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なぜ学校教育は【保護者のニーズ】に応えることができないのか?

こんにちは!いちろう@アラサー教師です。

前回は、「生産性」について記事を書かせてもらいました。

教師は人間対人間の仕事ですから、時には「効率」で考えることが難しい場面もあります。特に「モンスターペアレント」という言葉が聞かれるようになったように、保護者対応で悩む先生も多くいます。

今日は、「なぜ学校教育は保護者のニーズに応えることができないのか?」について考えてみたいと思います。



保護者のニーズは矛盾している


「なぜ学校教育は保護者のニーズに応えることができないのか?」

結論から言いますと、保護者のニーズが矛盾しているから。だと言えます。


1つのクラスに生徒は40人いますが、40人の生徒の後ろには40の家庭があります。そして、40の家庭にはそれぞれ40の価値観が存在しています。

日本という国は、教育という制度がしっかり機能しているため、すべての人が教育を受けてきています。つまり、すべての保護者に自身が受けてきた教育に基づく教育観があるのです。

医師や弁護士に対して、自身の価値観から意見を言う人は多くはないと思いますが(いないわけではないと思います)、こと「教育」に関しては、保護者全員が自身の教育観に基づく意見を持っていると言えるのです。


例えば、以下のような意見・要望が考えられます。

自分の時は担任に殴られた。でも、それで学べたこともある。ビシバシしごいてほしい。
今時、厳しい指導は時代錯誤。生徒が萎縮しないよう、厳しい指導はしないでほしい。
野球部で厳しくしごかれたから、今の自分がある。部活の練習を厳しくしてほしい。
部活よりも勉強が大事。勉強に支障が出るほどの部活はさせないでほしい。


あえて矛盾するような例を取り上げましたが、どれも実際にあった意見です。 

つまり、保護者それぞれが別々の教育観を持っているので、40の家庭のニーズをすべて満足することは難しいと言わざるを得ないのです。

では、学校に期待することは無意味なことなのでしょうか。



学校は、ニーズを満たすためにあるのではない


学校には、多くの生徒がおり、その生徒の後ろにはその数だけ家庭があります。そして、その家庭の数だけニーズがあるので、すべてを満足することは不可能だと言えます。

では、学校に期待することは無意味なのでしょうか。

そもそも、保護者と学校では視座が異なることを確認しておきたいと思います。

保護者の視界には、自身の子どもが中心にいるはずです。(もちろん、当然のことです。)つまり、その視点からニーズが発生するのです。

それに対して、教師は常に「集団」を意識しています。決して個々を見ていない、というわけではなく、40人の生徒全体の利益が第一優先になっているということです。

つまり、保護者は「個人」、教師は「集団」を見ているのです。


ごくたまに、新卒の若手教師が保護者から言われるセリフがあります。

それは、「子どもを育てたこともないのに」です。

これを言われると、若手の先生は何も言えなくなることがほとんどです。その通りだからです。しかし、以上の議論を踏まえると、このセリフが完全に的外れであることがわかると思います。

どういうことかというと、教師は「集団」を指導することが仕事であり、集団指導のプロです。保護者は、1人の子どもを育ててきた、子育てのプロです。

つまり、「子どもを育てたこともないのに」は、教師から言わせると「集団を指導した経験がないくせに」とそのまま返すことができる、無意味な指摘なのです。

私は、初任の時に指導教員の先生に、真っ先にそれを教えていただきました。

「よく、子どもを育てたこともないくせに、という保護者がいるが、気にしなくていい。教師は集団指導のプロだから。保護者は集団を指導したことないだろ。」

たしか以上のように言われたような気がします。

結局、私は保護者からそのようなセリフを言っていただく機会はなかったのですが、1年目にこれを言ってもらえたおかげで、無駄に悩まずに済んだように思います。


学校は、「集団」の中で自分を高めることができる場所です。1人ではできなかったことが、仲間とだから成し遂げられる、そんな空間です。

もしかしたら、学校教育において、保護者の方の思いと異なる場面があるかもしれません。

しかし、その場面は「その集団での最適解」であることがほとんどです。

なぜ、そうなっているのかを担当の教師と話をしてみることが大事だと私は考えます。


(もしかすると、「保護者が学校のすることに口出しするんじゃない」というニュアンスに受け取られた方がいるかもしれませんが、それは違います。保護者は生徒の成長をずっと見てこられた、子育てのプロです。教師と保護者が互いをリスペクトし、互いの足りないところを埋め合わせることで、その生徒の成長を目指す。そんな関係性が重要だということを考えています。)



(まとめ)学校と保護者が手を取り合って


今日は、なぜ学校教育は保護者のニーズに応えることができないのか?について考えてみました。

答えは、「保護者のニーズが矛盾しているから」だと考えます。

家庭によって異なる教育観をすべて満たすことは残念ながら不可能と言えます。

しかし、学校は「集団」の中での全体成長を目指しています。保護者と教師が、以上の前提を理解した上で、互いに協力して生徒に関わっていくことが重要だと思っています。


また、私立中高一貫校を志願する家庭も増えてきています。

私立中高一貫校は教育ビジョンが明確ですから、家庭のニーズを満たす学校を選ぶということも一つではないかと思います。

そういう意味では、公立学校(特に義務教育学校)は地域の子どもが自動的に入学してきますから、保護者ニーズの矛盾も発生しやすいと考えることができるかもしれません。

公立学校も、教育ビジョンを提示し、生徒が学校を選べるようにすることもこれからは必要になるかもしれません。(少しずつ、進んできていますが)



今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました!

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