オブザーバー

他の方の面談を見てどんなことを感じますか?

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」

山本五十六の有名な言葉ですが、自分のスキルを教える時には、この基本に忠実にした方が、圧倒的に相手の習得も早くなることが、経験的にも感じていることである。

10月になってから、次期リーダー候補の中堅社員に面談スキルを教え始めた。A君も小グループで1 on 1の面談をするようになったのだが、面談は感覚的にやっていて、何となくは出来るのだけど、しっかり体得したいということであった。真似て開始してくれたことはとてもありがたいことで、やってみたからこそ成長しようという意欲も湧いてきたのだろう。この手の対人スキルは、興味ない人に何を教えても響かないので、ちょうど時期が来たということで注力してやる指導することにした。

では、何から始めようか?コーチングを習い始めてから、自分の勉強も兼ねて、いずれ誰かに教えることになった時に説明できるよう、資料は2年程前に既に完成させていた。ただ、資料の説明というのは、冒頭でいうところの「言って聞かせて」になるので、その前段をすっ飛ばしても、ただの机上の空論になってしまう。

ということで、A君にオブザーバーに入ってもらい、私とA君の部下に対しての1 on 1面談を見てもらった。これは個人的にはとても良い状態だと思っていて、1 on 1を見られても良いと言ってくれる部下がいるということは、三者の中で心理的安全は担保されている状態だとも言える。こういう形で、部門間の人間関係を見極める方法もあるのかと、自分自身の新たな気付きにもなった。

さて、「やってみせ」を実行してみての彼の最初の感想は「こんな面倒なことを全員分(15人程度)、毎月やってたんですね。もっとチャチャっと誘導するように話をしてると思いました」だった。これは初めて見たとしてはかなり良い気付きで、ちゃんと「面倒なこと」であることを理解していたし、「チャチャ」っとしていない(≒待つ)ことも理解していた。

A君自身は頭のいい優秀な社員だから、A君と私の面談自体は事実「チャチャ」っと終わってしまうことも多い。そのため、A君の中では面談のスタンダードはその形になっていたかもしれない。だからこそ、「やってみせ」たことは非常に重要だった。誰しもが常に成熟したクライアントではない中で、相手を信頼して待つということの大変さを実感してくれたので、第一歩としては成功だったように思う。A君には一言、「面倒なことだからこそ、大きな価値があるんだよ。それは研究でも一緒でしょ?」と、少しだけ偉そうではあるけれど、本当に伝えたいことをフィードバックすることも出来た。

今週、A君との面談もあるので、その時に改めて今回の振り返りをした上で、コーチングの基礎を教えようと思う。そして、まずは次の面談で、「認める」「聴く」を実践してもらうところからスタートしてもらおうかなと思っている。その面談で気付いたことを、また振返っての繰り返しがスキルアップになるだろうし、正に冒頭の言葉の体現ともなっていくのだろう。そして、最後には、「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」の状態を私自身が味わえることこそが、この育成のゴールイメージなのかなと考える次第である。

ちなみに、私自身は面談を面倒だとは一切思ってなくて、深い話ができる楽しい時間だと認識している。だから部下達が思考したり成長する過程を見ること自体を楽しんでいる。もちろん、こう思えるようになるまでに、何十回と「面倒だ!」「何で分からないんだ!」「答えを言いたい!」って葛藤を感じたわけだけれど。自分がそのプロセスを経たからこそ、相手を信じて、その成長を見守ることができる。

将来、A君が彼の部下にコーチングを教える。そんな姿を見かけた時、私にどんな感情が芽生えるだろう。幸福の種を蒔きながら人生を歩んでみたら、思いがけない時に、花開く瞬間を見ることができるかもしれない。そんな感じで人生を楽しめたらよいかなと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?