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組織が継続的に情報を発信するために──IDx、2020年の振り返り

社会の状況が一変して、お仕事や日常生活にもいろいろな変化があった2020年。「こういうときだからこそ、デザインの可能性を発信しよう!」とスタートしたIDLのwebマガジン『IDx』でしたが、成果が上がる一方、組織としての情報発信を継続するうえで課題も見えてきました。平岡白井のふたりの共同編集長で振り返ってみました。

社会が変容するときこそ、デザインの力が必要になる

白井:パンデミックの状況に伴いながら制約の多い社会活動を強いられてきた2020年。こういうときこそ、IDLと社内外との新しい関係を結ぼうと、テキストやRadioでメディア活動をはじめたんだよね。

平岡:私たちIDLが推進する、企業や組織のためのデザインコンセプト「デザイン R&D」について発信したり。

白井:振り返ると、いままでのあたりまえが通用しなくなったり、いろんな不具合が見えるようになった1年だったね。同時に、デザインの可能性の広がりも強く感じます。

平岡:日々浮かび上がるたくさんの問いや気づきをどんどん伝えていくメディアとして、IDxを立ち上げたんだよね。

トラブルメーカーを体現するマガジンとして

平岡:IDxの設計において重視したポイントとしては、メンバーみんなが書けるということだった。

白井:IDLのメンバー(通称IDLists)は、本当に個性的なメンバーの集まりで、出自も関心も得意領域もみんな異なってる。そのカオスさゆえに、チームは「Troublemaker(トラブルメーカー)」を自認しているんだけど。

平岡:これまで自ら発信するメンバーやその機会は限られていたから、まだ世に出ていないメンバーにも書いてほしかったんだよね。

白井:個人の気づきや生の声を掘り下げると、個々の魅力も浮かび上がってくるはず。そこからまた新しい対話が生まれるといいなと思っています。

才能の片鱗が見えはじめた

平岡:みんなに書いてもらった甲斐あってか、メンバーのなかには「書くことに目覚めた」って言ってくれてた人もいたよね。

白井shunTさんだね。外部の友人が「この記事の音源とても聴いてます!」って言ってた。コンテンツを楽しんでもらえているのはうれしいな。

平岡:チームにはユニークな才能がまだまだたくさん眠っているハズ。

白井:たとえば、グラフィックレコーディングとか。こちらのレポートでも挙がっているイラストは、IDListsが描いているものです。

平岡アンは自ら関心をもっている「共感」について書いてくれたけど、これからも深掘りしたいと言ってたよ。

白井:仕事ばかりではなく、それぞれの観点で問題発見したり問題提起するコンテンツが増えるといいなあ。自分自身の感性をもってさまざまなテーマをわかりやすく世に発してもらえたら、チーム内外でさらに化学反応が起こると思うから。

なんのために書くのか

平岡:あらためて、書くってなんの意味があるんだろう。

白井:もちろんチームとして臨む以上、新しいご相談の機会づくりは目指してはいるけれど。でも、それは結果的なものだと思うのね。

それ以上に、メンバー個々が興味関心を伸ばすきっかけになると思う。いろんなテーマを意識するようになって、周りに伝えていくためのトレーニングにもなるし。

平岡:特にIDLはデザインに取り組むチームだから、いろんな面で「インプット⇒解釈⇒分析⇒アウトプット」のサイクルを習慣づけていけるといいよね。

白井:自分が興味ある分野を発信していれば、仕事の幅はますます広がるはず。やりたいと言い続けていたら、相談が舞い込む機会も増えるだろうし。

平岡:コンテンツをつくる過程で、考える総量はもっと積み上がっていくよね。自ずとそのテーマに詳しくなって、徐々に専門家に近づくのがひとつの理想。将来的には起業したり、さらなる夢につながってほしい……とまで思う。

継続的に発信できない原因を考える

白井:でも……。足元に目を戻すと、運用面ではまた別の苦労があったね。なかなかチームとして予定どおりにコンテンツを発信できなかった。

平岡:リモートワークに切り替わり、ステイホームな日々だったけれど。単純に「忙しいから書けない/時間ができたら書ける」ではないんだよね。本業の合間に情報発信する場合、陥りやすい地味な課題のひとつ。

白井:エンジニアやデザイナー、執筆を生業にしていない人には、どう書いていいかわからないのかもしれないね。

平岡:「書く」作業を因数分解すると、実は複雑な工程があるんだよね。「ネタを探す」「リサーチする」「オリジナリティを磨く」「構成を考える」「言葉を選びながら書く」「ビジュアルの著作権や引用を確認する」「しっかり推敲する」──。

白井:書く経験が少ない人ほど、「どれだけ時間がかかるかわからない」って不安になりそう。

平岡:手のつけられない重い宿題になって溜め込んでしまってもおかしくないね。

定期的に「書く」体制を整えるには?

白井:課題はいろいろあるけれど、デザインチームらしく、IDxでは動かしながらどんどん改善をしていけるといいね。

課題が持ち上がるたびに、プロセスを問い直してみたり、プロトタイプを検証をしてみたりしながら、企画の質も運用の仕方もよりスマートにしたい。

平岡:それには、自身で書くための価値を再認識してモチベーションを高めてもらうことを前提として。一方で私たちも、もっと書きやすくなるメソッドのようなものを体系化したいね。

白井:習慣化のヒントですね。たとえば「ネタは探すより貯めろ」。

PCの片隅にちょっとしたネタ帳を用意しておくだけで、毎日の気づきやアイデアをメモる習慣はつく。机に座って付け焼き刃で探しても、そんな簡単にネタは降りてこないから。

平岡:新しい着想を得るのにメモ同士をつなげるのも有効だよね。

あと、どうやってオリジナリティを担保するか? とか、どうやったら客観的に読みやすくなるのか? といった課題には、私たち編集者がいつも脳内で行っている「書くための暗黙知」が役に立つと思う。

白井:それどんなの(笑)? 経験によって個人差もありそうですね。形式知化してみるといいかも。タイムマネジメントに対する処方箋はありますか?

平岡:エンジンかかるの早い/遅いなどの個人差はあれど、経験上「この1日で一気に仕上げる!」と時間をつくるよりも、執筆と推敲の時間を分けたほうがクオリティは上がると思う。

白井:一晩寝かせる重要性はよく語られるよね。自分もよく朝起きて、原稿の粗探しをします(笑)。結果的に手離れの時間も早いと思う。

平岡:こういう手法をとりまとめてうまく機能したら、ワークショップにしたいね。本業のあいまの情報発信に特化した「片手間ライティング講座」みたいな(笑)。

白井:……とまあ、ブレストをしだしたら止まらないわけですけど。きちんと形にして、来年は質の良い記事をどんどん出していけるようにしたいね。

平岡:2021年も、IDxを、IDLチームをどうぞよろしくお願いします。

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