、多くの企業説明会に参加し、将来のことを考え奔走してきた。
そして、今日3月16日は第一志望の会社の一次面接、僕は現在、面接の待合室のソファに腰掛けている。
心の中で、何度も考えてきた言葉を反芻する。大丈夫だと言い聞かせ、心を落ち着かせる。
ノックの音がなった。
どうやら僕の番が来たようだ。採用担当のお姉さんに面接室の前の廊下に案内される。
「ご自分の

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中学生、高校生の時に書いたショートショート―走馬燈、流星群、未来的金の斧銀の斧―

中学生、高校生の時に書いたショートショート―走馬燈、流星群、未来的金の斧銀の斧―

走馬灯と流星群は中学生の時書いた。
走馬燈は、ありがち。面白くない。流星群はどちらかというとなぞなぞ。あまりうまくはないし、意図がわかりづらい。
未来的金の斧銀の斧は高校生の時書いた。
まあ、意味がわかるかはその人次第(化学的知識が必要かもしれない、細かいことには突っ込むな)

走馬燈チャイムが鳴ったので玄関のドアを開けるとスーツ姿の男がいた。
「こんにちは。例のものを届けにきました」
男はそう言

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インビジブルマン

インビジブルマン

彼には何もなかったのだ、故に彼を認知するものはなかった。
名前はあった、しかし、誰もが忘れてしまった。
彼には趣味がなかった。そのため、趣味を共有する友はなかった。彼には今までは職があった。営業の職である。しかし、大した営業成績を残せず、その職も不況の波の中で消えていった。
彼には今や何もない。名も、名乗らねば意味をなさない。
職がなくなってから数ヶ月後に追い出されたアパートの名はなつみ荘といった

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