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小説~Center of the X~


あの日は天気も自分も憂鬱で
とうてい外になんて行きたい日じゃ無かった。
学校なんて無かったら絶対に外に出ないと
そんなことを思っていた。
______ゆうた

あの日は天気と反して飛び跳ねたいくらい幸せで
はやく外に出たくて仕方が無かった。
学校に行けば彼に会える、
そんなことを思っていた
______ゆき

あの日の天気は雨で自分はいつも通りの体調で、
急いで外に出ないと間に合わななかった。
学校で自分の好きなことができると
そんなことを思っていた
_______かれん

あの日の天気なんて覚えてないし自分の体調も知らない
いつもどおり外に出て体を動かさなければいけなかった。
学校は自分の好きなことをする場所だと。
そんなことを思っていた。
________しゅう

   2161年 8月2日AM8:15 場所 1年B組

「しゅう!おっはよう!」

 教室中に声を響かせたのは綺終 雪[ きしゅう ゆき](15)だ。
ぱっちりとした目が特徴の彼女はいつも髪の毛を高いところで束ねており、元気という単語が似合う少女である。

「ちっ、朝からうるせーよ」

そう返事をしたのは自排 終[じはい しゅう](15)だ。
寝癖が付いたまま顔を突っ伏して寝ていたところを雪に邪魔されて不機嫌になっている。バレー部に所属し、いわゆる天才と言われている彼は学校から期待されており、特待生である。

『ねえ、昨日の試合のあの技どうっやったの!?普通のレシーブと何の変わりも無く見えたけど!』
『あん?あぁ、ジャンプフローターサーブって言うやつ。威力上がるんだよ、あれ。成功率は低いけど、決まれば自分のテンションを最高のコンディションまで持って行けるサーブ。あれ完成するまで時間かかったんだよ、どこまで飛…』
 バレーの話になると止まらない終の話を、うれしそうに聞く雪は、彼に恋をしている。天才と呼ばれる人には何かしらの苦労を抱えていると、アニメや漫画で培ってきた考え方は変えられず、今もなお彼女の思考にへばりついたままである。その考えがよくても悪くても、彼女は天才に恋をしてしまう体質であり、その恋愛とはとうていよいモノでは無い。
「席に着け!」
 終の話が最後まで終わる前に、担任の先生が入ってきて雪は渋々席に着く。この事件が起こったのは、雪が先生に出席をとられた、ほんの数秒の出来事であった。

雪、先生を含むクラスの半分15人が暗闇に包まれた。





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